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【論文レビュー】中国語版のキャリア・アダプタビリティ尺度:Hou et al.(2012)

キャリア・アダプタビリティ尺度(Career Adapt-Abilities Scale)をSavickas & Porfeliが開発した論文が掲載された学術誌には、同尺度の現地語版を用いたいくつかの国での調査結果を報告する論文も掲載されています。本論文では、中国語版を用いて上海の大学生296名を対象として行った調査分析の結果が報告されています。

Hou, Z. J., Leung, S. A., Li, X., Li, X., & Xu, H. (2012). Career adapt-abilities scale—China form: Construction and initial validation. Journal of Vocational Behavior, 80(3), 686-691.

スコアが全体的に高い

先日、アメリカでの調査結果を報告したレポートを読んで、スコアが高いなー、と思ったのですが、中国語版はさらに高いです。実際、著者たちはアメリカでの調査と中国での調査を比較して、4つの下位次元の平均値が全て高かったことに言及しています。その上でt検定を行い、関心では1%水準で、統制と好奇心では5%水準で有意な相違があったとしています。

スコアの高さは24設問の記述統計を見ていただければよくわかりいただけるかと思います。

p.689

だいぶ高いですね。関心(concern)の1番と2番、統制(control)の3番と6番、好奇心(curiosity)の6番、自信(confidence)の2番あたりは天井効果は大丈夫なのでしょうか、、、と思ってしまうくらいの値の高さです。

信頼性

ちょっと心配になるのが信頼性の検証についてです。尺度開発論文と同様にクロンバックのαで検証しているのですが、下表の真ん中(CAAS-China)をご覧ください。

p.688

統制が0.64という値になっているのですが、ちょっと収まりがどうなのだろう、、、と気になる値ではあります。

モデル適合度

4下位次元・24設問でのモデルについては、確認的因子分析の結果、RMSEA=0.064、SRMR=0.057という良い値を示しています。尺度開発論文のスコアよりそれぞれ若干値が高くなってはいるものの、十分に適合していると評価できる値でしょう。

色々な国での結果を見るのはなかなか面白いですね。

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