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【入門篇】キャリア構築理論とキャリア・アダプタビリティをざっくり知りたい方へ

先日、池田先生(東京大学)が企画され、関根さん(東大・中原研究室OB)がアレンジしてくださった組織行動論勉強会に参加させていただきました。参加者のみなさまの読み込みの深さとツッコミの的確さにアワアワしましたが、マーク・サビカスキャリア構築理論キャリア・アダプタビリティについて発表してきました。池田さん、関根さん、貴重な機会をどうもありがとうございました!

※尚、表紙の画像は関根さんに許可をいただいて借用しております。(関根さん、こちらもありがとうございます!)

今回は、キャリア・アダプタビリティを中心にキャリア構築理論についてまとめてみます。説明用にまとめていたWordをスクショしながら、ポイントを触れていきます。

キャリア理論の四つのアプローチ

キャリア理論には様々なものがあるため、「で、結局、それぞれ何が違うの?」となりがちです。私もそうでした。そのような疑問に対して、学術論文や学術書はありがたい存在となります。特に、荒木先生の『企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境』でのまとめがわかりやすいので、以下を基に説明しました。

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キャリア理論が四つのアプローチとしてまとめられています。個人と職務とのマッチングを重視する「個人ー環境適合アプローチ」(ホランドなど)と、個人が段階的に発達する上でのライフキャリアのイベントごとの適応を重視する「発達論的アプローチ」(スーパーなど)が上の二つです。

それらに対して、1990年代以降にニューキャリア論と呼ばれてきたものが「トランジション・アプローチ」(アーサー、ホールなど)と「社会構成主義的アプローチ」(サビカスなど)です。

二つのニューキャリア論は何が違うのかといえば、トランジション・アプローチに対して社会構成主義的アプローチでは、個人の語りの中で自己像がつど構成される、という個人の語りやナラティヴが重視されると言います。環境に適応するためにスキルではなくレディネスが求められ、結論的にいえば、このレディネスがキャリア・アダプタビリティなのです。

ちなみに、荒木先生の『企業で働く個人の主体的なキャリア形成を支える学習環境』の全章まとめを少し前に行ったのでご関心がある方はこちらをご笑覧くださいませ。

サビカスとはどんな人?

では、キャリア構築理論を提唱しているサビカス先生とはどのような人物なのでしょうか。

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こちらのまとめは『新版 キャリアの心理学』の6章を基に要約しているので詳しくはそちらを参照ください。

ここで注目するべきは二点でしょう。一つ目は、博士課程の時分に、個人ー環境適合アプローチを代表するホランドと、発達論的アプローチを代表するスーパーから指導を受けているという点です。実際、サビカスの書籍を読むと両者を批判すべきところは批判しながらも、有用性を充分に受け入れていることがよくわかります。

二つ目は、カウンセリングの実践を重視していて、カウンセリング現場での実践経験から理論を紡ぎ出している点です。キャリア構築理論を下敷きにしたサビカス先生のキャリア・カウンセリングについては、カウンセリングのステップに沿って以下にまとめています。

キャリア構築理論とキャリア・アダプタビリティ

提唱者であるサビカス先生を取り巻く背景情報を踏まえた上で、まずはキャリア構築理論についてざっくり説明します。

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キャリア構築理論は、「キャリア理論の四つのアプローチ」にある四つのアプローチのうちの社会構成主義的アプローチに該当すると書きました。この言葉にもある通り、個人のキャリアは環境との相互作用によって生成されるという社会構成主義的な捉え方をしています。もっと言えば、言葉による語りを重視したアプローチです。

そもそも社会構成主義ってなに?という方向けには、立教LDC一年の夏に学校の課題で解説動画を作り、私が話した内容を文字に起こしたものがあるのでよろしければどうぞ。

社会構築理論はキャリア行動に焦点を当てているのですが、キャリア行動のWhat・How・Whyのそれぞれの側面に対応する概念が用意されていて、キャリア・アダプタビリティはHowに該当します。すごく乱暴に言えば、実践に最も活きやすい概念ということです。

キャリア・アダプタビリティ

ようやくキャリア・アダプタビリティにたどり着きました。サビカス先生は、私が読んだ四つの主要な文献だけでも、それぞれでキャリア・アダプタビリティの定義を少しずつ変えてきています。以下は2013年の論文なのでおそらくは最新版(かそれに近いもの)です。

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和文は私の直訳なので、原文も併記しています。ざっくりいえば、キャリアや仕事におけるいろんな変化に対応するためのリソース、ということでしょう。

具体的にどのように環境への対応を行う行動なのかというと、頭文字が全てCである四つの次元(4Cとよく言われます)で表されています。キャリア系の資格試験でもよく出るそうで、日本語の最初の1-2文字を取って「かとうこうじ」と覚えるといい感じだそうですよ。

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四つの次元が、どのようなキャリア上の問題に対して、どのような態度・信念・能力を用いて、どのように行動することで対応するのか、についてサビカス先生自らがまとめてくれています。訳出は私なので、直訳感は大目に見てください。

キャリア構築理論とキャリア・アダプタビリティの概説はこんな感じです。キャリア・アダプタビリティはどのような尺度で測定できるのか、何から影響を受けて何に影響するのか、についても先日の勉強会では発表しました。その内容と質疑応答については明日アップします。

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