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【論文レビュー】縦断研究とは何か?:岡林(2006)

「縦断研究を理解したいならこの論文を読むと良いですよ!」と推奨された論文を読んでみました。縦断研究を行う上でキーとなる考え方やモデルについて、少し顔馴染みになった気もします。私の理解がどこまで正しいかはあやしいので、興味がある方はぜひ元論文にあたってみてください!

岡林秀樹. (2006). 発達研究における問題点と縦断データの解析方法. パーソナリティ研究, 15(1), 76-86.

交差遅延効果モデル

縦断データでは事象間の因果関係をより正確に推定できます。二時点での縦断研究で因果関係を統計的に分析するものとして、以前にnoteで紹介した交差遅延効果モデル(cross-lagged effects model)があり、この論文でも登場します。

交差遅延効果モデルの特徴は以下の通りです。

交差遅延効果モデルは、初回調査時点の2変数の値が初回調査から追跡調査の間における両変数の変化に影響を及ぼすか否かを検討するモデルである
p.80

構造方程式モデリング

縦断調査で異なる変数間の関係性を経路(パス)として分析する手法が構造方程式モデリングです。共分散構造分析とも呼ばれます。

構造方程式モデリングは、潜在変数や観測変数に誤差分散や誤差相関を仮定でき、それらを考慮したうえで潜在変数間の関係を検討することができるという特徴がある
p.80

潜在変数観測変数については、小塩先生の書籍を読んだ際に触れておいたので知りたい方は以下をご笑覧ください。

潜在成長分析

ここまでまとめてきた二時点の縦断調査は、CLPMやSEMを扱った際に少し触れてきたことの総まとめという感じでした。私の理解がさらにあやしいのは、ここから扱う三時点以上のデータ分析です。ここで登場するのが潜在成長分析(latent growth curve analysis)です。

この分析方法は、潜在変数を用いた構造方程式モデリングの応用であり、観測変数の分散・共分散行列と平均ベクトルを基に、その変数の潜在成長曲線を推定するものである。
p.81

個人の変化を推定する際に二時点での調査よりも三時点で調査した方が推定の誤差が少なくなる、ということは直感的にわかるかと思います。たとえば、高校三年生の9月と12月の偏差値の推移で志望校に合格するか否かを推定するよりも、6月・9月・12月の推移を追った方が推定の誤差が小さくなる、ということです。

潜在成長曲線分析では、個人内変化のパターンを切片と傾きに分解し、それらに対する他の変数の影響を検討できる。
p.83

あとがき

わからないなりに、ああでもないこうでもないと考えてみて、概念的に整理を試みてみたというのが正直な感覚です。学びながら使い、使いながら学ぶということなのでしょう。

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