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【論文レビュー】プロアクティブ行動は若手社員の組織適応にどのような影響を与えるのか?:尾形(2016)

本論文では、若手社員がプロアクティブ行動を取ることによって、組織適応が促されることを実証的に論じたものです。組織適応という概念について、知識、感情、態度・行動という三つの観点から捉え、結論を先取りすれば、七つの下位次元から構成されるとしています。

尾形真実哉. (2016). 若年就業者の組織適応を促進するプロアクティブ行動と先行要因に関する実証研究. 経営行動科学, 29(2), 3.

なお、本論文は尾形先生の『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長』の第9章の基となった論文です。組織適応についてもっと詳しく知りたいという方は書籍をお読みいただければと思います。学術書ですが非常に読みやすいオススメの一冊です。

組織適応の因子分析

さっと理解するために、本論文での因子分析の結果をご覧ください。

尾形(2016)p.87

因子分析の結果として七つの因子で構成されると著者は結論づけています。具体的には、第1因子は役割社会化、第2因子は離職意思、第 3 因子は仕事社会化、第4因子は情緒的コ ミットメント、第5因子は職業的アイデンティティ、第6因子は主観的業績、第7因子は会社社会化として命名されています。組織社会化(役割社会化、仕事社会化、会社社会化)は組織適応の下位次元であるとしている点が本論文の興味深い点と言えそうです。

プロアクティブ行動が組織適応を促す!

では、プロアクティブ行動は組織適応をどのように促すのでしょうか。プロアクティブ行動および組織適応について本論文では下位次元まで明らかにしているため、プロアクティブ行動のどの下位次元が、組織適応のいずれの下位次元に影響を与えるのかが分かるのが本論文のすごいところです。

重回帰分析の結果は以下のとおりです。

尾形(2016)p.93

非常にリッチな分析結果なので詳細に知りたい方は論文を熟読してみてください。ここでは、組織適応の下位次元である離職意思に対してプロアクティブ行動がどのように影響しているのかについて例示してみます。

強い優位な影響としては、フィードバック探索行動によって離職意思が低下するということが分かります。また、ポジティブフレーミング行動も中程度の影響として離職意思を低下するという関係性も明らかになっています。微妙なラインなのが、ネットワーク構築/活用行動でして、10%水準で離職意思の低下に効いていると出ていますが、この値をどう捉えるかは議論の余地があるといえるでしょう。

あとがき

上述したとおり、本論文を基にして書かれた尾形先生の『若年就業者の組織適応:リアリティ・ショックからの成長』については以前noteにまとめました。いたく感動して読んだ記憶があるものの、改めて読み返すと、内容をだいぶ忘れてしまっていて愕然とします。


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