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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第7章:インターンシップによるキャリア育成の効果〜

学生側の就職活動の一環として、企業側の新卒採用活動の一環として、インターンシップは、日本の労働市場で市民権を得たと言って過言はないでしょう。インターンシップは、「いい会社」に入るためのものや「いい人財」を採るための施策と捉えられがちであり、それを否定するつもりは毛頭ありません。

しかし、こうした限定的な意味だけに留めるのはもったいないのではないでしょうか。本章では、日本におけるインターンシップに焦点を絞り、学生と企業にとっての効用を論じています。学生側と企業側と、それぞれにとってのインターンシップの効果を見ていきましょう。

(1)学生側から見たインターンシップの効果
(2)企業側から見たインターンシップの効果

(1)学生側から見たインターンシップの効果

第7章では、学生側にとってのメリットが二つの段階に分けて述べられていますが、それを下表にまとめました。

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この表では、どのようなインターンシップの内容が、インターンシップ中の行動にどのように影響し、それが学生のキャリア育成にどのような効果を与えるのか、が明らかにされています。

学生に対するキャリア育成の効果の三つはわかりやすいでしょう。いずれも、実際に仕事を経験することで得られるものであり、以下のような流れでしょうか。

①自分自身の現時点での改善点がわかることでキャリアの自己理解が深まる
②自分自身がわかることでキャリアの焦点が絞り込まれ志向性が明確になる
③仕事と自身がわかることで今後に控える就職活動自己効力感が高まる

この三つのキャリア育成の効果に対して影響を与えているのが、ネットワーキング行動プロアクティブ行動です。インターンシップ中に他者との協働に伴う人脈形成行動を行うことで、他者を知ることで自分自身が明確になるために、キャリアの自己理解とキャリアの焦点が明確になるということでしょう。

他方、企業組織の中で成果志向で主体的に行動することを試してみることによって、就職活動の時点で主体的に情報を集めて積極的に自身をアピールできるという効力感を得られるという関係があると捉えられます。

このような学生の行動を促すインターンシップの構成要素が五つにまとめられています。企業側としても、こうした点を踏まえて企画・デザインすることが重要でしょう。

(2)企業側から見たインターンシップの効果

こちらについては159頁に記載されている表を簡略化してそのまま以下に載せます。

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多様なスキルを用いる課題を設定して、受け入れ社員が丁寧にサポートをするということがインターンシップの内容として求められます。これは、インターンシップを単に提供すればいいと考える企業にとって厳しい現実です。インターン生が単純作業を中心に行い、社員から放置されていると感じる場面が多いとそれは学生にとって企業の悪いイメージに繋がりかねません。

インターンシップの受け入れ業務をアウトソーサーに委ねた企業がいるという報道が先日ありましたが、そのような行動がどのような帰結を学生側に生じさせるかは火を見るより明らかと言えるでしょう。

丁寧にデザインされて多様なサポートがあるインターンシップを提供すれば、インターン生のその企業における職場や仕事へのフィット感を把握することができます。これは、企業にとっては早期離職を防ぐというメリットになるとともに、学生にとっても就職先の選定を誤るリスクを軽減することができ、企業にも学生にもメリットがあると考えるべきでしょう。

こうした双方にとってメリットのあるインターンシップを提供する企業は、企業魅力を高め、ひいては採用ブランドを高めることができるようです。


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