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カウンターアローファンは風量に注意

現在の家作りに求められる「快適・省エネ」についての技術的ポイントを
工務店側の視点でご紹介。


我ながらどこに需要があるのかわからないタイトル。
でも具体的商品をタイトルにいれて、あーだこーだ書くと
以外にビュー数が伸びる、という打算。

カウンターアローファン。三菱電機製の中間ダクトファン。
画像にあるようにバズーカ砲の形状で前後にダクトをつないで、送風システムを作ることができる。

カウンターアローファン
※三菱電機換気扇カタログより

あまりメジャーではない。
でも工務店さんはダクトを使った送風システムを組む際
結構、このファンを使う。
何故だ?
確かに、縦設置ができるとか、機種によっては正転・逆転できる等面白い点はあるが、私は使わない。
静圧が低いからだ。

三菱換気扇カタログより

カタログには「高静圧が得られます」と書いてある。
しかし「プロペラファンでありながら」がポイント。
そうなのだ。本来、静圧の低いプロペラファンの割には静圧が高いのであって、中間ダクトファンとして一般的なシロッコファンと比べて、静圧はたいしたことがない。
「日本人のわりに、サッカーがうまいよね。」
と、ブラジル人に言われている感じ。この表現をブラジル国内でされたとしたら、それはきっとサッカーがうまいと言われているわけではない。
だから、「皆さん、中間ダクトファンはちゃんと、圧損を加味して、静圧のあるファンを選びましょう」で終わる話だが、今回、この話を取り上げるのは別の理由。

先日、ユーチューブを見た。
工務店業界で有名な設計さんがご自身の物件を解説している動画。
その方はエアコンの冷気の送風にダクトシステムを使っているが、その送風ファンにカウンターアローファンを使っている。
で、その設計さんが
「このファンで600m3/h送風している。」
とおっしゃった。
そこにひっかかった。
そんなに風量でるのか?
風量計測したのか?

カウンターアローファンに大風量タイプはある。

V-200CPL-D

開放風量が830m3/hある。
つまりダクトを繋がないなら600m3/h以上ある。
でも、ダクトをつなぐ。

で、接続するダクトはグラスウール巻フレキダクトだった。

こんなやつ。工務店業界のダクトとしては使用頻度が高い。
で、このダクトはm当たりの圧損が大きい。

タイロンダクト送風特性

φ200ダクト接続なので、600m3/h送風すると4Pa/mの圧損がある。
これは大きい。
ダクト計画をする際は1Pa/m以下になるように配慮している。
ユーチューブ動画を見た限り、この圧損の大きいφ200のグラウスールフレキ1本でファン前後を接続していた。

V-200CPL-Dファン特性

こちらが当該カウンターアローファンのファン特性。
初見だとよくわからんと思うが、静圧は低い。
(プロペラファンの割に高い)
600m3/h送風しようと思うと、全体の静圧を50Paぐらいに抑えなくてはならない。
しかし、φ200のフレキを(屈曲部を直線換算したとして)直線10mあったらそれで既に40Paある。さらに、給気グリルが接続されていたら、やはり40Pa程度あると思う。で、経験上、グラスウールフレキはカタログ以上に圧損が大きいので、実際はもっと、圧損が大きいことが多い。
なので、動画でみた送風ファンシステムは私の直観だと400m3/h程度しか出ていないのではと思う。
あくまで直観だが、私は、色々なダクト系の風量を測ってきており、カウンタアローファンも計測してきた。なので、そこそこ蓋然性が高い数値だと思う。

私がここで問いたいのは、例えば壁掛けエアコンで冷暖房して、送風ファンで送風する計画の場合、実際にどれだけの風量が送られているのか、計測しないとその送風計画は無意味であるという点だ。
「ファンで循環させています。」
「壁のパイプファンで送風してます。」
「廊下の冷気をファンで室内で送ってます。」
と、一見、ちゃんと考えていて、合理的に聞こえる計画は多い。
でも、実際のファン選定やダクト計画をみていると、急に目の前に現れたバナナの皮でずっこけてしまう。きっとうまくいかない。
あるいはあってもなくても同じ。(つまり、その送風計画で別にクレームになっていないなら、そもそもそんなファンいらない。)
そんなわかっていないファン選定、ダクト計画を複数案件で行っているとしたら、きっと竣工後の風量測定等の評価を行っていないのだろうと思う。

風量を計測するのは工務店業界では一般的ではないが、計測しないファン計画を織り込んだ冷暖房計画をするなら、そんな冷暖房はやめた方がよい、という警鐘をピコーンピコーンと鳴らしておく。

ついでの警鐘をピコーンと鳴らしておくと、そのユーチューブの高名な設計さんはダクトの吸い込み側をダクト切りっぱなしで開放しており、グリルやフィルターがついていなかった。よって、ファンの中やダクトの中がちゃんと汚れる。
もちろん、そんなことお勧めしない。

ちなみに、ちゃんと600m3/h送風できるファンは何?についても答えておく。

三菱電機 中間ダクトファンV-20ZMSQ2

そもそも600m3/hの風量を1台で賄うのはつらい。
そこで2台にわける。
で、同じ三菱で、且つ中間ダクトファンから選ぶとすると、上記はどうかと思う。120Paの機外静圧で300m3/h確保できるので現実的だと思う。

ちなみに、横軸が0m3/h(つまり、風量なし)になる際の圧損を確認してほしい。この機種はそもそも風量が小さいが、それでも260Paにならないと風量は<0m3/h>にならない。
対して、さきほどのカウンターアローファンは130Pa弱で風量が<0m3/h>になる。開放風量で830m3/hあるくせに、たった130Paで風量がなくなるのはダクトファンとしては心もとないのだ。それでも工務店は使う。
そこが世界の七不思議。


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