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ロンドン・ヒースロー空港 物語

⚫️プロローグ
2014年秋、帰国日が ミラノ・リナーテ空港管制官のストライキの日と重なる。乗る予定のブリティッシュ・エアウェイズ(BA) は15:55発のロンドン ヒースロー空港行き。ロンドンでトランジット(乗り換え)してJALに乗って羽田まで帰る予定。

ところが、その日の12:30から16:30迄の4時間 管制塔が機能しなくなる予定となっている。ま、ストは回避する場合もあるし、間引きしてでも飛ぶかもしれないのを期待して空港迄行くことにする。空港でレンタカーを返却して空を見回しても普段頻繁に見る飛行機は一機も飛んでない・・静かな青空が広がっている。


⚫️ミラノ・リナーテ空港
電光掲示板の出発便を見るとキャンセルが多い中、目的のBA0563便は飛ぶことになっている。見切り発車して飛ばすわけなのか?? チェックインカウンターの彼に聞くと、"今のところ時間通りだ…でもストライキだからアナウンスに注意しろよ"・・と。ホントかなぁ??? ・・と思いながらちゃんと搭乗券も出してくれるので安心することにする。
 
定刻ならリナーテ発15:55、ロンドン・ヒースロー空港到着予定が17:05 (所要2時間10分・1時間時差がある)。ヒースロー空港発のJAL JL044は19:15発の予定なので、2時間10分のトランジット。ま、上手く行けば問題ないレベルなのだが、何が起こるか分からない。ストライキは16:30に終わるので、それまで飛ばないにしてもすぐ飛べるなら間に合うが、飛ぶ機材が着陸してないとどうしようもない。

もし、ロンドンのJALに間に合わないならミラノにもう1泊して次の日のにすればミラノで美味しいもの食べて1晩有意義に過ごせるが、ロンドンまで行って間に合わないと次のJAL機材の同じ便は24時間後、BA機材のコードシェア便は次の日朝11:30まで無いのでいずれにしろロンドンへ泊まらなければならない。予定外にロンドンの街を楽しめるという意見もあるけれど、出来るなら面倒は避けたいところ。

今回はBAとJALと別々にチケットを買っているので、本来JALは我々に対してBAが遅れようが責任ないし関係ない。ヒースロー → 羽田は特典 (マイレージでタダ) なのでBAは別買い。しかし、ミラノから羽田まで通しで買っている人に対しては両方の運行に責任がある。また、荷物はミラノで乗せると羽田までスルーで持って行ってくれるので(別買いでも)かなり便利。

カウンターの彼は、もしロンドンでJALに乗れなかった場合には荷物を引き取る必要があるのと、JALは乗り継ぎの便が遅れるのは知ってるから何とかしてくれるよ・・だって。さすがイタリア人適当でよろしい。

余裕でラウンジで待っていると・・・なんと出発時刻がDelay となって 15:55から17:30になっているではないか↓(表示は10分早まって17:20)

もしその時刻となるとヒースロー到着は計算だと18:40、JAL出発迄35分しかない。ヒースロー空港はターミナルが5個あって、到着する第5ターミナルから出発の第3ターミナルまでバスで10分位かかる。バスは10-15分待つ場合がある。第5ターミナル降りてから荷物検査で列がなければ5分、列が長いと30分、更に出発ゲートまで遠いとそこから歩いて15分-20分かかる場合がある、飛行機は着陸してから降りられるまで早くて10分はかかる・特にヒースローは広い。全てが最短にならないと間に合わない・・・これらを35分でやるにはちと無理すぎる。

あきらめちゃぁーダメだ。そうだ、乗る予定のJALのロンドン到着が遅れれば可能性があるぞ・・とロンドンに乗る機材が到着した時刻を調べたら予定より20分も早かった。(到着が遅れると出発が遅れる) もう荷物は預けてしまったので、やっぱり乗らないでミラノに滞在しますというのは相当無理を言わないと出来ない。もうロンドンへ行くしかない。もうロンドンに泊まる覚悟になっている。希望は2時間10分のフライト時間には余裕が含まれているので、早く到着する場合もある。更に希望の光は17:30と表示されていたのが17:20と少し早くなっている。16:30の管制塔のストライキが終わってから乗る機材のBAが着陸して、離陸の準備が整った。

⚫️ブリティッシュ エアウェイズ BA0563
ようやく搭乗が始まる。前に並んでる乗客はいつものまったりモードで乗り込んでいる。日本人はせっかちなのか良い人なのか、人を待たせないように迷惑にならないように配慮があるのだが、彼らは上の棚に荷物を乗せるのに後ろの人を待たせる事に躊躇がない。自分の事を自分のペースでやる。お前らのんびりしてるなよな、早く乗れよ〜と言いたくなるが言っても早くならないし変な人に見られる。
席は12列目なので前の方ではあるが、降りる時には一番で降りないとバスが行ってしまうかもしれない、1本バスが遅くなったら致命的。そんなわけで乗務員に荷物を一番前に置かせて頂戴、ロンドンでトランジットなので早く降りたいの・・・と頼んだら、この飛行機には30人のトランジットの人がいるからあなただけ特別待遇は出来ないの、早く降りたかったらベルトが消えたら早く来てね・・だって。名前は?  と聞かれて検索されてIPADに表示された座席表には名前と行き先と乗り継ぎ先が書いてある。乗務員の彼女は出発したら何時に到着か分かるから対応策を連絡しますよとのこと。さてどうなるか・・・

ブリティッシュ・エアウェイズの乗務員は落ち着いてからA4の熱感紙に印刷された一覧表を見ながら、このタイミングだと間に合わないのでJALの次の便 明日の朝11:30のに乗ってね、座席はJALでホテルはBAで用意してくれるから・・それでOK? とあっけなく言われる。他の30人にも機械的に言うのだろう。決まったことだし、時間的に無理だし、ゴネても声を大きくしても何も変わらないのは分かってるので、納得することにした。だいたい、BAもJALもストで遅れてきた人にまでホテルを用意したり、次の席を用意したりで被害者の方だ。

●ロンドン・ヒースロー空港 LHR
ヒースローにほぼ予測通りに到着して18:35あたりに外へ出られる。大幅に遅れたなら諦めも付くがまだ間に合いそうなのに明日の便はやだなぁ・・・と思いながら降りると IPADにこんな風に書いたのを持ったBA添乗員が便名と行き先を書いて乗り継ぎの人を集めている。これには6人の乗客が乗っているそうだ。

  JAL044
  HANEDA

この前に来ると、かっこいい日本人オジサンがボーディングパス (数字が一桁なので、ファーストかビジネスクラス) を見せつけて流暢な英語でBA職員に食ってかかっている。確かにJALは飛び立ってしまってるわけではなくて、あと30分はここにいるのだから挑戦させろと言ってる。TRY という英語だった。1分ほどすったもんだしていたが最後には、止めませんのでご自由にどうぞ・・というように言われて彼らは挑戦に出た。貴方達もやってみる? と聞かれたのでダメもとでやってみることにする。残りの2人は始めから諦めているのか、後部に座ったいたのか機体からまだ出てこない。

慣れたT5(ターミナル5) なのでバス停もすぐ分かり、運良くバスが待っていて運良くすぐ出発してくれた (10分待って来て、5分出発しないこともあり)。バスに乗ったのが18:47 (出発まであと28分)。

あっちへ行ったりくぐったりしながらT3を目指す。なんと、これから乗ろうと挑戦しているJALのB777の機体の下も通る。場所を覚えておかなきゃな・・と思いながらT3に到着。

かっこいいおじさんたちはバスから先に降りてグングン進んでドアが閉まりかけのエレベーターに乗ったが、こっちは早いと賭けたエスカレーターで逆転して前になった。ちなみに成田空港ではエスカレーターよりエレベーターの方が断然早いです。

トランジットの人はもう一度ここで荷物セキュリティーをしなければならない。長い列を尻目に、FASTレーンの入り口で "緊急だ"の意思表示をして入ってしまう。言われてから対応すると1分近くは遅くなるので、先にベルトは外してPCは外に出しておく。これがなかなか出来ないんだな・・外人たち。

しかし・・セキュリティーチェックの時には乗客か否かを見るためにボーディングパスをレーザーセンサーの所で見ることになるのだが我々はロンドン迄しか持ってない。おじさんたちは羽田までのチケットを持っている(負けてる)が、こっちはBAとは別買いなので、新規にJALのカウンターへ行ってボーディングパスを発券してもらわなければならない、これにも早くて3-5分かかる。ここでは見ないんだっけ? やばいのかなと思っていたら・・なんと、天使に見えるJALのロンドンスタッフがそこで待っている!! なんと天使は既に我々のボーディングパスを発券していて手渡してくれた。なんという気の使いよう、サービス!!

BA関係者は間に合わないを前提にあきらめのムードであったが、この人達は BAから連絡があったのかもしれないけれど、JALは間に合わそうという立場が明確。セキュリティーを出ると、無線で連絡しながら早歩きで誘導してくれる。彼女はBAが何もしてくれないのを少し驚いた様子。

ま、行ったことあるので出発GATEまで行けるとは思ったけど色々考えなくていいのでありがたいし、ここで迷子になってはお互いに迷惑する。この辺に来ると間に合いそうな気分になってきて安堵が湧きでてくる。

そして、問題を解決すると新しく問題が出てくるのを感じてくる頃でもある。しかし、それは今何も出来ない。ストックホルム症候群に陥りそうな (ちと意味が違うが・・) 4人はスタスタ早歩きでゲートまで進む。走らなくていいだけありがたい。別の空港では息が切れるまで走ったことがある・・ボーディングパス天使だった彼女はどこかの曲がり角で次の担当に引き継がれて更に歩く。急がなくても大丈夫ですよ・・と新しい人は優しく言ってくれる、その時ほぼ19:00 (出発15分前)。

新しい問題というのは、人間は間に合っても預けた荷物が間に合わないということ。飛行機の荷物って出てくるまでかなり待つでしょ。これだけ急いでギリギリなのに走れない荷物たちは置いてきぼりになるのが予想付く。残念ながら氷は入れてきたけどチーズが入ってるので本来なら間に合って欲しいという希望はあるが、人間だけでも間に合えばありがたいということにしておこう。

別のアイディアはあえてロンドンへ留まりチーズを救出するという手もある。荷物がJALに乗らなければすぐ分かるので、人間が乗らないのは安易に出来るかもしれない。まぁ、数千円(下の方)のチーズの為にそれはやめておくことにしたし、低温なので大丈夫かもしれないに賭けることにした。チーズのためにしょぼいロンドンの空港ホテル(知らないけれど)に寝るのはもったいない。

流石、定時出発率世界一位のJALだけあって7番ゲートには他の乗客は既にいない。歩きながらパスポートとボーディングパスのチェックは終わっていてすぐ入れてくれた。


●JAL JL044
飛行機のドアが閉まったのが定刻8分前の 19:07  到着して30分で次の飛行機に乗れた! ロンドン滞在時間30分の最短記録。ミラノ・リナーテ空港にて諦めのムードだった時からみると奇跡的な結果◎

ロンドンスタッフのチームワークと結果を作る意図は素晴らしい物がある。JALにはお礼状を書くレベルの感謝がある(結局書いてないが、この文を公開することで感謝を表明している)
流暢な英語のおじさんにも羽田に着いてからお礼を言っておいた、彼が頑張らなかったらしょぼい (あくまで私の推測です) ホテルに泊まるつもりになっていた。

⚫️エピローグ1
羽田空港で最後まで待ったけど荷物は予想通りこの機には乗っていなくて、次の日11:30の便で来る予定となる。荷物が乗れなかったのはJALの責任ではなくてヒースロー空港の責任なのだけど、羽田でJAL係員は丁寧に対応してくれた。本来謝らなくていいのだけど、そうしないと怒る乗客もいるからそう対応しろと言われているに違いない。税関の紙も向こうが書いてくれる、荷物も送ってくれる。いつもは荷物が多いのでTAXIで帰るがこの日は電車で帰れる事になった。

●エピローグ2
次の日11:30の便に荷物は乗ったと思っていたら、荷物はロンドンで行方不明になり次の便 19:15発の同じ便で来るとのこと。予想するに、BA0563便(ミラノ発)の引き取り手がない4人分の荷物はターンテーブルの上をぐるぐる回っていて、そのまま何処かに忘れられてしまったのだろう。日本ではありえないか確率は低いことでしょう。配達もしてくれて楽ちん。チーズは腐っていなかったが、食べたかどうか忘れてしまった・・・


●当時のイタリアニュースとGoogle翻訳
Questo prospetto è aggiornato periodicamente dall’osservatorio sui conflitti sindacali e propone gli scioperi di rilevanza nazionale del settore trasporti

06 settembre 2014
settore AEREO: PERSONALE SOC. ENAV
modalita: 4 ORE: DALLE ORE 12.30 ALLE ORE 16.30
( O.S. LICTA ) ( O.S. ANPCAT ) - GARANTITO IL TRAFFICO AEREO TRA L'AEROPORTO DI MILANO LINATE E L'AUTODROMO DI MONZA

Googleで直訳
このテーブルは、労働争議に天文台によって定期的に更新される
運輸部門では全国的に重要なストライキを提案している

2014年9月6日
セクターPLANE:個人SOC。 ATC
モード:4時間:12.30からの16.30 TO
(Licta OS)(OS ANPCAT) - モンツァ空港とミラノ·リナーテ国際回路との間にGUARANTEED航空交通


●おまけ、JAL着陸動画
この時初めてカメラなら電源OFFにしないでよくなったので撮影


う〜ん、リナーテ管制官のストライキ、かなり影響を受けたぞ・・長い一日でした

#創作大賞2023 #エッセイ部門


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