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謎の文字は謎のままでよし。

朝、六時。
日課の早朝ジョギングに出かけた、俺。

いつものペースで公園を二週したあたりで、いきなり腹が痛み始めた。

走る速さを緩めて様子を見るが、痛みがどんどん増してゆく。
とても家に着くまで我慢できそうにない。

……どこかで、クソするか。

この公園内に、トイレは三箇所ある。

ひとつは、管理棟にあるトイレ。

建物の中にあるからかいつもキレイに掃除が行き届いていて、トイレットペーパーも完備されているが、朝九時にならないと自動ドアが開かないようになっている。
今はまだ七時前だから、当然使うことができない。

ひとつは、この公園ができたときからある、古いトイレ。

タイルの壁、裸電球、古臭い蛇口、和式便器…しかも紙がない。
ションベンくらいなら使ってもいいが、行き急ぐ勢いのあるクソをぶちまけるのには勇気がいる。

ひとつは、休憩所にあるトイレ。

開放型のログハウスの中にあり、少し薄暗いもののわりと綺麗で紙もある。
洋式便器と和式便器両方あるし、多目的トイレもあるので使いやすいが…今、改装中らしく、一周目に通った時にトラ柵がしてあったのを、見た。

ここから一番近いのは古いトイレだが、あいにく俺は紙を持っていない。
この場合、休憩所のトイレを使うのが最善だろう。

俺は極力刺激を与えないよう、小走りで休憩所へ向かった。

トラ柵を跨いでトイレに向かうと、多目的トイレは使用中だった。
洋式便所が開いていることを祈り、男子トイレに入る。

早朝ということもあり、男子トイレの中には誰もいなかった。

洋式と書いてあるドアを開けようとノブに手を伸ばすと、なにやら文字が書いてあるのを発見した。

はいるな

いや、はいるだろ。
俺は今、決壊が近い。

便座に座ってスプラッシュマウンテンオンザビーチをかましていると、目の前の壁になにやら文字が書いてあるのを発見した。

みぎをみるな

いや、見るだろ。
俺は今、ハッスルしすぎた噴射口を拭きたい。

やんちゃが過ぎたクリサンセマムゲートをごしごしやるべく、右側にあるトイレットペーパーをぐるぐる巻き取っていると、目の前の壁になにやら文字が書いてあるのを発見した。

べんきのなかをみるな

いや、見るだろ。
俺は自分の生み出したものを確認したいし、きちんとお見送りをしたいタイプなのだ。

スッキリした気分で個室を出て、手を洗いにいくと、鏡の下部分になにやら文字が書いてあるのを発見した。

うえをみるな

そうだな、上を見る必要はないな。

俺は鏡すら見ずに、トイレを出た。

―――ちょ!!そこは見ようよ!!

なんか声が聞こえたような気もするが、俺は一刻も早くこの場を立ち去りたい。

なんせ先週事件があったばかりのトイレだからな。
凄惨な事件だったから使用禁止になってるかと焦ったんだけど、使えてよかったよ。

俺はすがすがしい気分でトラ柵を跨ぎ……、ジョギングを再開するために、一目散に駆け出した。


こちら動画もございます(*'ω'*)


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