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ワーホリ、フリーター、契約社員を経て、私立高校に勤務。 教科主任、特進主任、学年主任、…

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ワーホリ、フリーター、契約社員を経て、私立高校に勤務。 教科主任、特進主任、学年主任、カリキュラム長などを務めるも、心身を悪くして休職。現在は復帰。 偏差40台から60~80台に覚醒した実践例多数。 教育現場から見えてくる世界を発信できたらと思いnoteを始めてみました。

最近の記事

「〇活」の功罪

 「〇活」という言葉が定着して久しい。  聞くところによると就職氷河期である2001年頃に「就活」という言葉が広く使われるようになったらしく、その後、2010年あたりから様々に応用されるようになったそうな。  「〇活」という表現はその起源からもわかるように、ネガティブなイメージの行為をポジティブなニュアンスに変える効果がある。  「妊活」というのは要は生殖活動をするということなので、従来であればなかなか開けっ広げに言えるものではない。しかし、「活」という言葉を使うと途端に

    • 2024年問題にみる建前のレトリック

       「和を以て貴しとなす」  1400年以上も昔の言葉なのに、日本社会の根幹をこれほど端的かつ見事に表現したものが他にあるだろうか。     十七条の憲法ができた当初から日本社会はそうだったのか。それとも聖徳太子が敷いたレールを今なお日本人は歩み続けているのか。どちらにしても聖徳太子とはとんでもない人物なんだろう。  「和を貴し」とはつまるところ、争わない、喧嘩しない、揉めない、ということを最優先にせよということだと思う。  幸か不幸か、未だに日本社会は「争わないこと」を最

      • 危機感と飢餓感の先に②

         前回、危機感も飢餓感も持ちえない生徒を前にした時の無力感について書いてみた。ここはかなり大事なところだと思うので、少し掘り下げてみたい。  そもそも何のために勉強するのか。なんのために学校に行くのか。  例えば寺子屋に行っていた子どもたちの動機は明白である。読み書きソロバンを身に付けて食べていくためだ。  高度成長期のような右肩上がりの時代はどうか。  勉強して一流大学に行って、一流企業に行って豊かな生活をするためだ。実に明白である。  しかし、今の時代はそんな明白

        • 危機感と飢餓感の先に①

           いよいよ年度も終わりが見えてきた。  振り返れば今年も本当に色んなことがあったなぁ。ホントに。  こういう時期なので印象に残っていることを振り返っていきたい。  「自分、失敗したことないんで」  生徒の放ったこのセリフは結構、印象に残っている。  そのクラスはなかなかに大変で、授業といえば私語、スマホがメインで注意されたら寝る。そんな生徒が多かった。  ひと昔前なら「勉強する気がないなら出ていけ!」と帰宅させることもあったが、近年は「生徒たちの学習権を尊重!」みた

        「〇活」の功罪

          反省できる人は初めから失敗しない

           歳のせいかタイトル通りのことを最近よく実感する。  例えば、毎年クラス運営に失敗する教員がいる。  年度末のまとめでは反省と改善を口にするのだが、結局同じことを繰り返す。  そりゃそうだよね。  傍目にはそう見える。  なぜなら、反省すべきポイントを反省できていないのだから。  「次は気を付ける。緊張感をもってやる。」  それはそれで結構だけど、そもそもあなたのクラス運営が失敗している理由って「気を付けてないから」でもなければ「緊張感がないから」でもないよね。

          反省できる人は初めから失敗しない

          教えないことと自己責任論

           先日、進路検討会が行われた。  どこの学校でもやっているわけではないと思うので少し説明をすると、担任と進路指導の教員とその他で、各生徒の現在の状況と志望進路の確認、それに対しての助言や、実現に向けての戦略を皆で検討するものである。  この場においてもやはり前回触れたような気持ち悪さの影響が見て取れる。学習指導要領の改訂や世の中的な流れもあり、授業は上から下に「教える」のではなく「教師と生徒が“学習者”として対等に語り合うもの」というような言説が影響力を持ってきている。

          教えないことと自己責任論

          世界は残酷。探究は危険思想になりうる。

           この世界は残酷である。  お釈迦様の言う通り、辛くても生きていかなくちゃいけないし、老いたくなくても老いるし、病気になりたくなくても病気になるし、死にたくなくてもいつかは死ぬ。  自分の心や身体は思い通りにはいかないし、嫌な奴にも会わないといけないし、欲しいものが手に入らないこともあるし、どんな大切なものでもいつか別れは来る。  こうした苦しみから逃れるために人類は文明や科学を発達させてきた。お陰様で我々はこうした苦しみから目を背けられる時間が増えた。  しかし、忘れては

          世界は残酷。探究は危険思想になりうる。

          スマホフリーの高校から報告

           ユネスコが学校でのスマホ禁止を呼びかけている。  スマホに通知が届くだけで生徒は気が散り、その後学習に集中し直すのに最大20分かかるとする研究もあるそうだ。ベルギー、スペイン、英国で、学校にスマートフォンの持ち込みをさせないようにしたところ、学習パフォーマンスが向上したという調査結果も示されている。  勤務校はスマホ完全フリーという珍しい体制をとっている。持ち込みもOKだし、授業で使うこともあるし、校内での動画撮影やアップロードにも特にガイドラインはない。  GIGAス

          スマホフリーの高校から報告

          アマゾン提訴とV9に見る欧米と日本文化

           アマゾンが独占禁止法の疑いで提訴された。これまでもビックテックに対する訴訟が相次いでいるが、こうした動きを見ていると日本との文化の違いを感じざるをえない。  欧米、特にアメリカは「公正な競争状態」にあることを何よりも重視しているように見える。しかし、日本は「公正な競争状態」よりも、聖徳太子以来の「和を以て貴しとなす」を大事にする国なのだろう。そんな事が提訴のニュースから見えてくる。  昔、ジャイアンツがV9(9連覇)というとてつもない偉業を成し遂げた。しかし、この偉業自

          アマゾン提訴とV9に見る欧米と日本文化

          タバコと免許制度に思う『教養』

           少し前に原付免許で125ccまで乗れるようにする案が話題になっていたが、こうした免許制度の変更は様々なところに影響が出るものだ。  学校現場で最近出てきたややこしい事案は特定小型原付の問題である。ペダルがないため、区分としてはバイクに属すると思うのだが、16歳以上は免許がなくても乗ることができ、ヘルメットは努力義務らしい。  そして、ついに来たかという感じだが、この特定小型原付で登校する生徒が現れた。勤務校はバイクに乗ることを禁止している。法律上は16歳からバイクの免許

          タバコと免許制度に思う『教養』

          私立高校の雇用実態 ~専任・常勤・非常勤~

           教員の志願者が減少しているというニュースが話題になっている。  原因として長時間労働の問題などが挙げられているが、今回は雇用問題という角度からこの問題について書きたいと思う。  この現象が関西の話なのか全国的な話なのかはわからない。1つ言えるのは大阪近辺では常態化し、すでに定着している話だ。  以前は高校教師の採用と言えば地域や学校によって呼び方は違うが、専任(正社員)と非常勤という2パターンの雇用体系が主だった。  非常勤というのはその名の通り学校に常駐せず、授業だけ

          私立高校の雇用実態 ~専任・常勤・非常勤~

          中華統一と天下統一

           歴史の授業をしていると、同じ言葉なのにその内実が違うため、生徒が混乱してしまうという現象はよく見られる。  「皇帝」という言葉はその最たるもので、帝政ローマのトップに中国の君主たる「皇帝」という訳語を当てたのは痛恨のミスではないかと、授業で触れる度に感じる。特に「神聖ローマ帝国」を理解する上で、「皇帝」という訳語は理解を妨げる邪魔なものですらある。  皇帝と言えば始皇帝がスタートなのだが、彼についてはもう1つ誤解を生じさせる言葉ある。それは「統一」だ。  豊臣秀吉による

          中華統一と天下統一

          高校無償化に思う教育の地域性

           少し前になるが、大阪の高校授業料完全無償化が決まった。  これについてのネット上の声を拾っていると、改めて教育の持つ地域性をを感じることができる。  否定的な意見によく見られたのが、私学を無償化にする必要がない、格差が広がる、というものであった。  なるほど。そういう捉え方もあるのか。改めて「常識」とは自分達が住んでいる地域の自分達の感覚に過ぎないことを実感した。  おそらくそうした意見は東京の方々からだと思う。論法としてはこうだ。  私学は設備が充実し、教育サービス

          高校無償化に思う教育の地域性

          本丸はメディアの体質であってジャニーズではない

           ジャニーズ会見のニュースを聞いて思い出したことがある。  2004年に最高裁でジャニー氏の性加害が認定された時に、テレビで全くその件が放送されない事に違和感を感じ、何局かに電話したことがあったのだ。  それまではあくまで噂や疑惑、都市伝説というレベルだったが、裁判で事実だと認定された以上、何らかのアクションはあるだろうと思っていた。ところが報道機関は見事にスルーした。政治家からの圧力なのか、メディアを牛耳るフィクサーが存在するのか。一体どういうことだと困惑した記憶がある。

          本丸はメディアの体質であってジャニーズではない

          知識は興味と快感の源

           前回書いた「2023年上半期のニュースを3つ調べる」という課題。結構、思い付きだったけれども、チェックしていたら意外と悪くない課題だったことに付く。  まず、生徒の興味がよくわかる。3つとも著作権や肖像権に関わるニュースを選んでいる生徒、特定のスポーツに関するものを選んでいる生徒、同性婚やペット休暇といった特徴的なものを選んでいる生徒、という具合にその生徒の関心が浮き彫りになるので、面談や指導の際の取っかかりになる。  それと、それぞれが抱えている課題がはっきりとする。与え

          知識は興味と快感の源

          教育とはギャップを埋めること?

           さぁ新学期の授業が始まった。  初っ端から考えさせられることばかりで、この仕事の面白さを実感する。  勤務校は学力層で行くと中の下~下の上くらいで、今年担当しているクラスはその中でもしんどい部類のクラスである。  号令。さっそくスマホを見ながら起立する生徒を注意する。着席。前の生徒がおもむろに煎餅を食べて、炭酸ジュースを口に入れる。おいおい。授業始まりましたよ。夏休み終わりましたよ。  生活リズムが逆転している生徒も多く、いきなり授業をしてもまず頭に入らない。今日はウォ

          教育とはギャップを埋めること?