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【さらにさらに先の時代】


<これまでの時代>
窓の外の桜がいっせいに散るのを、ただボォと眺めている社員。そこに上司がやってきて注意をする。
「おい、なにぼんやりしてるんだ。桜なんて見てる場合じゃないだろう。締め切りは明日なんだから、もっと一生懸命やってくれないと困るんだよ。まったく、早く仕上げてくれよキミ!」

<これからの時代>
会社でPCにかじりついて仕事をする社員。そこに上司がやってきて注意をする。
「おい、なに会社でPCなんかいじってるんだ。そんな仕事は家でやれるだろう。リモートで十分だ。桜が散っているのが見えないのか。今日の締切りとどっちが大事かわかるだろ。桜の美しさをゆっくり眺めるくらいの感性がないとウチの会社じゃやっていけないぞ、早く外に出たまえキミ!」

<さらに先の時代>
ほとんどの仕事はAIがやってくれるから、この季節、毎年社員はみんなで桜を観に行っている。そこに上司がお酒を片手にやってきて
「いつの時代も桜はいいねぇ。新人くん、ここでひとつギターでも弾いて歌ってくれないか。えっ、弾けない。じゃぁ絵でも描いてくれ。えっ、それもできない。いまどき困った新人だなぁ。それじゃ私が一句詠もう!」

<さらにさらに先の時代>
満開の桜の下、人々が楽しく集い歌う。そこには上司や部下なんて役はいなかった。どこの社員というのもなく、気が合えばハイタッチ。好きな食べ物や、仕事のアイデアだって一瞬で交換できる。PCは姿を変えて私たちのからだの一部になっていた。
世界中いつでも、どこでも、誰とでも、会社なんて飛び越えて仕事ができるようになったいま、桜の花が散るのを眺めていると、「リモートワーク」っていう響きすら、妙に懐かしく感じらるようになった。


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