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❨606❩1973.4.28.土.晴/「チノ」と呼ばれて我が祖国を考える/サント・ドミンゴ:ドミニカ共和国

一日寝た。「無為徒食」という言葉がある。
今の俺は、それだ。

手紙を待っているが、まだ来ない。
空手道場へ行ってみたり、町を気ままに歩き回ったり、部屋で座禅をしてみたりするが、暇つぶしみたいなものだ。

夕方一時間半程、町を散歩する。川近くの砲台に登った。
全長3m程の旧式の大砲が8門、ぐるりと並んでいた。

そこから見下すドミンゴは、いかにも古く、その町並が暗く坂の多い点、情趣が感じられる。

ドミニカ
ーサント・ドミンゴー


町を歩きながら、昨日、フッとある男に「ペルアーノ」と云われた事を想い出し、笑えて来た。今日はコロンビアーノと云われるし。

全く、鏡に映してみたが、今の俺の面はチノより、ペルアーノ、コロンビアーノ、メヒカーノと呼ばれてもしょうがない感じだ。

町で例の如く「チノ」と呼んできた黒人に、
「何んだ。アフリカーノ」
と云い返したら、ニタニタ笑って、
「俺はアフリカ人さ」
なんて、楽に答えやがった。 ケンカにならん!

しかし考えてもみれば、奴等の祖先がアフリカ人であり、こちらの祖先が中国系であるとするなら、チノと呼ば れて腹を立てる方が馬鹿なのか?
イヤ、そんな事はない。やはり、自分の国は国だ。
それが主張出来なくて、誇れなくて、何んとしよう。


「我が祖国」

「貴方は自分の国の何を誇りとしますか?」
という質問が俺に与えられたとしたら、如何に答えるだろうか?

先づ俺は、勤勉な国民性を第一に誇るだろう。そしてそれが、神武天皇より今まで千年以上も培われて来たという事実、歴史ある事実として、大きく胸を張る事が出来る。

又、四方海、中央には深い高い緑の山があり、その自然が四季によって次々と彩られてゆくという、情緒を多分に持った国であるという事。
面積は非常に小さいが、南北に長い為、土地によって様々な習慣や変化があるという面白さも云うだろう。

人間性についても、もう一つ云わなければならない。
どの国にも見られない程、近代的な考えと伝統的な古い考えを、同時に持ち合せている国民であるという事だ。

最後に、誇りを考えると、どうしてもその反対の恥じなければならない点も、勝るとも劣らない程多くある事も、肝に命じておかなければならない。

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