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❨43❩1971.10.14 木 晴 ユマ砂漠:苦しい1日(Yuma Desert)

なんとか無事夜が明け、ホっと一息。
車の音がちょっとうるさかったかナ。

ノンビリかまえて、踏み出した。
昨日16kmと聞いたので、1時間もこいで朝食にありつけると思ったからだ。

ところが、行っても行っても何にもなく、砂漠だけ・・・

よ~~~く考えてみれば、あれは16kmじゃなく、60kmだった。

あゝ、なんたる事。
陽は高くなり、腹は減り、水もない。
昼近くまで朝めし抜きで走り、11:30am頃 遂にダウン。

その前にトラックの運ちゃんから、ボトル1杯の水をもらったのが、命びろいというもんだった。

飢えと渇きで狂いそうになった。
荷の干しブドウとジャムとレモン水がホンノ少しあったので、まずいソーセジの小カンと一緒にカブりつく。

ムンムンと熱い風が吹く。
まばらな木陰に入っても、暑さはさほどに変わらない。

30分もゴロゴロのたうち回っていたが、たまらなくなって腰を上げ、やっとの思いで自転車に乗る。

ところが、炎天下に自転車を放っておいた為に、10mも行かないうちにパンク。
あ~~~~~~~神様。仏様。
泣きっ面にハチ。

修理した。
そしたらまたパンク。
タイヤをはめる時、チューブがリムとレバーに挟まって切れたのだ。

俺の頭をカチ割るべきか、自転車をブチ壊すべきか?

冷静になればどちらも損と思い、歯を食いしばって、パンクを修理した。
ポンプも壊れたまま使った。

走れた!
そして、その後1kmも行かない所に、店があった。
運とはこんなものか。

冷たい水が浴びる程飲めた。
店のオッサン、俺の疲れているのを見て、氷を持って来て「冷やせ」と云ってくれた。

もし俺があそこでへたばってしまったら、よくよく弱い人間だったろう。
一頑張りがあった為に助かった。
でも辛かった。
大袈裟ではなく、死ぬかと思ったぜ!

この店を出る頃は、また有難い涼しい夕ぐれがせまっていた。

こんな苦しい日が今迄にあっただろうか?
これからだ。 今こんな事を考えていちゃあ、ホントにあの世行きになる。

生きる。
俺は、自分の力の限り、頑張る。

走り終って、シートの上に寝転がって見る星の美しい事。
今日あった事が悪夢の様だ。


ゴクロウサン、隆くん、そして呑米!


行けども 行けども、
先に家なし、我 消沈す 呑米

腹満たした 我姿
水を得た 魚の如く 呑米



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