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キャリアに関する理論5 - ジョン・クランボルツ


理論的背景

バンデューラの社会的学習理論を元にし、
キャリア意思決定における社会的学習理論(SLTCDM)として理論化。
その後、キャリアカウンセリングにおける学習理論(LTCC)を理論化。

行動の獲得:学習

  • 直接経験による学習

スキナーのオペラント条件付けの考え方に基づく。
報酬や罰を与えることによって自発的に行動を行うように学習させる方法。
オペラント条件付け=弁別刺激→反応→強化子(3項随伴性)
強化子には「正の強化子(反応を増加させる刺激)」と
「負の強化子(反応を消去したり弱めたりする刺激)」がある。

  • モデリングによる学習=観察学習

観察学習とは、他者の行動を見たり、真似することで学習する方法(代理学習ともいう)

1.注意過程
多くの情報の中で、特定の情報やモデルに注目し選び取る過程。
モデルが観察者と同集団に属する人であったり、魅力的な人であったりする場合にはより注意を引く傾向がある。

2.保持過程
選択されたモデルが抽象的な形で記憶に留められる過程。
この際に用いられる表象形には、イメージと言語の2つがある。

3.運動再生過程
モデリングした行動を実際の行動に変換する過程。
記憶にある象徴的表象が適切腕ない場合や、必要なスキルが欠如している場合には、運動再生過程がうまくいかないことがある。

4.動機づけ過程
習得した行動を実行するかを決める過程。
観察者は自分にとって好ましい結果をもたらすであろうと予測した時には、習得した行動を遂行する。その予測には、観察者が直接受ける報酬や罰のほか、他者の同じ行動に与えられる報酬や罰(代理強化)や自分自身による自己強化などが影響する。

自己効力感

バンデューラの社会的学習理論で強調されている認知的要素。
行動の先行要因としての予期は、自分の行動がどのような結果をもたらすかという「結果予期」と、自分が適切な行動をうまくできるかどうかの「効力予期」の2つに分類できる。
この効力予期を自己効力と呼ぶ。

自己効力感は次の4つの影響要因により形成されるとしている。

  • 遂行行動の達成

あることについて、自分の力でやり遂げたという経験のこと。
これが最も自己効力感の形成に強い影響を及ぼす。

  • 代理経験(ロールモデル)

ロールモデルになる人や近しい状況の人の成功を知ること。
自分では直接経験をしなくても自己効力感を高めることができる。

  • 言語的説得

ある行動に対して、他者から繰り返し認められたり励まされたりすると、
その行動についての自己効力感が高まる。

  • 情動喚起

身体や心の中で起きた生理的・感情的な変化を体験することによっても
自己効力感は形成される。

理論上の主要概念

キャリア意思決定に影響を与える4要因

次の4要因が複雑に影響しあって、キャリア意思決定に影響を与える。

  • 遺伝的特性・特別な能力

職業の好みやスキル獲得のための能力に影響を与える。
性差(ジェンダー)、民族、身体的な外見、身体的な障害などが不空亜mれる。
特別な力には知能や音楽・芸術・運動能力などにあたり、これらは遺伝的な特性と選ばれた環境との相互作用の結果として表される。

  • 環境的状況・環境的出来事

個人のコントロールを超える状況や出来事を指している。
例えば、経済情勢・政治状況・雇用機会・自然災害などが挙げられる。

  • 学習経験

キャリアの選択はさまざまな学習経験の結果である。
学習経験は道具的学習と連合学習の2つの対応に分類される。
①道具的学習:
 先行条件(遺伝特性・環境状況・出来事や課題)
 ↓
 行動
 ↓
 結果
 というプロセスで、環境に働きかけて、
結果を得ることによって生じる学習方法。
②連合学習
 中性的な刺激とある反応が関連づけられることによる学習。

  • 課題接近スキル

課題や活動に対して適応するためのスキル。
課題に対して目標を定め、取り組みをしていく(行動していく)。

4要因の結果としての信念・スキル・行動

  • ふたつの信念

自己観察般化:
自分自身に関する信念。自分自身のパフォーマンスを評価しいたり、興味や価値観を査定すること。

世界観般化:
自分を取り巻く環境についての一般化した言語化をするようになること。
職業に関するイメージやステレオタイプなどが含まれる。 

  • 課題接近スキル

・重要な状況を認識する
・課題を現実的に定義する
・自己観察般化や世界観般化を検証し、正確に査定する
・広範囲の代替案を作る
・代替案に関する情報を収集する
・代替案を絞っていく

  • 行動

学習経験やその結果得た信念やスキルを、自分のキャリアに活かし行動する

キャリアカウンセリングへの応用

クライアントが対処しなければいけない動向

・特性に基づいた意思決定でなく、
 自分の能力や興味を広げていく必要がある
・職業は安定したものととらえず、
 変化し続けるものとして準備しなくてはならない
・診断を下されるのでなく、
 行動を起こすように勇気付けられる必要がある
・キャリアコンサルタントは職業選択だけでなく、
 キャリア問題全般を扱う上での援助において主たる役割を担う

キャリアカウンセリングの目標

・今のクライエントが有している興味・価値・能力にマッチした
 職業を見つけることではない
・片腰続ける仕事環境において、クライエント自身が満足のいく
 人生を作り出していけるように学習を促進させること
・学習はスキル・興味・信念・価値・職業習慣・個人特性に関することなど

キャリアカウンセリングの介入方法

  • 発達的・予防的介入

キャリア問題に直面しそうなタイミングに教育や予防のプログラムを導入する(インターンシッププログラムやジョブクラブプログラムなど)

  • 治療的介入

認知的介入:
目標の明確化、認知再構築、問題ある信念への直面化、認知リハーサル、ナラティブ分析、読書療法など

行動的介入:
ロールプレイング、脱感作など

計画された偶発性

プランド・ハップスタンス理論(計画された偶然理論)は、クヤリアにおける偶然の出来事の影響を軽視せず、むしろ積極的に取り込み、より問キャリア形成に活用することを提唱した理論。

  1. 決定をするより「未決定」であることの方が、予期せぬ出来事を新たな学習へ結びつけることができる。

  2. 未決定→オープンマインドであること。

  3. 計画したことを絶対思惟するのではなく、未来は予測や計画通りに進まないものとし、それを学習の機会と捉える。

  4. 偶然の出来事を積極的に活用し取り入れること。

  5. 自分自身の意識や努力によって、偶然の出来事を作り出す行動が重要である。

    1. 好奇心(Curiosity):新しい学習機会を模索すること。

    2. 持続性(Persistence):失敗に負けず努力し続けること。うまくいかなくても諦めない。

    3. 楽観性(Optimism):新しき会は必ず実現すると捉えること。予期していたことと違う出来事もプラスに捉え楽しむこと。

    4. 柔軟性(Flexibility):信念やこれまでの概念、態度などに固執せず、状況や時代に合わせて考えを変えていくこと。

    5. リスク・テイキング(Risk-taking):結果が見えなくても行動を起こすこと。失敗を恐れて行動しないのでなく、学習の機会ととらえ飛び込んでみること。

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