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読書感想文「プロ棋士の思考術」

今回も、ひょんなところから姿を現した本について考察・紹介。

この本は新入社員の頃に読んだ本。
自己啓発に狂って次から次へと手をつけていた折に、
もっとわかりやすい技能が欲しい、
と、手に取った一冊(だったはず)

「俯瞰的視野」とか、「先読み」だとか、いわゆる大局観。
私もそうだったからそうなのだが、
こういった特殊技能のようなものを求めて手に取る方が多いのかも知れない。

ただし、あらかじめ言っておく。
そういったことを期待して手に取ると、がっかりする。

しかし、それは、そういうものを求めて読む人に限る。
本質を読み解く人にとっては、参考になることも多いと思う。


この本のキーワード「大局観」
結論から言うと、あらゆる啓蒙書に記載されているようなことが、「大局観」を作る。

例えば、身につけるための条件「8K」というもの。
これは8つのワードのイニシャルがkから始まるためこうした総称になっている。
構成されているものは「健康」「感謝」「根気」等

他にも、「常識外の発想が大事」、「気持ちを切り替えよう」などである。

それから、もう一つのキーワード「虚仮の一念」
この言葉の意味するところは

“愚か者でも一心に一つのことをやれば、目的を達せられる“

プロ棋士の思考術/依田紀基

と言うもの。
著者はこの言葉を碁及び人生のテーマとしてあげている。

本の中盤以降では、「虚仮の一念」を巡る、筆者の歴史と対局についてが続く。

つまり、最もこの本の言わんとする言葉である。

筆者は、碁の勝利の要因を、この観念が相手より勝っていたかどうかに置くこともあるため、「大局観」と言うよりも、この観念を大事にしていることが伺える。

習得には、リスクを負う、経験豊富な人生を送る等があげられている。


本の後半は、筆者の社会についての思いが描写されている。
教育や政治について、「虚仮の一念」を纏ったものの見解だ。

思考術の本としては異例ではないかと思われるが、これについては筆者もこう語っている。

“碁打ちが書く本としては、おそらく異例であろう子どものいじめや自殺について紙幅を費や費やすことになったが、それは今この時期に、私がどうしても言いたかったことだ。
だが、碁打ちの「思考術」とも決して無縁ではない。“

プロ棋士の思考術/依田紀基

つまり、そう言うことなのだ。
技なんかない。
生き様や思考の総体が、求める「それ」なのだ。
特殊なものなど、何もない。

この本を読み解いた後、
「そんなことわかっているよ」と思うか、
はたまた、また違った思いが芽生えるかのか。

全体を通じて、「大局観」等を持ちたければ、「大局観」等を身につけろ、と言っている。

この意味を察することができるだろうか。

少しイジワルだな、と思ったが、
本質とはそう言うものであった。

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