#30 ドライブ



そして翌日
プロテストまで残り2日

今日は夢子さんとマンツーマン
基礎体の練習をみっちりとやる

セカジョの選手として当たり前にこなさなければならないメニューを私だけでなく夢子さんも一緒になって練習する

かなりついていけるようにはなったが夢子さんに置いてかれる所も多々あった
それでも歯を食いしばりなんとかやり抜いた



そして練習も終わり片付けも終えたところで夢子さんが私を上から下までゆっくり見渡す

「え、どうかされました?」

「うーん、ちょっとTシャツ捲ってみて」

「え?!ここでですかっ?!」

「じゃあどこでよ?!」

「あ、は、ハイ」
何か恥ずかしいんですけどぉーー!!
よくわかんないけどTシャツを捲ってみた

「へぇー」
夢子さんは何か関心してるようだ

「じゃあ次は短パンの裾捲って」

「え?あー、ハイ」
恥ずい
でも捲る

「ほぉほぉほぉ」
またもや何か関心されてるみたい


「いいねー!たま!だいぶ出来上がってんねー」

「え!あ、はぁ?」

「全然まだまだ薄いけどお腹に縦線入ってるし腿もまぁ全然細いっちゃ細いけどしっかり身が詰まってパンっと張ってるよ。結果が出てきた証拠だ」

「あ、ありがとうございます」
ペコリ

「真面目にやってる証拠だ!ちゃんと風呂に浸かってほぐしてから寝るんだぞ!」

「ハイ!わかりました!」
ニコリ

「それにしてもさっき星野さん来たじゃん?本当になんの悪巧みしてんだか。社長も社長で聞いても今度今度でごまかすし。もう今日は挨拶しないで帰ってやろうっと!!」

拗ねる夢子さんがかわいい


確かに何の話なんだろうか?
よくわかんないけど解散だけはやめてーー!!って感じだけど
私のいままでの努力が、、、
いや!きっと久々の大会が開催されて私もそこでデビュー戦!的な!!
絶対そうだよ!そうに決まってる
よし!明日もがんばっぺ!!




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そしてプロテスト前日

いつもより早めに着替え、掃除、準備、ストレッチをして夢子さんを待つ

そんなセカセカしている私の様子を見て社長に
「そんないそいそ準備してても夢子は来ないぞー」
と笑われた

そりゃそうだけどこういうのは気持ちの問題だ
プロテスト前日に浮足立たない人間なんているのだろうか?

明日どうなろうと最後まで足掻いてやるんだ!
なーんて思ってたら

カチャ

夢子さんが予定より早くやってきた

「おはようござっ、、、」
ペコ、、、

ん?
んんん?

「おはよー」

え?
えええ?
私は目を丸くする

「何?どうしたのよ?」

「え!あ!あのぅー服がぁ、、、」

いつものジャージのセットアップではなく黒のパンツスーツの上下にいつものハーフアップではなく髪を下ろした夢子さんが道場に入ってきたので驚いた

「え!あーこれね。まあね」

答えになってないっすーー
しかし夢子さんは意に介さず

「えープロテスト前日!最後の練習は、、、」

全く頭がついていけないが思わず固唾を呑む

「ドライブだ!!」

わかんないっす!わかんないっす!
何が何だか全くわかんないっすー!

「ジャージと短パンか、、まあいいや着替えてきて。その間に社長に挨拶しとくから」

「あ、ハイ」

「じゃあ行った行った!階段ダッシュ!!」

頭パニックのまま階段ダッシュし適当な私服に着替えて下で待ってると夢子さんが事務所から出てきた

「じゃあ行こっか?」



駐車場に着き社用車に乗る
もちろん扉には「全世界女子プロレス」とカッティングシートが貼られている

シートベルトをし夢子さんはメガネをかける

「久々に運転するからさ一応練習で昨日から借りてたんだよねぇ。まぁでもそんなに衰えてなかったから心配しないで」

言われる方が心配です、、、


だが夢子さんの運転はリングでの荒々しいファイトとは反対に安心安全運転で心地良かった


「そういやたまってプロレスやろうと思ったのって言っちゃあここ最近なわけでしょ?その前とかは何になりたかったの?」

「えー?!そうですねー小さい頃はいろいろあってと言うかコロコロコロコロ変わってたんですが現実的には高校卒業前にここなら推薦で入れるよって先生に言われたから特に興味もないけど大学入ってって感じでなんか流されるままでプロレスに出会わなければ逆に何をしようとしてたのかと、、、」

「そうかぁ。でも大学なんて考えたこともなかったなぁ。それはそれで凄いんじゃないの?」

「そうなんですかねー?ほんとになんとなくの流れだったので、、、因みに夢子さんの子どもの頃の夢はやっぱプロレスラーだったんですか?」

「え?なワケないじゃーん!プロレスは中学入ってからかな?好きになったのは」

「じゃあその前と言いますと?」

「えー!そんなのアイドルに決まってんじゃん!!」
えー!!まさかのっ?!

「言っとくけど私めちゃくちゃかわいかったんだからねー!細かったし!知ってる?デビュー当時はアイドルレスラーで売り出されてたんだからねー!」

「も、もちろん知ってます!」

「CDも出すはずだったんだけど何か流れちゃったんだよねー」
ちょっと肩を落とす


そう!そうなのだ!
夢子さんはデビュー当時、クリクリの目で細くかわいらしいルックスと抜群のプロレスセンスでアイドルレスラーとしてプッシュされていた

が!

あまりの負けん気の強さとじゃじゃ馬さでプロレスに邁進
新人ながらも先輩に噛みつき何度も本当の喧嘩に発展
アイドル的に応援していたファンは激減
替わりにいつでも本気で魂をぶつけていく様を応援するファンが激増
会社もアイドル路線で売ることを諦めることになる

なのできっとそれが理由でCDデビューも流れたのかと、、、言えないよぉ、、、
(私調べ)


「写真集も海外で撮る予定だったんだかんねー!もうーなんで全部おじゃんになったのぅー?」

「、、ハハ、ハハハハ、、、」


なんてわいわい会話をしているうちに東京郊外を抜け(道場も郊外みたいなもんだけど)山梨の方に入ったみたいだ

今更ながら一体どこに何の目的で向かってるのか
夢子さんが何故黒のパンツスーツ上下なのか気になりだした

何となく聞いちゃいけない空気感を感じていたがいずれは目的地に着くのだ

ちょっとだけ勇気がいったが聞いてみた

「夢子さん?」

「ん?」

「今更なんですけど何処に行くん、、ですか?」

「ん、あー、あの子に会いに行くんだよ」

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