見出し画像

八島国もの語り〜王国時代⑦

なむ、君よ、矛を突き立て乱舞に騒ぎ掻き混ぜて、滴り落ちる「国家文明」その思想をもって泥田の中に国を造り固めるのか、その所業の中で悪霊は憑き、鼻をつく罪・穢れの烙印はその肉肌に異形の印影を描くのだ、なむ、君よ、環濠集落の楼閣に臨む王よ、見晴らしの高台に国見の居館を構える王君よ、その烙印をいかなる神道の鐸音と聖水をもって祓い流し、いかなる呪術の魔鏡と真言をもって鎮め癒すのか。

なむ、君よ、虚報の付け火に煙り立ち、讒言の耳に家臣を疑い、また親族をもいぶかる、その計略の非情の手口にケケと笑い、間隙に付け入り動乱の火種を焚きつけて、騙されやがってクタバリやがってザマァ見ろと、時には高揚の波長に赤く高笑いの声を上げるのか、時には反転の波長に黒く祟りの影に怯え、また怨嗟の声におののくのか。

なむ、君よ、人の心の病根から、また深く心根から、更に深淵の元根から繁茂し叢林となって生え出てくるものを何と呼び、遥かな祖人の系譜、更に人間存在の始源から這い出てくる「青く黄色い蛇」その理由を何処に求めるのか、果たしてそこに、巡る因縁の罪業を観るのか「原罪」として括るのか。

なむ、君よ、祓いきれない流しきれない幾らやっても清めきれないと、鎮魂の呪術を求め、いかなる真言の猛火をもって餓鬼・修羅の所業を焼き尽くし、いかなる法要の術をもって、奈落の淵から自らを救い上げるのか。

なむ、君よ、男子として現れたのか、ただの猛者ではなく、野望あり、知力・体力・胆力あり、教養・美学あり、もって品格具備の覇気ある勇者として、大望の空を仰ぎ見たのか、とはいえ君は知るのか、八島国の大王その盟主の玉座を望むのであれば、縄文以来の権威である「大いなる母性」の前に背を丸め頭を垂れて額づき、恭順のうちに崇拝するという不文律「荒ぶる神をヤワし給う」をもって、受戒としなければならないことを。

すなわち、時に覇者が現れた、盆地や扇状低地、その泥まみれクソまみれ血まみれの中から湧き出して、騒蠅の発生その無尽に放出されて、修羅道に血と肉を散らして白刃をかいくぐり、餓鬼道にベロを垂らし鼻を鳴らしてむさぼり食い、物欲のままに剛力を凌ぐつわもの逹である。

「荒ぶる神よ我に憑け、疾風に駆けて戦塵の嵐を起こし、覇気に吐いて戦乱の火を起こせ、焦土と化した旧勢力の瓦礫の山、見よ、その虚栄と欺瞞のブザマな様を、我が金剛力の正義をもって散々に叩き潰し、踏み固めて更地に均してただの土層に変換し、その地にスックと宮柱、また宗家の紋章をひるがえして我がままの天下、その新秩序の王都を築くのだ」

そして、時に馬が現れた、それを飼育し繁殖させる技を保持する人々の出現である。すなわち、騎馬戦術の文化が興ったのだ、この八島国に、新たな富の産地が現れたのである。それは沖積低地ではなく、山麓の広野、すなわち、阿蘇山麓であり、信州〜北部関東山麓、そして東北「八つの戸」である。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?