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渡米25日目 思わぬ肘鉄を喰らわされる

長男に肘打ちを喰らわされた。弟に長男が手を出して、注意した矢先の出来事だった。

今日は土曜日、朝から大学の課題をこなしながらも、次男が合格した水泳チーム、ドルフィンズへの登録と入金手続きを終えて、いよいよ買い物に出かけようとしたときの出来事だった。

気がつくと次男が泣いている。些細なことから言い合いになり、長男に叩かれたのだという。最近、この手の喧嘩が多い。言い合いになって、最後は必ず長男が手を出し、4歳年下の次男が泣かされて終わる。

今日は何が原因だったのか。いよいよ出かけようとしていた時に長男がズボンを履き替えていて、そこを通りかかった次男が踏んづけて、「謝れ」と長男がいうと、「なんで今頃着替えてんの?こんな時に着替えてる方が悪い」と言い返し、その生意気さに長男が我慢できずに手を出してしまったのだという。

「なんで手を出したの?」
「だって口で言っても言うこと聞かないから」
「暴力で解決するのは良くないよね。だったら、パパも口で言って通じないときに手を出してもいい?」
「・・・」
「自分よりも力が強い相手にそういうふうにされたらどういう気持ちになる?」
「うるさい!」
「それ、誰に言ってんの?」
「パパ」

長男は悔しさを堪えきれなくなった様子で泣き出した。そして近づくと、腹に肘鉄を喰らわされた。物理的にはそこまで痛くなかったが、初めて長男から肘打ちを喰らわされたことに衝撃を受けた。

「もうやだ!どっか行って!」
「いっぱい我慢してるんだよね。アメリカに来たことも。ママだっていっぱい我慢しているよ。パパに言いたいことだってたくさんある」

そうだよね。きっと全部悪いのは僕だ。

「こんなところ来たくて来たわけじゃない」

その思いが長男の体前進から伝わってきた。返す言葉もなかった。

その後、蹲ったままの次男が長男に向かって何かを言い返し、長男は更なる攻撃を加えようとする。お互いに殺伐とした言葉を投げ合い、感情はどんどんエスカレートしていく。僕は長男がこれ以上、次男に近づかないように抱きしめてブロックするが、中1ともなるとなかなか力が強くなってきているのを肌で感じる。ふたりの感情が収まるのを待って、結局次男と妻二人で買い物に出掛けてもらうことにして、僕と長男は留守番することにした。

Directingクラスから課された2本の長編映画の脚本を読む課題を一つ終えた後、夕方、ずっとスマホゲームをしていた長男に声をかけて、外に散歩に出た。お腹がすいたと言うので、この近所にはあまり店がないが、Cyprass(ヒノキ)通りにある酒屋とピザやの並びにあるCafeと書かれた小さな店に入る。カフェと書かれているが、中に入ると飲み物の他にDumpling(焼き団子)やNoodle(ヌードル)などのメニューがあり、アジア系の店主が経営している。長男が食べたがった海老天ヌードルを注文して席についた。

「昨日、学校はどんな感じだった?」

料理が来るまでの間、スマホばかり見ている手を止めて目を休めるように言って、長男に話しかけた。昨日は初めての登校日だったが、全部英語で全く意味が分からず、何をやったかも覚えていないと言う。金曜日の時間割を確認すると英語、保健、社会、理科、数学の5時間授業だったようだ。一つ一つの科目について、どんなことをしたのかさらに話を聞いていく。

1限目の英語の授業は日本人の先生による英語のクラスで、7、8人の日本人と1人の韓国人の子が参加していて、英語を学びながらUNOなどをしていたとのこと。2限目の保健の時間から7年生のクラスに戻ったが、授業は全て英語でしかもパソコンを使って行われており、本人にはまだパソコンが配布されていなかったので、その設定をパソコン教室でしてもらったとのこと。

授業はそれぞれ50分だが、時間割を確認すると例えば、1限目は8:00-8:51、2限目は8:51-9:42と書かれていて、ランチタイムの30分を除いてなんと「休憩時間」と言うものがない。

「トイレとかどうしてるの?」
「それぞれ好きな時に行く感じ」
「授業の途中で?」
「うん」
「そうなんだ」「でもなかなか帰ってこない子もいるから、多分遊んでると思う」

そして5限目が13:30に終わると、ホームルームも掃除の時間もなくさっと教室を出て行ってしまう。クラスごとに教室を移動して、自分の教室というものもないため、次にどこの教室に移動していいかも分からず、授業中、日本人の同級生も離れた場所に座っているから話を聞くこともできず、なんとか周りを見てやりこなしたと言う。言葉少なく淡々と話すがそれはきっと大変な一日だっただろう。

そもそも僕は長男は「アメリカに行きたくない」とずっと言っていた。将来、自分にとってきっといい経験になるからと説得してなんとか連れてきた。僕は「行きたくない」と言う彼の気持ちを聞いていないふりをして、「学校が始まればなんとかなる」と思っていなかっただろうか。これまで話し合いのプロセスが圧倒的に足りなかったのではないか。

長男の中では、「行きたくないのに連れてこられた」と言う気持ちがあるのが今の現状だと思う。もっと長男と向き合う時間を大切にした方がいいのではないか。

英語の授業が行われている環境に放り込めばなんとかなる。そんな都合のいい考えはやめた方が良さそうだ。渡米前、試験に受かるまで一緒に英検5級の勉強をしていた。いつも最初は嫌がるものの、一緒にやっていると色々と話が弾むこともある。ひとまず明日から英検4級に向けての勉強を毎日30分、再開することに決めた。

一方、Directingクラスで課された長編映画の脚本は、『Martha Marcy May Marlene』(邦題:『マーサ、あるいはマーシー・メイ』ショーン・ダーキン監督・2011年公開)、『Pariah』(意味:社会の除け者・Dee Rees監督・2011年公開)の2本。どちらも2011年にサンダンスやカンヌ映画祭などで数々の賞を受賞した名作で、前者は心理サスペンス、後者は10代のアフリカ系アメリカ人少女のアイデンティティを題材した作品。このどちらの作品かの脚本を選んで今学期のそのワンシーンを監督として撮影することになるが、どちらも同時に家族をテーマの一つに据えた作品で、サスペンスとドラマ、正直どちらもやってみたい気持ちがある。正直英語力が足りず、脚本を読み通すのに一本あたり4時間近くかかり、セリフの中に含まれるスラングやネイティブ独特の言い回しにまだ追いついていないところが多々あるのが現状だ。こうした作業は今後にとって欠かせないし、慣れればスピードも上がり、さらに見えてくる世界があるはずだ。明日さらに読み込んでから、どちらの作品を監督するか決めようと思う。

DAY25 20230916土3112-3232-3341

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