前説

3月19日に行われた東京女子プロレス『GRAND PRINCESS'22』を観戦してきた。自分自身久しぶり（どれくらいだろ？）のプロレス観戦で新鮮な気分だった。

会場は両国国技館。東京女子プロレスが単独開催を目標にしてきた場所。そこでの記念すべき大会を観戦できるのは何かの縁だし、タイミングが巡ってきたというべきだろう。

Wrestle-Universeでは観戦してきたけど画面を飛び越えての生はやっぱり違う。新しい観戦様式とは言ってたけどプロレス会場の熱量はやっぱり画面では味わえないもの。声は出せないけど心の中では叫びっぱなしだった。それだけのものを東京女子プロレスは与えてくれたのだ。

観戦しようと思ったきっかけ

今回観戦しようと思ったのは2月11日の東京女子プロレス後楽園ホール大会を配信で見たから。IP王者の防衛戦があって、そこで王者の伊藤麻希選手が対戦相手を求めていたときに荒井優希選手が入ってきて「挑戦させてほしい」と求めたから。その時の2人の表情がとんでもなくよかった。プロレスファンとしての自分をそそるのにリミットを超えてしまったからだ。その写真が表紙を飾った週刊プロレスは2冊買った。それくらいの説得力があった。そしてすぐ観戦に行けるように手配をし、観戦に至ったわけだ。

前置きが長くなったがそんな経緯があって実際に見に行くことになった。正直生で見るのは初めての団体だし、どんなんだろ？ってのはあった。しかし、会場に着いたらそれは一発で解消された。いい感じでアットホームな感じで、ファンサービスも充実されていたので入り込みやすかった。

試合開始！

試合開始。前説の難波小百合アナのテンポがすごくいい。何人ものリングアナを見てきたがすごくいい。WrestleUniverseで場慣れしてるのがよくわかった。やっぱり毎大会配信できるのはすごいことだ。そしてアイドルユニット・アップアップガールズ（プロレス）のライブ。これを毎回やっているのもなかなかできない。前説で歌を歌う団体はあるけど、ここまで大掛かりでやれるのはない。3人（らく、乃蒼ヒカリ、渡辺未詩）編成だが、オーディションで増員するそうだ。どんな子が来
るのか楽しみではあるね。

第1試合 長野じゅりあデビュー戦

第1試合は世界で90万人のフォロワーを誇るTikToKerの長野じゅりあ選手のデビュー戦。彼女は現役看護師でもあり、元空手の世界王者という肩書きを持っている。そんな彼女をプロレスに引き込んだだけのものを見せてもらいたいなと思った。

試合速報的なものは必要以上のものは書かない。他サイトを見ればいいし配信アーカイブがあるからそれを見ればいい。

試合は意外なほどクラシックに近いものだったなぁというのが全体を通じての感想。私は〇〇ですよとプロレスのテクニックを使って紹介していくのだが、それが徹底されていたのに驚いた。だから長野選手ほどのバックボーンを持った新人選手が若手の中に入っても存在をぶち壊すことなく試合を成立させていたのがすごいなと感心したものだ。今後彼女をどう活かすかがポイントになってくるかもしれない。

第2試合 東京女子プロレスvsガンバレ☆プロレス

第2試合はガンバレ☆プロレスと東京女子プロレスの対抗戦。同じグループ内の団体だがカラーが違う団体だ。熱苦しい熱量が売りのガンバレ☆プロレス相手に自分たちがなんであるかを見せるのは大変な作業だと思うがそれはクリアされていたように思う。お互いを生かしつつ試合を成立させていた。どっちもよかったね。なんとなく東京女子プロレスがこういう団体なんだよというのがわかってきた。

第3試合 〜第6試合

第3試合はCyberfightグループの総帥・高木三四郎選手とハイパー・ミサヲ選手。高木三四郎という人は人の生かし方をよく知っている人だと思っていて、この試合もあえてハイパー・ミサヲのメイクをして登場したところでいい意味でクレイジーな感じなんだなと引き立てることができた。そして大人げないことをすることで楽しませる。そういういろも持ってんだなと見せた試合だった。

第4試合は朱崇花選手と上福ゆき選手。この試合は両者の感情が表に出ていてとてもいい試合だった。実力差は正直あったけど、それを感じさせなかった。

第5試合は天満のどかvs愛野ユキの姉妹対決。実の姉妹なんだそうな。姉の天満のどかは引退が決まっていてそのケジメとして妹との試合を望んだそうだ。2人はタッグチームを組んでいてそのテーマ曲を歌っているユニットに生演奏を依頼して実現させてた。生の迫力で会場は一気に温まった感じだ。姉妹対決も遺恨を残すことなくクリーンな試合だったので見ててホッとさせられた。こういう試合も必要だ。

第6試合はNEO美威獅鬼軍の登場。全員登場で盛り上げた。東京女子プロレスチームも各選手の色をきちんと出してアピールできていたのでよかった。試合を支配してたのはNEO美威獅鬼軍だったが、それ以上のものを見せていた。

ここで休憩。

第7試合 志田光日本凱旋試合

第7試合は日本に凱旋帰国してきた志田光選手が登場。世界の志田になった彼女に乃蒼ヒカリ選手が何を見せられたかがポイントだった。しっかり爪痕は残したのかなとは思えた試合だった。ちゃんと彼女がやりたかったというハードコアな面も見せてくれたし、それを受けてたった志田光はさすがだというほかない。彼女がアメリカAEWで得てきたものははかりしれないものだった。

第8試合 インターナショナル・プリンセス選手権 伊藤麻希vs荒井優希

第8試合はインターナショナル・プリンセス選手権。王者・伊藤麻希に荒井優希が挑む。この試合こそが東京女子プロレスに足を運ばせた大きな理由だ。試合はキャリア9ヶ月の選手がここまでできるのかというのを荒井優希は見せてくれた。試合前の記者会見で伊藤麻希が彼女について決定的に足りないものがあるという発言をしていた。その発言を裏付けるように伊藤麻希は試合を展開、演出していく。結果防衛に成功する。試合後の会見で伊藤麻希は荒井優希について「負けるわけがない。彼女は強いし、素材としては一級品。料理人としてはまだまだ。もっともがき、苦しめ」と発言していた。荒井優希は「続ける理由ができたし、超えなければならない」と再挑戦を期していた。試合後の荒井優希の目はアイドル・荒井優希ではなく闘争心に満ちたプロレスラーの目だった。その目を見ただけで足を運んだ甲斐があったというものだ。もっともがぎ苦しんだ経験を積んで再び伊藤麻希と対戦するとき、改めて見てみたいと思った。それは伊藤麻希が身をもって通ってきた道だったかもしれない。方法は同じである必要はないがそれを経験したあともっと心技体で成長した荒井優希が見られるはずだ。

セミファイナル　坂崎ユカ&瑞希vs辰巳リカ&渡辺未詩

 
セミファイナルはインターナショナル・プリンセスタッグ選手権。王者、坂崎ユカ＆瑞希vs辰巳リカ＆渡辺未詩。辰巳と渡辺は先に行われたタッグトーナメントで優勝して王者組に挑戦をアピールした。試合前の入場から会場をあっためる両者。ここはアイドルのライブ会場かと思うくらいだった。その煽りにふさわしい試合を見せてくれた。両者には実力差はほとんどなかったと思う。でも少しの決め手の差で王者が防衛した。この試合はタッグの試合の見本と言ってもいいくらい素晴らしいものだったのでぜひ見てほしい。

メインイベント 山下実優vs中島翔子

メインイベントはプリンセスオブプリンセス選手権。シングルチャンピオンの防衛戦。王者山下実優に中島翔子が挑む試合。この2人は東京女子プロレス創設期から団体を支えてきた「This is 東京女子プロレス」を見せることができる選手だ。絶対的に強い山下に小柄な中島が挑む。序盤、山下が圧倒する。中島はダメかと思わせたが、ここで負けるわけにいかない中島が這い上がる。そして耐えぬき、最後は山下から3カウントを取った。ずっと山下の背中を追いかけてきたという中島。それを超えることができた。この達成感を見れたのはもちろんメインのクライマックスだが。それと同時に東京女子プロレスのある種の到達点を見せたものだと思う。

エンディング

エンディングで各選手が一言づつ残していった。そして最後にベルトを持った4人が残った。東京女子プロレスの歴史を作って、これからも引っぱっていく意志があふれていた。夏には大田区立体育館でのビッグマッチが控えている。それに向かって進んでいくのだろう。

感想

充実した興行だった。でも東京女子プロレスに懸念点が感じられた。ベルトを持った4人、挑戦してきた選手。若手という感じの選手構成なのだがいい意味の中堅層の選手が不在というところだ。強い人が圧倒的過ぎてそこに危機感を感じさせる選手層が足りないと感じた。タイトル持ってた山下、挑戦してきた辰巳、渡辺はまだいいとして、荒井優希はキャリア9ヶ月。まだまだプロレスでは若手。その域にいるかと言われたら？な感じ。いい素材は揃っているので誰が飛び出すかが今後のポイントになってくるのかなとも感じた。外敵がいるわけでもないのでそれを求めるのか、中で充実させていくのかはわからないけどそこが今後の課題なのかなとも思った。

興行としては文句なく大成功だった。選手には達成感もあるだろう。それに満足することなく到達点ではなく、通過点なんだというのをしっかり認識してパワーアップしてほしいと感じた試合後の帰路だった。