親知らず占い §1.3

 そんなふうに記憶を思い出しているうちに、梵字がグルグルと回りだす。画面には12時の位置に小さな窓があって、回転が止まるたび、その中にある文字が画面の中央に大きく映し出される。選ばれた文字は、円の下に小さく並べられていく。10回くらい、そうして金色のルーレットが回るのを眺めていると、チャラーン、という軽薄な効果音が唐突になって、

「ケッカガテマシタ」

 と、画面の中央に文字列が浮かんでくる。そいつはもしかしたらサンスクリット語で何かを意味しているかもしれないが、佐藤には単純に、美しい絵のように思えた。真っ暗な画面にはっきりと浮かび上がる、金色のストローク一つ一つが、意志をもって生きているように見える。そして、その下に日本語の文字列が、唐突に現れるのだ。

・猿が歩く川の流れの中にある

???。小首を傾げて、その意味を推し量ってみけれども、全く分からない。これまでで一番。

「はい、これで終了ですね」
「あの、やっぱりこの占いについては…」
「すみません、ここは私たちの担当範囲外なんですよー。お伝えした通り、こちらにお問い合わせいただく形になりますねー」

女医は、眉尻を下げて申し訳ないという表情を作り、掲示板に貼られていたポスターを指差す。

親知らず占いの神秘
~日蓮宗山陰派の開祖が残した、由緒正しき人生占い~
歯の形状という一人一人の個性を元に、そこに現れるあなたの魂の意思(ソウル・インテンション)を読み解きます!
お問い合わせは 03-xxxx-xxxx. まで

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