親知らず占い §1.4

 初めて親知らずを抜いたその日に、電話をかけて問い合わせていたのだけれども、窓口はとても事務的で、
「占いの結果はそのままに受け取っていただくことが大事なのです」
としか答えず、解釈のヒントすらくれなかった。

 でも、これはそもそもただの言葉遊びで、意味なんてないのかもしれない、とも思う。

「先生もこれやりました?」
「実はこれ流行り出した時にはもう親知らず全部抜いちゃってたんですよねー」
「あ、そうだったんですね…」

 そう、会話のネタにもならない。

 この占い自体は、色々なメディアで取り上げられていて、小さなブームになっている。意味深な占い結果に、サービスを行っている会社(すなわち、宗教法人日蓮宗)が解釈の仕方を全く教えないところも、カルトチックで面白い、と。様々なムック本が出回り、ネット上では独自の解釈を展開するファンもいる。"#親知らず占い" はTwitterのトレンド上位に入ったこともあったし、

「こんなに腫れちゃいましたー❤︎止まるならば西より南にせよ、だって。まじ江戸川意味がわからんぽ」

というツイートと一緒に、固まった血のついた歯の写真や、ほおの膨れ上がった自撮り写真が上がっていたりした。

 時おり、佐藤がモニターで見たのと同じように、奥歯の精巧なCGが動画として上がってることもある。何人もの体の断片が、ネットの中に浮かんでいるようで、佐藤はとても淫らだなと思った。そして肝心の占い結果は、どれも同じように、意味不明だった。

 ・心の中に丸を3個用意すべし。
 ・東京ではなく江戸に住むべし。
 ・5つ進んだら2つ戻すべし。
 ・星は1つ、海は3つ。

 この間、テレビで細木数子が「ありゃ、インチキね」と親知らず占いを一刀両断しているのには笑った。このブームのお陰でテレビ出演できているというのに、媚を売るどころか正面からメンチ切る所は流石と言えるかもしれないけれど。本人のHPでは奥歯占いのどこがダメか7つも理由をつけて批判しているらしい。

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