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「どまんなかの価値」を提供しなきゃな、と思った話

このあいだ美容室で炭酸シャンプーを勧められたんです。

「抜け毛とかって気にされますか? いまだとプラス1000円にはなるんですけど、炭酸シャンプーにしてみませんか??」

「そ、そうですね。うーん、また今度にします……(申し訳ないな)」

みたいな会話をしたのですが、けっこう気を使いました。

もしかしたら本当に抜け毛を気にしてくれて、炭酸シャンプーが本当におすすめだったのかもしれません。でもなんとなく営業トークでおすすめしてるのかなー、客単価を少しでも上げるためにがんばってるのかなー、と思ってしまいました。

もちろんこんなご時世ですし、どのお店も大変です。企業努力はすばらしいと思うのですが、若干「そこじゃない感」がしてしまったんです。

ぼくも炭酸シャンプーがイヤだとは思わないし、もし「やりたいな」と思ったときは自分から言いたいです。ただなんとなく顔にタオルかけられた状態でセールストークっぽく始まったのがイヤだったのかもしれません。

振り返ってみると「この美容室にまた来たいな」と思うのは、炭酸シャンプーをしてもらったときではありません。顔のマッサージをしてもらったときでもありません。

それよりもちゃんとイメージどおりの髪型にしてくれたり、時間が経ってもいい感じの髪型がキープできるようにしてくれる美容室です。そういうお店には「また行きたいな」と思います。

あくまで炭酸シャンプーや顔のマッサージ、それからiPadで雑誌が読めますみたいなサービスは「プラスアルファ」の価値であって、ど真ん中の価値があってこそのもの。どんなに付録が充実していても、ど真ん中のコンテンツがイマイチだと「また行きたい」とは思えません。

……と、偉そうに言ってますが、こういうことって自分の仕事とかにも言えるなーと思うのです。

付録をつけたくなるのは、うまくど真ん中の価値が出せなくなったとき、もしくは出せそうにないときです。少し値段を下げてみたり、お客さんにお菓子を渡したり、お歳暮を送ってみたり……。もちろんそういうことをしちゃいけないということではなく、そういうのはあくまで「ど真ん中の価値」を出せてこそ、効いてくるものです。

行きたくなるレストランは「割引キャンペーンがあるから」行くわけではありません。「いつもデザートがおまけでついてくるから」行きたいと思うわけでもありません。「本当においしい(し、値段も妥当だ)」と思うから、またそのレストランに行きたいと思います。ホテルも「シャンパン一杯サービス」があるから泊まるわけではなく、普通に快適に泊まれるからそこを選びます。

その点では「アパホテル」というのは、別に特別なことは何もないのですが(アパカレーがあるくらい?)「ど真ん中の価値」を提供できているからお客さんがたくさん来るのかなと思います。

お客さんが本当に求めているものを提供してくれる。だから「また泊まりたい」と思います。厳密に言うと「泊まりたい」というよりも「ここでいいか」という感じです。それなりに清潔で、それなりに居心地が良くて、それなりの値段であればOK。すごくいいかと言われると微妙ですが、少なくともイヤではない。それがアパホテルです。

うまくいっているモノやサービスは、この「ど真ん中の価値」をきちんと提供できているような気がします。ニトリの家具、吉野家の牛丼、マクドナルドのハンバーガー。どれも「ど真ん中」を外していません。

今は商売もなかなか厳しい時代ではありますが、まず「ど真ん中の価値」を提供できているかはぼく自身も確認したいなと思います。編集・ライティングでいえば、やはり「わかりやすい」とか「おもしろい」とか「きちんと数字がとれる」「お金になる」という価値になるでしょうか。

逆に言えば、この「ど真ん中の価値」をちゃんと提供していれば、値段はそこまで気にならないというのが今の時代な気もします。

多少安くても微妙なところよりは、多少高くてもいいところを選びたい。割引サービスのある美容室とか炭酸シャンプーを勧められる美容室よりは、多少高くてもいい感じの髪型にしてくれる美容室を選びたいなー、とぼくは思います。 


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