Dear Mr.Songwriter Vol.15
佐野元春 with The Heartland
Café Bohemia Part 3
今回はアルバム『Café Bohemia』のB面とシングルB面曲、『ELECTRIC GARDEN #2』をまとめていきますね。
7.ヤングブラッズ Young Bloods M.64
1985年は国際青年年という事で、そのテーマ曲にもなりました。
そしてこの年の6月に行われた国際青年年記念のイベント"All Together Now"では、新しい世代の一員としてトリを務めています。そこで1曲目に演奏されたこの曲はピアノのバラードのアレンジ。曲の良さが際立っていたと思います。
プロデュースは元春。コ•プロデュースとストリングス•アレンジにはキーボードの西本明がクレジットされてます。ギターは横内タケ健広。THE TOKYO BE-BOPのホーンとストリングスとクールなギターのカッティングがとてもいい。
イントロは、やっぱりスタイル評議会に感化されているのは間違いないとは思うけど、カーティス•メイフィールドを経由したソウル•ミュージックの解釈なんだろう。
後に操縦ミスがあったという発言もありました。
そうなんだよ。この曲はラヴソングでもあるしポリティカルな曲でもある。今思えば、確かにこんな曲は聴いたことはなかったな。"鋼のような知恵と輝き続ける自由"を筆頭にすべてがキラー•フレーズなんだよね。
この曲はVol.0でも書いたけど、自分の元春の初体験でした。NHKでスポット的に流れていて、なんとなくいいなって思っててね。それがこの曲だっていうのは、後で知るんだけどさ。
歌詞だけを読むのは、野暮なんだけど、全くもって素晴らしい歌詞だと思う。当時、自分は14歳で、少し大人ぶりたい年頃。ただただカッコいいって思って聴いていたんだけど、"いつの頃か忘れかけてた 荒ぶる胸の思い" のところは、絶賛、荒ぶる胸の思いの中にいた自分には、リアルには響いてこなかったんだけど、ある日それがわかる瞬間がきたんだよね。歌ってそうやって一緒に成長していくものなんだって思ったよ。
この方の言葉でこの曲は締めますね。
"街はブルースで眠るんだ•••と、衝撃を受けました" スガシカオ
8.虹を追いかけて Chasing Rainbow M.65
冬のイメージが強いこのアルバムの中においても特に冬を感じちゃうな。堅実なベースラインと的確なドラミングが冬の散歩道の入り口。
"みせかけの輝きは いつかさびていく できることだけを 続けていくだけさ" このフレーズはこの曲の中でも大好きなライン。
20周年盤としてリリースされた『The Essential Café Bohemia』に新しく録音した「2006 middle & mellow groove version」が収録されている。とても素敵な仕上がりになってます。
9.インディビジュアリスト Individualists M.66
順番でいうと『カフェ•ボヘミア』プロジェクトとしては、最終リリースになった12インチシングル。
このアルバムを象徴している"個" についての曲。『世代より個人へ』キャッチコピーにもなっている。
この個人を大切にするという思想は、自分の生き方の礎になってます。かといって孤立は寂しい。孤独はいいけど孤立はよくないとも言っていましたね。
強力なスカビートに乗せて歌われるのは "Change The Winds"
"なにもかわらないものはなにもかえられない 風向きをかえろ"
というフレーズ。
今の状況に絶望するのではなく自分のやり方を少し変えてみる。そんなことを教えてくれた曲でもあります。
ちなみに、クールなカッティングのギターを弾いているのは、ピアノのSweet Baby阿部ちゃんです。マルチプレイヤーですよね。いいギターを弾いてる!
そして、ポール•ウェラーはこう歌っている。
"他人に責任をなすりつけず 君もともに闘おうと思うなら 僕たちみんな力を合わせねば 決して世の中を変えられないと思うなら この挑戦を受けて行動に移るんだ 国際主義者として立ちあがれ"
スタイル•カウンシル インターナショナリスツ
10.99ブルース 99Blues M.67
東京マンスリーライブの第2回、’86年の5月にオベーションのエレアコ一本での弾き語りで初披露した楽曲。(THE OUT TAKESで観れるけど、今、ビデオデッキがないんだよね。)
『VISITORS』でやったラップ表現をロックンロールのフォーマットに落とし込んでみたという。
ドラム•パターンもカッコいいんだけど、全般で聴こえるギターは元春自身のプレイ。この時よく使っていたのは、ESPのストラトキャスターかな。サンバーストのやつ。そこら辺に耳を傾けるとまた違う聴き方ができるかもです。
残りのひとつが手に入れられない。まったくもってその通り。いつだって君のブルースを歌ってくれてるじゃないか、もうそれでなんとか歩いていけるってもんさ。
11.Café Bohemia (Interlude)
元春のピアノとギター、明さんのシンセ。このブレイクが、次の曲への架け橋のように美しく響く。
12.クリスマス•タイム•イン•ブルー 聖なる夜に口笛吹いて Christmas Time In Blue M.68
このクリスマスソングは前作『VISITORS』のツアーが終わった後の1発目のアクションだった。
レゲエのクリスマスソング。これについては最初はエイトビートのアレンジだったという。VISITORS TOURで「ハートビート」を数回レゲエのアレンジで演奏し、それがうまくいき、自分たちなりのレゲエ的な何かをまた表現できないかという気持ちになったという。
それから1ヶ月リハーサルを積んだハートランドのメンバーと東京でレコーディングをし、スティーヴ•スタンレーにミックスをしてもらうためにニューヨークへ飛ぶことになる。
スティーヴ•スタンレー
元春がスタンレーのことを知ったのは、ニューヨーク在住の時に聴いたレコードからだという。B-52'sの『パーティ•ミックス』レゲエ•バンドのスティール•パルス、そしてスライ&ロビーの作品が気に入っていた。
そしてこのミックスはジミ•ヘンドリックスが作った"エレクトリック•レディ•スタジオ"で行われた。
自分の中ではクリスマスはこの曲だけでいいなってくらい大好き。恋人たちだけのものではないグローバルなクリスマスソング。これってほんとに"ザ•佐野元春"なんだと思う。
でもこれが万人に受けるのかというと少し違うのかなとも思う。結局、この国で流れるクリスマスソングはお決まりの曲だしね。
アンジェリーナ Slow Version
シングル「ストレンジ•デイズ」のB面に収録。
『VISITORS TOUR』ではこのアレンジて披露されていた。
スロー•ファンクという感じだね。これはこれで好き。
大友康平と千倉真理がパーソナリティをしていた文化放送の『スクールズ•アウト』というラジオ番組で1988年6月15日放送回に元春がゲスト出演した時に、このスロー•ヴァージョンの「アンジェリーナ」がかかった時、千倉真理さんが絶賛だったのを覚えてます。
Looking For A Fight M.69
「シーズン•イン•ザ•サン」のB面に収録。
片岡鶴太郎への提供曲として1985年11月21日にリリースされている。
セルフカバーという形で"東京マンスリーライブ"などで終盤にセットされていた。
元春の楽曲の中でも珍しいといっていいストレートなロックンロール。間奏のダディ柴田のサックスがとてもいい。
「ワイルド•ハーツ」に繋がるようなテーマを持っていて、ここではない何処かへ行こうという決意みたいなものを感じるとても勇気づけてくれるナンバー。
アルバムに未収録な楽曲を聴くのも楽しみのひとつでした。
Shadows Of The Street M.70
Dedicated to my friend RON SLATERというクレジットがあるように、ニューヨーク在住時の友達に向けて作った楽曲。これは、やはりひとつの作品としてきちんと残しておきたかったのだろう。
その事を抜きにして聴いてみても、元春が得意とする良質なフォーク•ロック•サウンドか聴ける。
ELECTRIC GARDEN #2
豪華仕様だった前作に比べるとザ•無印のような仕上がり。
アート•ディレクター 駿東宏の仕事はこの『ELECTRIC GARDEN#2』が一番最初の仕事だったという。
完全な製品 Perfect Production M.71
"みんな欲しがるPERFECT PRODUCTION
近代工場から送られてくる毎日毎日の消費物
誰もが自動的に求めてしまう"
"一度僕は捨ててみよう
すべてのPERFECT PRODUCTION
ほんとうに彼女が必要になる時まで"
ここでのテーマは、おそらくデビュー当時から言及している高度消費社会においての『直接性』を取り戻すということなんじゃないかな。
形のくずれた卵、ありのままのトマト
ふぞろいの食品達
防虫駆除を徹底され、きれいな形に整えられ、スーパーマーケットに並ぶ野菜。
近代工場から送られてくる消費物を自動的に求めてしまうことの危機感。
そこに警鐘を鳴らしているんだと思う。
ある9月の朝 M.72
クレイジーなトウキョウ。
ニューヨークは?パリは?ロンドンは?ベルリンは?
•••までに M.73
コンクリート•フィッシュにはまだ出会えないまま。君は?
アルバム『カフェ•ボヘミア』今回は3回に渡ってしまいましたが、みなさんはどう感じましたか?
ここでのメッセージはあの時と同じ色褪せないまま残っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ではまた次回!
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