見出し画像

「健康日記」:日本医学会総会2023東京 博覧会 コミュニティ クリニック 02

2023年04月22日、私は東京国際フォーラムを訪れ、一般客として、日本医学会総会 2023 東京 博覧会(以下2023博覧会)に参加した([1])。

 

私達が心身の不調で医療機関にかかった場合、その時の診療の記録や検査結果などは、診療を受けた医療機関だけにカルテ(診療記録)として保存・保管される。処方薬の情報や別の医療機関を利用した場合も、それぞれの場所に保存・保管されている。

 

ここ数年、個人の健康や医療、服薬に関わる、バラバラに保存・保管される情報を、1か所に集約しようとする取り組みが始まっている。

日本では医療や健康の分野において、医療データの取り扱いについて積極的に情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)を活用していこうと、大きく3つのことに取り組んでいる。

1つ目は、地域医療連携ネットワーク(Electronic Health Record:EHR、地域の病院や診療所などをネットワークでつないで、患者情報等を共有し活用する基盤)の高度化・標準化を進め、低コスト化を図ることである。

2つめは、医療データの利活用である。病院や薬局ごとに保存・保管している個人の医療データであるパーソナル ヘルス レコード(Personal Health Record:PHR)を自らが管理し、具体的なサービスモデルや情報連携技術モデルを構築していこうとすることである。いずれはAIを活用することも視野にいれられている。PHRの利活用は、散在している診療の記録などを1か所に集約しようという動きのことである。

3つめは、高精細映像技術(例.8K技術など)を用いた、8K内視鏡の開発、診断支援システムの構築、および、遠隔医療の実現の推進である。診断支援にもAIの活用が考えられている。

 

PHRは、個人の健康・医療・介護に関する情報のことを意味する。個人の健康・医療・介護に関する情報を1人1人が自分自身で生涯にわたって時系列的に管理・活用することで、自己の健康状態に合った優良なサービスの提供を受けることができることを目指すとされる。

 

私達はこれまで、多くの健康や医療に関する情報を、種々の手帳や書類の紙媒体に記録を残してきている。それらの記録はその時のライフ ステージ(人生の節目)によって、記録が残る媒体や場所も異なる。例えば、出産に際しては「母子健康手帳」、学校教育を受ける時期には「学校健康診断の結果」、就職に際しては「定期健康診断の結果」などである。また、体調によっては「疾病管理手帳」や「お薬手帳」などによって、自身の健康管理をすることになり、また、高齢層になれば「介護予防手帳」や「かかりつけ連携手帳」に記録する、記録されることもある。

こうした、もともとある「手帳文化」をデジタル化し、データとして一元的にまとめることで自分で管理・活用していこうということである。

 

総務省が平成28年(2016年)度から研究を進めているPHRモデルによれば、まずは個々が自分のライフステージに応じたアプリケーション ソフトウェア(以下アプリ)を取得する。アプリは関係団体や組織から配布される。

自治体からは「母子手帳アプリ」、「学校健診アプリ」、「介護防止アプリ」が、加入する健康保険の保険者からは「健康管理アプリ」や「生活習慣病手帳アプリ」、医療機関や介護施設などを経由したEHRからは「かかりつけ連携手帳アプリ」というように配布される。

これらのアプリを通じて、本人同意のもと、個人の医療情報や健康情報が時系列で、「PHR事業者」と呼ばれる専門業者によって収集される。

こうしたデータは様々なことに活用されると予想される。

例えば、災害や救急時の処置では、幼少期の既往歴や現在のアレルギー情報などを参照した上で処置が行われ、転出入の際にはこれまでの診療情報を把握した上で診察されることになる。民間の保険会社では、個人の健康状態に応じたきめ細かい保険料や新しいサービスの提供にもつながる。 

 

PHRには脈拍、血圧、体温などの身体から取得できる情報であるバイタル データも含まれる。バイタル データや健診・検診結果を統合し、よりその人の健康状態にあわせた良質な健康増進プログラムや予防プログラムを提供することも可能になる。

また、蓄積されたデータは臨床研究機関などに分析・活用され、今後の医療の発展に役立てられる。

 

さらに、平成29年(2017年)度からの3年間では、保険者である自治体に蓄積されている健診・レセプト データ(保険診療データ)、事例データ、エビデンス データ(臨床結果などによる科学的根拠)等を収集し、AIによる解析を行い、地域や個人が抱える課題に応じた適切な保健指導施策の提案実施も行われている。

 

PHRの活用は既に事業として進められている、課題も残されている。デジタル機器の利用を難しいと感じる人・世代への対応や、仮にそうした機器の取り扱いができる場合でも、PHRは非常にデリケートな情報である点などである。インターネットを介する情報のやり取りが前提になるため、個人情報保護やセキュリティの確保が必須であると考えられる([2])。

 

「日本医学会総会2023東京 博覧会 コミュニティ クリニック PHR」で、株式会社 ヘルステック研究所は無料アプリ「健康日記」を紹介した。

「健康日記」は、ヘルステック研究所と京都大学の共同研究の成果物として、無料配布される。

自分で毎日の体重、血圧、および、カロリーなどを記録できスマートフォンのヘルスケア機能と連携すれば歩数などを自動的に取り込むこともできる。 また、各種体温計とのデータ連携機能を搭載しており、日々の体温の記録も手間なくスムーズにできる。 通院や運動記録など自身の健康に関する日記機能や診察券の画像の保存機能など随時機能が追加され、 アプリ1つで自身の健康の記録がほぼ網羅できるようになっている。2020年03月にリリースして以来、現在18万人以上の人々が利用している(図02.01,[3])。

図02.01.「健康・医療情報を個人が保有し、自分の意志で診療時に活用できる社会へ」。

PHRソフトウェアの開発と普及は非常に興味深いものである。



参考文献

[1] 第31回日本医学会総会2023東京 展示事務局.“第31回日本医学会総会 博覧会 ホームページ”.https://tsunagu-iryo.jp/minna-expo/,(参照2024年01月08日).

[2] 公益財団法人 長寿科学振興財団.“PHR(パーソナル ヘルス レコード)について”.健康長寿ネット トップページ.健康長寿とは.高齢者とICT.2019年08月09日.https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/koreisha-ICT/PHR.html,(参照2024年01月18日).

[3] 株式会社 ヘルステック研究所.“『健康日記』 毎日の健康状態を記録する無料アプリ”.ヘルステック研究所 ホームページ.サービス.https://htech-lab.co.jp/products/kenkounikki.html,(参照2024年01月19日).

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?