マーケティングとは人為的に問題を作り出すことなのか?

ピーター・ドラッカーはこう言いました。

「企業の目的は1つしかない。それは、顧客の創造である。そして、その活動は、「マーケティング」と「イノベーション」の2つに支えられる」。

ビジネスとは常に「問題の開発」と「問題の解消」の組み合わせにあるのだとすると、「問題の開発=マーケティング」「問題の解消=イノベーション」ということになります。つまりマーケティングとは、人為的に問題を開発することで需要を創り出す学問、という考え方が出来ます。そしてその裏には、既に物質的な需要は満たされている現状(先進国)において、無理やりにでも需要を作り出さないと企業が利益を創出して経済が成長していくことが出来ない、という背景があります。そのために開発されたスキルがマーケティングであるという考え方です。

こう言う定義をすると、お腹いっぱいの人の口に無理やりアンパンを押し込みにいくような仕事のような感じがして、少しネガティブな印象がありました。
私は、金融業界のマーケティングの仕事をして10年近くになります。金融商品という目に見えない特殊な商品について、誰に(Who)、どんな価値(What)を提供するかを定義し、それを商品や資料等に落とし込み、お客様へ届ける導線を考える(How)仕事です。もっと具体的には、WhoとWhatを社内で議論して仮説を考えて、それに基づいたプロトタイプを作り、それをお客様のところに持っていって意見をヒアリングして、改善をする。そのサイクルを繰り返す仕事です。
果たして、この仕事が、人為的に問題を開発することで需要を作り出している、ということになるのでしょうか?少し考えてみたいと思います。

まず、金融商品は既にお客さんの需要を満たすほど世に溢れているのでしょうか?これについては、迷いなく、「Yes」と断言します。投資信託、保険、債券、株式、最近ではロボアドなど、間違いなく世の中に金融商品は溢れかえっています。最近は、インデックスファンドなどほぼ無料で提供されている商品も見られ、競争環境は日々激化しています。

また、今年から新NISAも始まって、国の後押しを受けている業界でもあります。さらに、預貯金にお金を置いても利子はほとんどつかないどころか、物価上昇や円安による影響で資産価値はどんどん目減りしていく環境であり、金融商品(特に株式や投資信託などリスク性資産)がもっと売れて然るべき環境と言えそうです。

しかし、金融商品の残高はそこまで大きく増えているわけではなく、日本の国民の金融資産の半分以上は昔から変わらず預貯金で占められています。

なぜでしょうか?金融商品の需要は既に満たされているからでしょうか?本当にそうなのでしょうか。アメリカや欧州では預貯金の比率はもっと低く多くの人が投資信託などの金融商品に投資して資産形成に成功しています。が、日本ではいまだに多くの人がその潤沢な金融資産を活用しきれていません。

私は、こういう業界だからこそ、マーケティングの果たす役割がとても大きいのではないかと思います。ドラッカーの言葉をもう一度引用すると、顧客の創造は「マーケティング」と「イノベーション」の2つに支えられるとあります。金融商品は世に溢れかえっていて、イノベーションの余地はかなり小さくなっていると考えられます。そうするともう残りは、「マーケティング」しかありません。

顧客の創造をするためのマーケティングとは何が求められるのでしょうか。これはやはり、先述した、WhoとWhatをしっかり突き詰めて定義し、それをHowに落とし込む。恐らくどんな業界でもこの短い一行に集約されるのではないでしょうか。

自分は金融業界に勤めるマーケターとして、まだまだやるべき仕事は多そうです。ほぼ無料で投資できるインデックスファンドを開発しただけでは、既存のパイの奪い合いをしているだけでパイそのものの大きさは対して拡大していないかもしれない。

パイが拡大できるかどうかは、マーケターの仕事次第。ああ、なんてやりがいのある仕事なんだろうか!!

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