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物語の入り口

訪れたパペット工房には、誰もいなかった。ノックしてみたが、鍵の掛かったドアは開かなかった。外で鳴いている猫の声が聞こえるだけだった。

旅行へ行く前に、観光スポットのリストを上げて、ガイドをつけて回ったりすることが苦手な私。
イスタンブールに滞在していたその日も、WEBで、パペット工房を見つけ、ワクワクして、
[ワークショップもいつでも…』と書かれていたのをいいことに
連絡をしないで来てしまった。
宿のお姉さんに電話を掛けて貰えば良かった…。
工房は、数ヶ月に、他の町へ引っ越して行ったらしい。ビルの下の階のご夫婦が教えてくれた。

仕方なく、歩いてきた1時間の道を
がっかりした気持ちと一緒に帰ることにした。

観光客向けのshopが並んでいる道は、行き道よりうるさく感じた。
みんな自分に携帯を向けて写真をとっている。
そんな時、小さな店が目に留まった。

「切手屋さんだ」思わず声に出していた。ゆっくり中を覗いてみた。
店内は、ヨーロッパ調のクラシックな雰囲気に包まれ、まるで絵本の中のような空気が漂っていた。

私は、ガラスの入った重いドアを
ゆっくりと押した。

(つづく)

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