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フリーランスのための、業務委託契約書の「発注内容」の具体的な書き方

業務委託契約書には「発注内容」を書く部分が必ずあります。でも具体的に契約書にどんなふうに発注内容を表現すればよいのか? と迷うことがあると思います。そこで、発注内容の書き方を説明し、記載例を挙げます。

何をいくらでやるのか?

そもそも「業務委託契約書」には、何をいくらでやるのか、という契約内容が記載されています。

ちなみに「業務委託」というネーミング自体は法律用語ではありませんが、多くのビジネス取引である、「請負契約」や「委任契約」の総称と考えられます。フリーランスにとっては、ようするにお仕事の依頼を受ける際の、クライアントとの間の契約のほとんどが「業務委託契約」に該当すると思います。
この契約で最も大切なのは、あなたが誰から仕事を依頼されているのかと、その仕事の内容と対価(=何をいくらで)をはっきりさせることです。契約は原則として、口約束などの形の無い方法でも成立しますが、あえて書面に残すことで明確化(記録化、証拠化)することができます。

シンプルな契約書の考え方

つまり「業務委託契約書」には最低限、
①いつ、誰と誰が契約したのか? 
②仕事の内容は? ようするに何をするのか? 
③その対価はいくらで、いつ支払われるのか? 
が書かれているべきです。

業務委託契約ではっきりさせるべきことは
①いつ、誰と誰が契約したのか
②何をするのか?(仕事内容)
③対価はいくらで、いつ支払われるのか

竹永行政書士事務所 業務委託契約ではっきりさせるべきこと

もっと複雑な契約書との違い

余談ですが、ビジネス契約書は以上のシンプルな内容に条文を付け加えて、もっと複雑な内容にすることができます。それは、イレギュラーなことが起きた場合にどうするかをあらかじめ決めておくためです。たとえば、「もしも」仕事を途中で中止することになった場合に代金はどうなるのか? とか、「もしも」裁判することになった場合に裁判所を決めておくとかですね。ビジネスの「もしも」は、いくらでも想定することができます。これを書くと契約書はどんどん長くなります。

しかし、「長い」契約書が「優れている」契約書だとは限りません。契約書は手段ですから、目的にそぐわない複雑な契約書は、生産性のじゃまになるだけです。

たとえばコンビニで600円のお弁当を買うのも、ある種の取引契約には違いありませんが、だからといっていちいち「中止した場合」だの「裁判した場合」だのを想定しませんよね。契約書を画一的にとらえずに、どの取引にどれくらいの契約書が必要なのか、主体的に判断できるようでありたいものです。それほどリスクは想定せずに、シンプルな契約書で十分なケースも多いはずだからです。

原稿を書く仕事の「発注内容」の書き方

さて話を元に戻して、「何をするのか」の部分、お仕事の発注内容の書き方です。具体化するための考え方は(1)まず大きなカテゴリーで内容を定義して、その次に(2)小さなカテゴリーで箇条書きにするとうまくいきます。コツは、納品される様子をリアルにイメージしながら書くことです。

たとえば「原稿を書く仕事」なら、大きくいえば「原稿の作成」が仕事であり、これを小さなカテゴリーに分解すれば、「5千文字の文章、小見出し、タイトル」のように具体的にされるはずです。

以下のような記載が考えられます。

原稿を書く仕事の「発注内容」記載例
(1)発注内容
依頼者○○○が管理運営するオウンドメディアサイト「AAA」 の特集記事として掲載される、電子契約の最新動向に関する原稿を作成すること
(2)具体的仕様
内容と分量 :
・タイトルコピー1本(20 字以内)
・本文小見出し3本以上適宜(各20 字前後)
本文(5000 字~8000字前後)
納品形式:.word ファイル形式
納品方法:依頼者○○○が指定する電子メールアドレス宛に、ファイルを添付する方法により納品すること

竹永行政書士事務所 記載例


また、イラストを描く仕事なら、大きくいえば「イラストの制作」が仕事であり、小さなカテゴリーに分解すれば、「テーマ、ファイル形式、その他の条件」で限定していけるはずです。
以下のような記載が考えられます。

イラスト制作の仕事の「発注内容」記載例
(1)発注内容
依頼者○○○がYouTubeチャンネルに利用するキャラクターデザインの制作
(2)納品の形式
psd ファイル形式(○○dpi)で納品する
(3)納品方法
データを依頼者○○○が指定するサーバにアップロードする方法により納品すること

竹永行政書士事務所 記載例

たいていの仕事はこのように、大カテゴリ→中カテゴリに箇条書きすることで、具体化できます。さらに細かい仕様書がある場合には、それを別紙として契約書に添付し、その旨記載することで発注内容を規定することもできます。これはよく使われるテクニックなので、覚えておくと便利だと思います。

記載例
「なお、本作品の詳細は、別紙1(〇〇の作品に関する仕様書)に規定する」
(別紙を契約書と一緒に綴じる)

竹永行政書士事務所 記載例


注意:仕事の成果に著作権が含まれている場合

さて簡単な記載方法を説明しましたが、注意点として、原稿やイラストなどのように、著作権が発注内容に含まれる場合は、お仕事の納品にあたり、その著作権が「譲渡」されるのか、あるいは「許諾」されるのか、そしてその権利や許諾の範囲も記載する必要があります。

著作権を譲渡する場合の追加文言

著作権は譲渡する場合で、著作者人格権の不行使は合意していない場合
「納入物に含まれる著作権(著作権法第27条及び第28 条に定める権利も含む。)については、発注内容に含み、対価の完済と同時に依頼者(or 貴社、甲)に譲渡されるものとします。」と規定します。尚、このとき、著作者人格権の不行使を合意している場合には「著作者人格権を依頼者(or 貴社、甲)に対して行使しないものとします。」と書き添えます。

記載例
納入物に含まれる著作権(著作権法第27条及び第28 条に定める権利も含む。)については、発注内容に含み、対価の完済と同時に委託者(or 貴社、甲)に譲渡されるものとします。尚、受託者(フリーランスや弊社、乙)は著作者人格権を委託者(or 貴社、甲)に対して行使しないものとします。

竹永行政書士事務所 著作権を譲渡する場合の記載例

著作権を許諾する場合の追加文言

著作権の利用を許諾する場合には、許諾の内容を詳細に決めることが一般的です。権利者は目的や利用の態様、期間、地域など、さまざまな指定をすることが可能です。そこで「納品物の利用は、以下の範囲に限られるものとする」などとして、この点を具体化します。これは非常に重要な契約条件になるので、慎重に!

記載例
乙は、甲に対し、以下の範囲に限り、納品物の利用を認めます。
目的 :○○に掲載して利用する
(ウェブサイト、YouTube、各種SNS、チラシ、カレンダーなど具体的な利用目的を記載)
媒体名 :XXX
(前記の媒体に雑誌名、サイト名などある程度特定が可能になるタイトルがついていればそれを記載。ウェブサイトのようにURL :https://・・・が定義できるものはそれを記載するのも良い。)
期間 :2022 年〇〇 月〇〇 日から2023 年〇〇 月〇〇 日まで
(許諾の期間を設定する場合に、その期間を記載。期間は具体的日付によるほか、契約期間と同一としたり、何らかの条件によって設定しても良い。)

竹永行政書士事務所 著作権を許諾する場合の記載例


まとめ

業務委託契約においては、その発注内容は重要な要素ですが、書き方に迷う方が多いようです。記載例を参考にしてみてください。また、原稿、イラスト、写真、動画、などなど、納入されるお仕事の内容に「著作権」が含まれると考えられる場合、その「譲渡」または「許諾」についても、契約書で明確にすべきです。この点はぜひ慎重に記載や確認を行ってください。

少しでも参考になっていますと幸いです。

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