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京サラ2022年募集馬検証その③ ~ベストレートの22編~

皆さんこんにちは!
ようやく第3弾!今回はベストレート22編です!

評価基準は例によって、

①馬体や歩様は見てもわからないので自分では考えない。
②血統面(配合面を主として種牡馬成績・繁殖成績も含めて判断)
③牧場・厩舎についてはライン評価も込みで判断する。
④馬体については各種コメントを踏まえ、血統評価との相関性を重視する。
⑤連産、母年齢、セックスバイアスは最終的に補正する。

としています。
評価はS+~Eまでの12段階評価としました。

Sクラス…GⅠ級
Aクラス…重賞級
Bクラス…OP級
Cクラス…準OP~1000万下級
Dクラス…500万級
Eクラス…未勝利級

5つの評価値の平均を出したのち、以下の2点を補正評価として加えたうえで総合評価と致します。
補正評価は+1でランク1つ分(BならB+に)となります。

[連産リズム補正]
これは高産次・連産についての考察として比較的信頼度の高いものとして、こちらのカミノアナログ氏の理論から拝借しております。

[セックスバイアス補正]
種牡馬の牡牝成績に関連して、補正を行っております。

また、総合評価に対して、募集金額・勝ち上がり率・獲得賞金期待値を勘案したコストパフォーマンス評価も採り入れ、最終的なオススメ度とさせていただいております!
こちらは独自の計算式に基づいておりますが、一口においては重要なファクターだと思っております。

では、では早速検証に入りたいと思います!

【⑦ベストレートの22】
父ビッグアーサー×母ベストレート(母父ゼンノロブロイ) 牡・母9歳時・4連産目
栗・羽月厩舎 高橋ファーム生産 預託生産馬 1000万募集(サマーセール主取り)


【父馬から見た配合評価】
父ビッグアーサーはサクラバクシンオー晩年の傑作。
デビューから5連勝を飾るなど父の後継としての期待を一身に集め、4度の重賞で1番人気に推されるも、マイル戦と勘違いしていた鞍上の仕掛け遅れや、ディープインパクト産駒と勘違いしていた鞍上の位置取りミスなどもあり全て惜敗。
しかし、重賞未勝利のまま挑んだ高松宮記念では、新たにタッグを組んだ福永祐一を背に乾坤一擲、見事勝利し後継種牡馬としての道を切り開きました。

なお、ディフェンディングチャンピオンとして挑むことになった同年のスプリンターズSでは、なぜか本馬の前に突如壁が出来るという不運もあり12着と大敗しています。



さて、そういった不運も乗り越えながら、種牡馬入り後もトウシンマカオ(京阪杯)などを輩出するなど短距離種牡馬としての地位を確立しつつあるビッグアーサー。

そんなビッグアーサーですが実は……










サクラバクシンオーの後継ではありません!!!!!!











いや、すみません。
もちろんビッグアーサーはサクラバクシンオーの産駒で間違いありません。

ただですね、産駒にはそのサクラバクシンオーらしさをあまり伝えないんですよね。



まず、そもそも“サクラバクシンオーらしさ”とは何なんでしょうか?


これは端的に言うと、Princely Giftであるというに尽きると思います。

ここから少し長くなるんですが、ちょっとサクラバクシンオーとPrincely Giftのお話を。(面倒な人は飛ばしてくださいw)




Princely Giftは大種牡馬Nasrullahの直仔。

現役時代大した実績はありませんでしたが、その直仔であるテスコボーイが輸入されると活躍馬を量産しました。
トウショウボーイ、テスコガビー、ハギノカムイオー、サクラユタカオーなどの大物を出す一方で、高い勝ち上がり率もマークし、5度のリーディングを獲得するなどこの時期の日本競馬を席巻。

産駒であるトウショウボーイもミスターシービーの陰に隠れがちですが、種牡馬としての勝ち上がり率は高く「お助けボーイ」と呼ばれ馬産地で重宝されていたというのは有名な話です。

その産駒の1頭、サクラユタカオーは名牝系スターロッチの子孫アンジェリカとの間に産まれた産駒で、母父がネヴァービートなのでNasrullah3×4のクロスを持っていました。

サクラユタカオーはクラシックこそ未勝利に終わったものの、5歳時の天皇賞秋で同期の二冠馬ミホシンザンなどを下しGⅠホースの仲間入りを果たします。
しかし次戦ジャパンカップは海外勢の前に6着。
そして、引退レースとなった有馬記念では1つ下のダービー馬、ダイナガリバーに敗れ現役生活を終えることになります。

そのダイナガリバーの父はあのノーザンテーストでした。


Northern Dancerの産駒として輸入されたノーザンテーストは初年度から有馬記念馬アンバーシャダイを出すと、翌年はシャダイアイバーでオークスを勝ちクラシック初制覇。
そして、1983年産のダイナガリバーでダービーを初制覇すると最盛期を迎え、1982年以降10度のリーディングを獲るなど日本の血統地図を塗り替えるほどの活躍を見せます。

この時期から日本競馬は一気に転換期を迎えることとなりました。

卓越したスピードを伝えながらも、やや単調で非力さと脆さも同居しがちだったPrincely Giftの系統は、軟質でありながらバネのある近代血統の前に一気に隅に追いやられてしまいます。


そんな中でPrincely Giftが唯一生き残る道…。
それが、当時整備されたばかりの短距離戦線でした。


ところで、ノーザンテーストの初年度産駒、アンバーシャダイ。

その母であるクリアアンバーは社台Fが導入した米国産牝馬で、アメリカで種牡馬としてはもちろんBMとして名を轟かせたBull Leaの3×3のクロスを持っていました。

そのアンバーシャダイの全妹であるサクラハゴロモとサクラユタカオーの間に産まれたのがサクラバクシンオーでした。


当時のチャンピオンサイアーであるノーザンテーストとアメリカンパワーの塊と言えるBull Leaの血を得て、衰退しかけていたPrincely Giftの血はスプリント戦線で復活を遂げます。

(当時、在来血統はPrincely Gift系のみならず苦戦を強いられていたわけですが、それでも当時の主流血統を上手く取り入れることで残存した系統もありました。
トウカイテイオーなどはまさしくそうで、牝系を辿れば久友(ヒサトモ。牝馬で初めてのダービー優勝馬)がいる由緒正しい血統だが、母父はナイスダンサー、母母父はファバージとどちらも当時のトップサイアーの代替種牡馬が付けられている。
ノーザンテーストやテスコボーイではなく、代替種牡馬の血を引きながらあんな名馬が産まれるんですから面白いものですね。)


サクラバクシンオーは雄大な馬体でありながら手先の軽さはPrincely Gift譲りであり、GⅠに昇格して間もないスプリンターズSを連覇するなど短距離界で君臨することとなります。

そして、種牡馬入りしてからも数々の名スプリンターを送り出し、中距離戦線の血統図がノーザンテーストからサンデーサイレンスに変わってもなお、短距離戦線の雄としてPrincely Giftの血を伝え続けました。


スプリンターには大きく分けると2通りのタイプがいます。
1つはDanzigのようにパワーで掻き込むように走るタイプ。そしてもう1つは手先の軽さとロスの無いストライドで走るタイプ。
バクシンオーは典型的な後者でした(レースを見てもらえれば分かりやすいですが『好位から差す』競馬をしています)

バクシンオーは産駒の代になるとBull Leaの影響が薄くなったのか、軟らかで軽快な速力は伝えるもののパワー不足と言う馬が多く、実際あれだけ短距離での活躍馬を輩出しながらGⅠは4勝しかしていません(しかも直線急坂のスプリンターズSは未勝利)

グランプリボスは母父にサンデーサイレンスを迎えたことでマイルにも対応し、朝日杯とNHKマイルカップを勝ちました。
ビッグアーサーはそれとは対極で、バクシンオー産駒の非力さを母方の頑健さで補うことでスプリンターとして足りないピースを埋めることに成功しました。


さて、ここからようやくビッグアーサーの話になります(笑)


ビッグアーサーの頑健さとはなにか。

それは母シヤボナが持つNureyev≒Sadler's Wellsの2×3のクロスにあります。
そして、2頭に共通するのは名牝Specialの血を引いているということ。

実はNureyevもSadler's Wellsも現役時~種牡馬入りぐらいまでは距離不安が囁かれていました。
それは自身の成績もそうですが、Specialの全兄Thatchがマイラーであったことや、Specialの母母父にあたるGold BridgeがThe Boss系(ザボス。ウイポで速攻滅亡するあの血統です(笑))生粋のスプリンターであったことなどに由来しているそうです。

そんな雑音をよそにその後全世界の血統図に名を遺すようになったのは皆さんの知るところでもあると思いますが、要は元々この2頭の本質はヨーロピアンマイラーなんですよね。
Specialの伝える頑健なヨーロピアンマイラーのニアリークロスが、ビッグアーサーの底力になっていたと言えます。


そして冒頭のテーマに戻るのですが、ビッグアーサーはPrincely Giftの軽さよりもこのSpecialの硬さを産駒に伝える傾向があります。


ビッグアーサー産駒の芝ダ出走傾向は現時点で芝56%。
最初は芝で下ろすことが多いであろうことを考えると、思いのほか芝寄りではありません。
バクシンオーが芝68%であったことと比較するとなおのことその傾向がわかると思います。
とはいえ、上位で活躍しているのはやはり芝馬なんですよね。

つまり、ビッグアーサーの相手として求められる血は『芝向きの軟質な筋肉』と言うことになります。
産駒傾向を見る限り、父に比べると明確にサンデーサイレンス内包馬との相性がいいのもそれを示しています。

ザックリとまとめると、

・SSは必須レベル
・Nijinsky(Bull Page)やHail to Reason(Nothirdchance)、RomanでクリアアンバーのBull Poise≒Europaと脈絡
・HabitatやPrincely Giftの軟質で軽快なスピードをプラス

と言ったところでしょうか。


当のベストレート22の配合はというと母父ゼンノロブロイなので①はクリア。

②もローミンレイチェルの3代母Plucky Romanが父Romanで、かつSir Gallahadの2×4を持っており、ベストレート自身もRomanのクロスを持っているのでこれもクリア。

ただ、③にあたるような血は持っていません。

また、Nureyev≒Be My Guestの5×5がどうなのかなという点もありましたが、プロモーションがRiverman≒Bold Bidderであり、更に自身もBold Bidder(Bold Ruler&Princequillo)という軟系米血の6×6を持っているので心配ないでしょう。

ビッグアーサーの相手としてまずまず優秀な肌馬だと言えると思います。

長い割にベストレートの22のことほとんど書いてないなwww

父視点の配合評価[C+]


【母馬から見た配合評価】

母ベストレートは現役時代1勝。芝2200mで勝ち上がりました。

母母プロモーションがHyperion7本のかなり欧州寄りの血統構成なのに対して、母父ゼンノロブロイはHyperionを1本も持たないというゴリゴリの米血です。
それをマイニング≒Woodmanの4×4が繋ぎ止めているという非常にバランスの取れた血統構成。
産駒の主張もこのマイニング≒Woodmanが強く表出しているようで、ここまでデビューした2頭の姉(シニスターミニスター産駒)はどちらも京サラで募集され勝ち上がっています。

ただ、シニミニの相手として見た場合、アメリカンなパワーにやや欠けるのでベストの相手にはどうも思えません。

ビッグアーサーの場合適性は芝寄りであり、かつ純粋に速力を増強出来るのでその点はベストレートにとってプラスでしょう。

また、父の項でも書いた通り、Be My Guest≒NureyevがHyperionの硬さをONにしてしまう懸念はありますが、Bold Bidderのクロスがそれを中和する役目をになっているので心配はないと思います。
欲を言えばTom Foolの継続が欲しかったですね。

母視点の配合評価[B+]


【配合総評】
満点とは言えないですが、双方の急所を丁寧に補い合っていて、父母どちらの観点からでも高得点が付けられるまずまずの好配合です!

硬く出てしまった場合は勝ち上がりにも苦労する可能性はありますが、柔らかく出た場合はむしろ上級条件まで見れる質の良さがあります。

マイルもこなせる1400型スプリンターですが、年を取って硬さが出てくると1200型に寄ってくるのではないでしょうか。
ダートはこなしてもおかしくないが、むしろダートをこなせるようだと出世はしないかも。

配合総評[B]


【牧場評価】

京サラ御用牧場にもなりつつある高橋ファーム。本馬は山上氏の預託生産馬になります。
現2~8歳までの賞金10傑の内、シニスターミニスター産駒が7頭と非常にシニミニ産駒を得意としている反面、芝の活躍馬は現5歳のココリホウオウの中央2勝がトップとやや心許ない。

リリーミニスターを除けば、賞金上位馬は概ねセール出身か預託生産。
前述のココリホウオウは432万、無敗の南関三冠馬となったミックファイアは550万とかなりの安値だが、どちらもサマーで売り切っているあたりリザーブは低めに設定していそうです。

高橋ファーム-京サラは過去7頭デビュー済みで、預託生産馬が1/4(フルム)で勝ち上がっているのに対し、非預託生産馬は1/4。
特段の偏重は特に見られません。
オープンクラスを出す土台はあるものの、芝馬での実績は薄いのであまり高い評価はできないかなあ。

牧場総評[D+]


【厩舎評価】

京サラと言えば羽月厩舎!(1勝)
リニューアル後4頭の預託馬がいましたがなかなか勝ち星を挙げられず。
現3歳のバスドラムガール未勝利脱出でやっとこさクラブ初勝利を挙げました。
ただ、山上氏(グリーンスウォード)個人名義からは2勝馬のシルバークレインやイルミネーターが最高成績なので、元々メインステイブルというほどの扱いではないんですよね。

近年は年間10勝前後、リーディング100位未満が定位置。

特徴は何といっても出走頻度で、1頭あたりの年間平均出走数4.9走(全厩舎平均4.5)もさることながら、勝ち上がりまでの平均出走回数4.5回はトップクラスの数値です。

現6歳のイルミネーターが現時点で34走(年間9走ペース)、4歳7月で引退したエンペラーズパレスが19走(年間10走ペース)ととにかくめちゃくちゃ使う。

出走手当が1走あたり約40万、預託料が約60万なので手当てだけで預託料の半分ぐらいはペイしている計算になりますね。
これは安馬を出資するうえでは非常に重要な指標じゃないでしょうか。

ちなみに前述のバスドラムガールは7戦目での勝ち上がり。1月にデビューして既に9戦しているので年間12走ペースです(笑)

騎手起用は本来結構バラバラだが、京サラの場合はほぼ主戦水口。
ただ、いずれにせよ継続騎乗が多く乗り替わりが少ない傾向にあります。(乗り替わり率45%。全厩舎平均は54%)

芝ダ傾向は顕著に芝<ダ。

根拠はありませんが、山上さん自身が羽月厩舎を『とにかく頑丈な馬用厩舎』として考えている節は無きにしも非ずかなと。
成績だけで言えばDランクかなと思いますが、数を使うという点が京サラの方針とマッチしているので、その点は補正するべきかなと思います。

厩舎評価[C]


【馬体相関評価】
測尺時馬体重…416㎏
デビュー時予測馬体重…468㎏

以下山上氏のコメントから抜粋
「春先までの様子では、優れたスピードを持つ雰囲気はまるでありませんでした。」
「夏を迎え、ぐんぐん馬が良くなってくる様子が伺えます。」

馬体についてのコメントが少ないのであんまり参考になりません(泣)
ただ馬格があまりないことと、素人の私が見ても分かるレベルの寝繋ぎであることからからしてあまりダート寄りではないであろうと思います。

ビッグアーサー産駒の賞金上位馬の馬体重ですが、トウシンマカオが446㎏、クリノマジンが444㎏、ブーケファロスは426㎏でデビューを迎えています。
大きいのがダメと言うことでもないですが、小柄であることはマイナス要因にならないと考えていいんじゃないかと。

現状は平均よりやや上の評価に留めますが、今後出てくるコメント次第で評価は上下するでしょう。
「柔らかい」「手先が軽い」などのワードが出てくればプラス修正です。

馬体相関評価[C+]


【補正要素】
連産リズム補正…補正なし
セックスバイアス補正…-1

補正評価[-1]


【総合評価】
父血統評価[C+]
母血統評価[B+]
牧場評価[D+]
厩舎評価[C+]
馬体相関評価[C+]
補正[-1]

総合評価[C+]


勝ち上がれるかどうかが重要なポイントですが、そこさえクリアすれば2~3勝出来ると思います!
今後成長過程で硬さが出てこないか、出来れば様子見したい1頭です。


【コストパフォーマンス評価】
募集額…1000万
6歳末まで走った場合の必要経費…1000+60×5=4600万
総合評価に相応する予想生涯獲得賞金(手当や奨励金も含む)…[C+]8000万(3勝クラス級)
未勝利の場合の最大損失額(3歳9月抹消時)…1949万

総合評価に相応する勝ち上がり率期待値…[C+]45%(母補正+5%)

一口当たりの損益期待値…¥9,161

出資オススメ度[C]

現時点では特段オススメ!と言う訳ではありませんが、好みの馬体だったりした場合は出資もアリなのではないでしょうか?
羽月厩舎ですし、とにかく数使ってほしい!と言う人には結構オススメかもしれません。


検証は以上となります!!
参考になるかどうかはわかりませんが、面白かった!というかたはいいねや拡散して下さるとうれしいです!!

長文読んでいただきありがとうございました!!

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