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中国のこの20年を現地で目の当たりにしてVol. 3〜情熱中国大陸〜

今の中国の経済を牽引している、その子供の世代が今の大学生だ。

大学といえば、中国の大学も、この20年で物凄い勢いで増え、地域性などによる入試の不公平や学力の差は随分あるものの、今や何と、2,870校もの大学が中国全土には存在する。(2018年3月30日中国教育部発表)。ちなみに「ニセ大学」と呼ばれる正規ではない大学は、400校弱存在するそうだ。

大卒の社会的価値は、昔ほど高くはなくなってきているが、大学側も十分に予算を使い、学問の研究も、中国国内にとどまらず世界中から一流の講師陣を招き行っている。また学術的研究だけでなく、政府のバックアップのもと、有力IT企業などとのタイアッププロジェクトも積極的に行っている。

「将来何かの役に立つように」、などという悠長な絵に描いた餅意識ではなく、「今すぐ金を儲けられるように」実際のビジネスを学生が出来る環境を整えている。学生も「自分自身の金儲け」として、海外留学者からの生の生きた情報や、幅広いネット情報源をバックボーンに、日々急激に多様化している社会の価値観も、「自分のチャンスを探す鋭い目」で必死で見つめ、それぞれが自分のために吸収している。因みに日本の大学の総数は、中国の2,870校に対して764校である。(日本の大学教育に関してはここでは言及しない)

このように、中国では大学を先頭に、先端技術教育が行われ、経済、軍事、宇宙、各産業の分野を、包括的かつ戦略的に世界的に優位に立てるよう、コントロールしようと試みている。矛盾や予算の無駄使いも物ともせず、中国のお家芸、「中止・変更・修正・ランニングチェンジ」を惜しげもなく恥ずかしげもなく、日本人の感覚から見ると、かなり強引に推し進めている。

大学に限らず、海外への「人の輸出」も、世界制覇の布石として、中国は着着と行っている。他国で、CHINAの「人、物、金、血」の交流を活発にし深め、経済を武器に、他国の人間の中に、中国の物と金と血と意識、そして生活習慣までをどんどん混ぜていくわけだ。

中国は「一帯一路」というスローガンを掲げているが、「人類皆兄弟作戦」と私は呼んでいる。それはなりふり構わず確実に実行され、後先の事は取り敢えず置いておいて、メディアも内外に対してフル活用し、中国にとって「今やるべき事」を推し進めている。

また各段階教育機関で、特に小学校の初等基礎教育部分では、徹底した「道徳教育」と「愛国教育」がなされており、明らかな国家のベース固めと底上げがなされている。

このように「国家100年の計」をはっきりとした強い意志を持って、かつ着々と行っている国は、世界で現在中国をおいて他には見当たらないのではないだろうか。そしてCHINA STANDARD、中華思想を本気で世界の中心に据える気で動いている。

今や台湾や香港の学生さえ、中国大陸の大学への入学を目指す者も多い。学問の専門性だけでなく、中国大陸だけでなく、世界で活躍する華僑の人脈、ネットワークが、将来有利に働くと考える為だ。

その昔、孫文、蒋介石、周恩来、といった中華の偉人達が、なぜ日本に留学に来たのか?謙虚に、この国から良いものを学ぼう、と言う姿勢があったからではなかったか?日清戦争(1894年)日露戦争(1904年)に勝利した当時の日本は、強く確実に発展しており、強い意志に裏打ちされた技術力、人間力、学ぶに値する魅力が十分にあったということだ。

その日本も太平洋戦争(1945年)に敗戦したが、その後は敵国アメリカに、恥を捨て、謙虚に懸命に学び、世界を驚かせる奇跡の経済成長を果たしたのは、万人に知られる事である。しかし今は残念ながら、こうしたパワーは、今の日本にはないように見える。

それを随分前から憂いている人物の一人に、「ミスターデモクラシー」の愛称で親しまれている台湾の元総統、「李登輝氏」がいる。日本人よりも日本人らしい偉人として名高い。日本の良さと奥深さを知り、誰よりも愛し、そして尊敬して生きる彼の姿勢には、純粋に感動させられる。今の日本人に対しての苦言や警告を、優しくまた厳しくはっきり書き、そして話す李登輝氏を見ていると、身が引き締まる思いがする。彼のファンは日本でも多く、著書もたくさん出版されているので、興味があれば是非読んでみてほしい。こういうところに大きなヒントがあるように思えてならない。

今こそ、私達日本人は、明治維新、そして戦後の時代を切り拓き、創り直した先代達の事を、もう一度学び直し、また今の中国の優れた部分を、一喜一憂し、慌てふためいたり、バカにしたりするのではなく、しっかり地に足をつけ、目的意識を持って、今日本にとって必要な事を、着実に学び取って、日本なりに改善向上させて行けばいいと思う。そしてまたそれよりも圧倒的に上を行くものを作り、世界を何度でも驚かしてやればいいのだ。日本のお家芸を何度だってやればいいのである。遣唐使の時代のように、生きて帰れるかもわからない命がけの航海などしなくとも、今では、誰でも飛行機で安全に数時間で行ける世の中になっている。しかも「お隣さん」である。

1972年私が3歳の時に、田中角栄、周恩来両国首相が署名し「日中国交正常化」が成立した。47年間の歳月が流れた今、政治的問題は常にあっても、これからも嫌なことがあっても、お隣さんをやめる訳にはいかない。人、物、金、両国の交流も世界的に見ても決して小さな物ではない。お互い大事な事は面と向かってはっきり主張し、許せない時には毅然とした態度を取り、お互い尊重しあい高めあっていけばそれで良いのではないだろうか。

日本は現状の技術や状況に決して驕らず満足せず、2019年の「今」日本に足りない部分、弱い部分を冷静にしっかり見つめ、それが中国にあるなら、そこから謙虚に見習い、私達の国の形をしっかりイメージし、再度力強く「創り直していく」時ではないだろうか?
20年間中国の発展を現地で見てき、これが今一番強く感じていている私の本音である。

つづく

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