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さようなら技能実習制度。技能実習って何が問題なんだっけ。-家族を呼べない-

 技能実習生は家族を招くことができません。しかし「技能実習をきっかけに日本に移住をして、家族を招き、日本で定住をしたい……」そう考えている技能実習生は少なくありません。


 どの時代でも、国境を超えた人生設計やキャリア形成はあるものです。日本人でも、留学をきっかけに海外に移住をし、そのまま現地で就職、そのまま定住……という人は聞きますよね。人の移動が自由になれば当然起きることです。その良い悪いという評価はさておき。


 しかし、技能実習生(以下本人)は母国から家族を呼ぶことはできません。正確に言えば、本人の配偶者・子供・両親等を、本人の扶養で日本国内で養う、『家族滞在』という在留資格で招くことができません。「生活が安定したから子供を呼んで日本国内で育てよう」ということができないのですね。


 余談ですが、本人も技能実習生で配偶者も技能実習生の夫婦が日本に在留することは可能です。ただ、二人が同じ家で生活することは現実的には少ないでしょう。また、子供を母国から招くことはできませんし、日本国内で妊娠・出産をしても、子供は母国に帰国しなければなりません。


 私が出会った実習生の話をします。その実習生はベトナム人女性で、シングルマザーです。夫とは別れ、子供を育てているにも関わらず、単身日本へ出稼ぎに来ているのです。私たち日本人の価値観からすると信じられませんが、ベトナムではそれほど珍しいことではありません。というのも、ベトナムでは「子育ては親の両親がするもの(つまり孫育てですね)」という考えが根強く受け入れられているようです。びっくりですね。それでも、彼女は将来は、日本に子供を招きたいと言っていました。

 では、技能実習生はいつまでも家族を呼ぶことができないのでしょうか。いえ、違います。家族を呼ぶことができるルートが用意されています。それが『特定技能2号』です。『特定技能2号』という在留資格を得ることで、家族を呼ぶことが出来ます。今まで家族を呼べなかったのに、家族を呼ぶことができるようになるんです。特権的ですね。そのような特権を得るためには厳しい条件があります。その条件が問題なのです。2023年現在での『特定技能2号』の人数は……12人!日本全国全体でこの数字です。東京大学より狭き門ですね。


 このような制度を設計した日本政府には明確に意図があります。それは「出稼ぎの労働力は欲しいが、定住はしないで欲しいから、厳しい条件付きで認める」というものです。働いて税金・社会保障費を収める人は欲しいが、日本に移住する人は国が条件を厳しく設定する。ということですね。入国管理行政は政府の裁量が広いですから、このような恣意的な運用も合法です。余談ですが、マクリーン事件の最高裁判決が根拠となっております。やはり、日本政府のスタンスは「外国人は一定期間だけ働いてその後は母国に帰ってくれませんか」というものです。


 この政府の考えは、日本国民の考えとも一致するものだと私は感じています。日本国民は必ずしも外国人に対して寛容ではないでしょう。日本の空気を読む文化は同質性を前提とするものです。表に出てこない本心を汲み取れ、というのは外国人に対して酷でしょう。建前では「日本に来る外国人はすごい」と口で言っても、心のなかには超えられない異文化の壁があるでしょう。ネット上の匿名の意見ではヘイトスピーチが当たり前に見られます。「働いて欲しいが、隣近所には来て欲しくない」というのが本音でしょう。それは、政府の考えと一致しています。政府は微妙な世論を正確に汲み取っていると感じます。


 そして終わりに、技能実習制度を廃止してできる、育成就労制度でも家族を呼ぶことができません。廃止をしても変わりません。

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