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さいたま市、ハイブリット授業とはなんだったのか

 9月13日、さいたま市議会文教委員会で市教育委員会(以下、市教委)から「2学期開始にあたっての学校の教育活動について」の報告が行われ、党市議団からは私、たけこし連と金子あきよ議員(南区)が出席し、質疑を行いました。今回は、主要な論点となった「ハイブリット授業」について報告します。

※ハイブリット授業とは
 緊急事態宣言中の措置として、学校における通常授業とオンライン授業を併せた授業形式のこと。市立小中学校の児童生徒が対面かオンラインを選択する。オンラインの選択率は小学生が21%、中学生が12%。主な目的は感染防止対策と学校の教育活動を継続すること。

■はじめに
 報告の前に、私の立ち位置をはっきりさせておきたいと思います。私はオンライン授業の実施に賛成の立場です。(意外と言われます)
 この2年間、子どもたちは通常とは異なる環境のもとで学校生活を送ってきました。市教委の言う「教育活動の継続」には、もはやオンライン授業は必要不可欠だと言わざる得ません。
 しかし、オンライン推進ならば全てに賛成かと問われれば、それは違います。オンライン授業を実施する際にクリアすべきこともあり、その課題を残したままの拙速な実施には「待った!」をかけなければならないとも考えています。私の立場を表明したところで報告に入ります。

主要な論点とQ&A

■通信障害について
 マスコミでも広く報道された、オンライン授業の「通信障害」について。市教委は対策をとり障害は改善されたと保護者へ通知しましたが、通知後の状況を質疑しました。

○たけこし 通信障害で登校に切り替えた児童数と通信障害が発生した学校数は
○市教委  どちらも把握していない
○たけこし サーバーを強化したと保護者に通知をしていたが、具体的な数字(何人同時接続に耐えられるようになったなど)はあるのか
○市教委  数字的なものは把握していないが、9月10日現在で9割の学校でオンライン授業ができるようになった
○たけこし のこり1割の学校の状況は
○市教委  一部のクラスがつながらなかったり、映像が途切れるといった状況

 市教委は通信障害の全容を全く把握していないことが明らかになりました。これでは教訓を活かせません。さらにハイブリット授業開始から2週間たっても1割の学校で通信障害が続いていることは問題です。

■出席停止
 オンライン授業に参加した場合は「出席停止」とする扱いについて、「出席にしている自治体もある。なぜできないのか」という問いに、市教委はあくまで「文科省の規定に従った」とし、子どもたちに不利益が出ないことを承知して欲しいと説明しました。
 日本共産党は文科省に対して、緊急要望として「オンライン授業を出席とすること」を求めています。

■Teams(チームス)の課題
 オンライン授業で使用されているチームスの機能について教員から情報が寄せられました。その教員はチームスのチャット機能や録画機能などがいじめやプライバシー侵害につながるのではという危惧と、現場の対策が当事者への「呼びかけ」に留まっていることに強い危機感を持っているとのことでした。

○たけこし チームスの機能で子ども同士のチャットが教員の見えないところでできる機能、画面から特定の生徒を外す機能、録画機能はあるのか
○市教委  3つの機能は全てある
○たけこし それらの機能はいじめやプライバシーに関わる事例につながるのではないかと危惧をしている。対策はあるのか
○市教委  今後、Teamsの機能についてさらに研究を進める

 前出教員の危惧が的中する形で東京都町田市で1人1台タブレットのチャット機能を利用したいじめが発生し、小6の女児が自殺をする事例が発生してしまいました。(質疑同日に記者会見)
市教委はチームスのシステム上の課題は「今後、研究する」との答弁に留まり、具体的な対策は示しませんでした。教員の不安に答える対策が必要です。オンライン授業を優先するあまり、見通せる課題が置き去りになってはいないでしょうか。

■感染対策としてのハイブリット授業
 今回のハイブリット授業の目的の一つに「感染防止策」があります。質疑では9月10日時点でオンラインで授業を受けている生徒が3%にとどまる学校がある一方で、46%がオンラインを選んだ学校もあることがわかりました。

○たけこし ハイブリット授業の目的は教室の人数を減らし、密をさける感染対策でもあった。しかし、学校やクラスによってオンラインの選択率はバラバラだった。この差についての認識は
○市教委  学校、クラスでバラバラだったので評価は難しい。とにかく子どもが学校で学べる機会を保証するためにスタートした
○金子議員 指摘があったように、教室の密が減らない状況だった。感染対策は夏休み前とどう変わったのか、強化した点は   
○市教委  昨年度から実施している対策(パーテーションや黙食など)を、改めて周知徹底した

 クラスによっては密を解消できなかったことへの評価は示されませんでした。感染対策として、ハイブリット授業が効果的だったかは疑問の余地が残ります。ちなみに埼玉県の所管している学校では1教室が20人以下になるよう、オンラインの活用や分散登校を行うことを求めています。
 また、金子議員が質疑した現場の感染対策は教員からの情報です。現場からは夏休み前の対策に何の上積みもなく、ハイブリット授業を実施したことに戸惑いの声があがっています。

■準備期間
 私たちが、最大の問題点と考えているのが「準備期間」です。ハイブリット授業の通知は始業式の2日前でした。この突然すぎる決定に現場も保護者も大混乱、学校の電話が鳴り止まない状況が続きました。

○たけこし 24日に保護者と教員にハイブリット授業を行うことを通知した。26日には学校が始まるので、準備期間はわずか2日。急すぎるのではないか
○市教委  準備期間については★本市はオンラインを実施できる土壌をつけてきた。研修なども進め先生のスキルも上がっている。なんとか頑張ればこの期間でもいけると判断した
○たけこし 2日の準備期間は短すぎる。これまでの市教委の取組を振り返ると10万人拍手の準備期間も2日だけだった。この時の報告で市教委は「(準備期間について)反省している」と答弁をしていたが、その反省は生かされているのか
○市教委  時間があればあるにこしたことはないが(★繰り返し)ご理解いただきたい。
○金子議員 学校現場からは「ハイブリット授業で作業が2倍になった」等の声が寄せられている。先生に「頑張っていただく」と答弁していたが、それが現場の実態を踏まえたものだったのか、甚だ疑問だ。現場の負担への認識は
○市教委  必死にその方向(オンライン授業)に向かっている先生方には、頭が下がる。各学校の取組に敬意を表したい
○金子議員 申し訳ないが、市教委の敬意だけでは学校の負担は軽減されない。具体的な支援はあるのか
○市教委  各学校の取組の共有やエバンジェリスト(ICTに詳しい教員)の研修会などで得た情報を共有する場を設定していくことで支援していく

 答弁では、準備期間が短かったことへの反省は示されませんでした。これだけでも大問題だと思いますが、加えて現場への負担についても「頑張ればいけると思った」「敬意を表したい」などと精神論全開で、問題の本質から逃げている答弁が続きました。
 この間、市教委はトップダウン式の施策(10万人拍手、スタディエッセンス、ハイブリット授業など)を次々と実施して、その都度、現場からは悲鳴の声が寄せられています。何度同じ過ちを繰り返すのか、さすがに看過できません。

■まとめ
 かつて、教育長は「GIGAスクール構想は走りながら考える」と発言されていました。走るのは構いませんが、見通せる課題があれば走る前に止まってクリアしなければならないと強く思います。見切り発車で不利益を被るのは市教委ではなく、子どもであり保護者であり現場の教員なのですから。引き続き、しっかりと議員の立場からチェックしていきたいと思います。

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