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【CoC】シナリオの書き方について

な、な、なんと~~~~~!

拙作「蠢く偶像、らぶ」がクトゥルフ神話公式さんが開催しているシナリオコンテスト2023にて奨励賞をいただきました~!選評にもバーチャルライバーについて触れていただけて、大好きなバーチャルライバーを公式の名に刻みたかった自分としてはとっても嬉しかったです。その他にもいっぱい褒めてもらって嬉しかったです。わーい。

というわけで本題です。今回コンテスト用のシナリオを執筆するにあたって、先人たちが公開してくださっている「シナリオの書き方」にめちゃくちゃお世話になったので、その恩返しも兼ねてつらつらと自分なりの創作論のようなものを書いていこうと思います。途中脱線したり駄文散文になるかと思いますが、この記事を見られる皆様方につきましては「こんな文章力の奴でも奨励賞とれるんだな」とぜひ勇気を持っていただきたく思います。

最低限の創作論

まず一つ念頭においていただきたいのは、自分がこれから書く創作論は「審査員を唸らせて、他の人と差をつける」ための創作論ではなく「好き勝手させてもらうために、審査で弾かれないようにする」ための創作論です。勝つためではなく、負けないための創作論であることを覚えておいてください。

というのも、自分はシナリオの構成や文章力ではなく「こやつめハハハ」枠で受賞したと自負しています。つまり、アイデアとノリと勢いで勝負してここまで押し切ったと思っているというわけですね。例えるならダンスコンテストでみんながスーツやドレス姿で社交ダンスしてる会場に、鉢巻きと半被姿でわははと乱入し、ソーラン節を踊りまくって変な奴いんじゃんって評価されたのかなと。礼儀作法部門では最下位でも、泥んこ少年部門では一位をとれたんだと思ってます。

ともあれコンテストで評価されるためには、最低限の礼節は要ります。ダンスのコンテストだから半被姿のソーラン節でも許されたのであって、半被姿で寿司を握り始めたら会場から摘み出されます。

なので、自分が教えられるのは、奇抜なアイデアを出しても摘み出されないための最低限の創作論であり、他のシナリオ構成や、文章力の優れた応募者の方々に対して、アイデアとノリと勢いでの勝負に持ち込む方法であり、ダンスコンテストにソーラン節で乱入する方法となります。

ちなみにノリと勢いについては、こちらからあまり教えられることはありません。一つだけあるとするならば、折角シナリオを遊ぶんですから、プレイヤーは勿論、キーパーが読んでて楽しい文章にしようと意識したくらいでしょうか。

あとは……例えばの話ですが、シナリオ内で自分で作ったバーチャルライバーのオリジナルアイドルソングを、「KPがメロディを作るといいよ!」って提案しつつ提出とかしたりすると良いと思います。あの、審査員の皆様、その節はいろいろすいませんでした。

というわけで早速、具体的な方法について書いていきます。

審査員の選評を読む

これにつきます。これは全てのシナリオに当てはまることなのですが、コンテストに出すのであればそのコンテストで求められているシナリオを出すことが大事だと、個人的には思ってます。

公式サイトにてシナリオコンテストの選評を公開してくださっているので審査員が褒めてるところと、惜しいと感じてるところを把握しましょう。

今回は恩返しの意味も込めて2022年のシナリオについて解説します。これを読んだ皆さんが凄いシナリオを書くようになってしまうかもしれませんが、コンテストのレベルなんてなんぼ高くても良いですからね。

非常に恐縮ですが、今回はシナリオコンテスト2022の全体的な選評について自分なりに思ったことを書かせていただこうかと思います。

まず、この記事を読んでいる皆さんは、実際にシナリオコンテスト2022の結果発表のページをご覧いただき、実際に選評に目を通していただければと思います。これらに目を通して自分が個人的に思ったことは、

・プレイして面白い
・文章がわかりやすい
・人目を惹くタイトルである
・舞台と歴史と神話生物がきちんと噛み合っている


この四つについて特に高く評価されており、自分はコンテスト用のシナリオを書くにあたって、ここら辺を特に気を付けて書くようにしました。他にも「原作小説のリスペクト」「手軽さ」「挑戦する意欲」なども上記の四つほど頻出するわけではありませんが、高く評価された項目。意識しても良いんじゃないかなとは思います。では一つ一つ解説していきます。

・プレイしていて面白い

非常に難しく、大事な部分です。公式シナリオと同人シナリオで、最も勝手が違う部分ではなかろうかと思います。

まず、二つの違いについて持論を述べようと思います。
同人シナリオで評価されることにおいて大事なのは「プレイしたい人に正確にシナリオを届ける」ことです。刑事のシナリオを遊びたい!という人には刑事としての正義を問われるようなシナリオが、犯罪者のシナリオで遊びたい!という人にはアウトローたちの自由さと破天荒さを味わえるようなシナリオが求められる傾向にあり、そのRPが存分にできると楽しかった!となります。用語の解説はしませんが、今風に言えば、boothにあるトレーラーを見て気になったり、友人にこのHO似合うよ!ってオススメされたHOを握ってちゃんと楽しめればよいシナリオというわけです。

逆に、興味のないシナリオは遊ぶ必要はありません。アウトローシナリオに興味のない人はアウトローシナリオを遊ばないでしょうし、刑事シナリオに興味のない人は刑事シナリオを遊ばないでしょう。

プレイヤー同士が争うPvPシナリオ、公式シナリオっぽいクラシックシナリオ、情緒に訴えかけるエモシなど、興味があれば遊べばいいし、興味がなければ別に遊ばなくていいわけです。これはプレイヤーによる自発的なゾーニング(住み分け)が行われている状態になります。誰だって自分が滅茶苦茶楽しめるシナリオをなるべく遊びたいでしょうからね。

それに対して公式シナリオは、実態はどうあれゾーニングが出来ません。公式で出す以上、シナリオの対象は「クトゥルフ神話TRPGを遊ぶすべての人」だからです。つまり公式で出す以上、老若男女問わず、現在クトゥルフをしている様々な年代の人をランダムに四人集めて、初めましての状態でも楽しめるようにする必要があります。

今風のプレイスタイルで言う、うちよそ、自陣継続など、気心の知れたメンバーで集まって、互いの思考が試されるようなシリアスなシナリオに行くことが、(自分の周りでは)主流の遊び方になっています。その手のシナリオは気心の知れた人達と遊んで、ハマると凄まじく楽しいのですが、そういったシナリオをコンテストに応募すると評価が下がりやすいのではないかなと個人的には思っています。初対面でも楽しい、気心の知れたメンバーで行っても楽しい、この二つを満たす必要があるということですね。

自分を例に出すと、若い世代になじみ深いテーマを選んだ場合は、必ず上の世代の方々が共感できる感情を主軸に添えます。また、今風のエモい感じのシナリオの作り方をした場合は、昔からプレイしている人が途中でニヤりと笑える要素を入れることにしています。

全ての人が楽しめるシナリオというのは存在しないでしょうが、一人でも多くの人に楽しんでもらうにはどうしたら良いかは、公式シナリオを書くうえでは意識しておいた方がいいと思います。社交ダンスの場でソーラン節を踊ってる奴が何言ってんだって話ではありますが、少しでも多くの人に楽しんでもらうために、ソーラン節をワルツ調にしたりしているわけです。

・文章がわかりやすい

ダンスコンテストでソーラン節が評価されるには、ソーラン節が槍の柄で殴る訓練ではなく、ダンスであることを理解してもらう必要があります。突飛な設定やアイデアであればあるほど、それについては事前に、キーパーに言葉を尽くしてきちんと説明しておく必要があります。

自分を例に出すならば、自分はバーチャルライバー(キャラクターを介してインターネットで動画配信を行なう人)を題材にしたのですが、「バーチャルライバー」や、それにまつわる各種用語について、バーチャルライバーについて何も知らない人でもセッションを行えるようにシナリオ内で詳しく説明したつもりです。そうしなかった場合、電波の届かない場所でセッションすることになったら、バーチャルライバーについて詳しい人しかこのシナリオを遊べなくなっちゃいますからね。これも誰が遊んでも楽しめるようにするために、自分がしている工夫の一つと言えます。

その割にはこの記事中でHOとかエモシとか一部にしか伝わらない用語を何の説明もなく使っていますが、それはこの記事自体が公式のものではなく、同人寄りものであり、ゾーニングが済んでいるからです。つまり、この記事を見ている人は間違いなくネット回線がつながっており、シナリオ執筆に対する意識が高い方です。そういった方は気になる用語があったら読んでいる途中か、読んだ後にでも調べてくれるだろうなーと思っています。あとはこの記事を読むのは自分の知り合いくらいのものでしょう。というわけで、気になる単語があったら各々調べてくださいね。(丸投げ)

文章力そのものについては教えることが何もないというか、自分は文章が分かりにくい人間です。詳しい人が素晴らしい記事を上げてくださっているので、それを参考にしてください。自分が文章を書くうえで、物凄く参考になった方の記事を最後にのせておきます。

・人目を惹くタイトルである

タイトルが秀逸だと、それだけ目に留まる回数が増えます。ここも公式と同人では違うところだと個人的に思っていて、同人シナリオでは割と「セッション後に意味が分かる」ものが多いのに対して、公式シナリオは「セッション前でも何となく意味が分かる」ものが多いです。

これは公式シナリオは、同人シナリオと違ってシナリオトレーラーのようなものが存在せず。タイトルそのものがいわば「内容に期待感を持たせる」「シナリオのトーンを伝える」トレーラー的な役割を持っているからだろうなと思います。少なくとも現状、コンテスト受賞作品はトレーラなどは用意されていませんから、そこに変化がなければこの傾向はそのまま続くと思います。ただ、最近公式も「井藤チアキと云ふ女」など、SNS上でタイトル画像でシナリオの雰囲気を伝える試みを行っており、変化の兆しは見せています。

・舞台と歴史と神話生物がきちんと噛み合っている

これに関して必須事項ではないと思っていますが、大幅な加点を狙える要素だと思っています。これを満たすと必然的に「他には無いシナリオになる」「探索する意味が出てくる」あたりの条件が満たされるのでこのあたりを意識すると、シナリオを作る助けとなってくれます。

「現代日本で犯罪者がネコと冒険するシナリオ」だと他の人とシナリオのネタが被る可能性がありますが、「山梨県のある伝承を舞台に、犯罪者がネコと冒険するシナリオ」にした瞬間、めちゃくちゃ被らなくなります。

「大正時代の銀座で、犯罪者がネコと冒険するシナリオ」「オーストラリアで、犯罪者がネコと冒険するシナリオ」「宇宙船の中で犯罪者がネコと冒険するシナリオ」全部色が違いますよね。

一般的に受けのよいアイデア程他の人も思いついているものです。そういうときは舞台設定で差をつけましょう。「舞台設定、歴史、神話生物」あたりに意識を向けることが、唯一無二のシナリオを作るうえで非常に強力な武器となりますので、参考にしてください。


以上が審査員の方々の選評を呼んだたけのこーたの個人的な感想となります。ここまで読んで「なるほど!」と思った方もいれば「何言ってんだこいつぅ!」と思った方もいると思います。選評を読んでどう感じるかは人によって違うでしょうし、その感じ方の違いがいろんなシナリオを生むきっかけになるんだと思います。なのでこの記事だけを鵜呑みにせず、是非自身で選評を読んで自分なりの感想を持ってくださると自分としては嬉しいです。


大賞と佳作を読む

大賞と佳作については目を通して内容を把握しました。ほんとはPLとして通った後、KPとして回す経験も積めたら、もう最高だったとは思いますが、機会に恵まれなかったもので……

これも審査員が求めるものを理解するのに非常に重要な要素になります。それらの共通点を洗い出してみてください。先ほどの選評もそれを洗い出す助けとなってくれるはずです。

地図は分かればいい

これは創作論とは違いますが、シナリオを書く立場としてとても勇気づけられたことなので書きます。

コンテストに出したシナリオに添付した、プレイヤー資料の地図についてなんですが、お世辞にもきれいなものとは言えませんでした。出来上がったのは公式で出される綺麗な地図とは程遠い、フリーハンドで書いた手作り感あふれるもので、これを出していいものかと心配になったりしたものです。

しかし結果として奨励賞をいただくことが出来ました。最低限伝わるように丁寧に書いてさえいれば、審査員の方々にきちんと目を通していただけるのだと思います。とはいえ、プレイヤー向け資料において一番大事なのは伝わりやすいことなので、公式に準拠した地図だったり、美麗だったりする地図を用意することは、そのままプレイヤーの伝わりやすさに直結するので綺麗に越したことはないのだと思います。

持論もろもろ

時代について

前置きします。時代や舞台についてはシナリオコンテスト側としてはかなり色んな舞台を出して欲しいんだろうなと思っていて、自分としてもTRPGという遊びを考えた時に「どこの時代の、何者にもなれる」という要素はとても大切にしたいものでもあります。色んな時代のシナリオ読みたいし、あまり言及するのはよくないのかな?とも思うんですけど、自分の創作論ということでお目溢し下さい。

一つ言えるのは、2023年が舞台のシナリオは、2023年に書くのがいちばん解像度が高くなるだろうということです。もちろん後になって分かることもあるかとは思うんですがそれは後からまた書けば良いことですから。コロナ禍によって特に顕著ですが、同じ現代日本でも2023年と2022年では全く違います。今は特に変化の早い時代だと思いますので、この辺は意識しておくと良いかと思います。2024年には探索にAIを使うのが当たり前になっててもおかしくないですからね。

それに、クトゥルフ神話TRPGが100年続いたとしたら、当時の空気感で書かれた当時のシナリオはとても貴重な資料としても残ると思うんですよね。

そんなことを言いつつ。選評を読むに今回大賞を取ったのは、大正が舞台のシナリオのようですから、やはり好きな時代を舞台に書けばよいのだと思います。何より大正シナリオの縁起のよさが半端じゃないです。大賞だけに。なんつって。

というか、こんな記事を読んでる場合じゃない

ここまで散文、駄文に付き合っていただきありがとうございました。
そして、ここまで読んだあなたには、真っ先に読むべき記事があります。

シナリオコンテスト2022にて大賞を受賞された因幡さんの記事です。作者本人が大賞作品についてひとつひとつ舞台裏なども交えて丁寧に解説しておられます。自分はここをめちゃくちゃ参考にしました。大事なことがすべて書かれていますので、シナリオを書く人は是非ご覧になってください。以上ダイレクトマーケティングでした。

終わり

そんなこんなで拙い文章ではありますが、ここまでご覧いただきありがとうございました。コンテストの感想としては、めちゃくちゃ楽しかったです!書くのが楽しいシナリオでこういった賞を頂けるというのはとてもうれしいものですね。この場を借りてアーカム・メンバーズの皆様に厚くお礼申しあげておきます。このような素敵なコンテストを開いてくださり誠にありがとうございました。次は頂いた言葉を無駄にせぬよう、この勢いのまま、より完璧にして出しますので応援よろしくお願いします。次は”惜しい”なんて思わせませんからね。同じくコンテストに応募する人は、拳……ではなくシナリオで語り合いましょう。

これは宣伝ですが、ゲムマ2024春にてTRPGのシナリオを出しますので興味のある方は是非いらしてくださいね。システムはSW2.5です。クトゥルフじゃないんかーい。ソドワ出身なので初参加はソドワにしたくって。

というか、いまめっちゃ原稿修羅場中なんですけど、何こんな長文書いてるんでしょうね……この7000字弱あったらだいぶ時間に余裕あったんじゃ……?でもこの興奮が冷めやらぬうちに書きたかったからしゃーないです。また機会があれば、「蠢く偶像、らぶ」のネタバレしながら、ここはこういう意図があったんだよ~的なより実践的で具体的な解説記事もかければよいですね。

それでは~ノシ、じゃなく今回はこれで〆ようと思います。

ほなほなー?ばいラブ~!


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