セイレーンの歌声が染み込んだ海水から作られた塩。
　それを使って漬けられた桜花漬けがある。その名前がセイレーンの桜花漬けという。
　これを桜湯に使うと、まだ少し塩の中に残っている歌声が聞こえてくるらしい。
　また、この桜湯を意中の人物に飲ませると、その相手と両想いになれるという噂が、かつて広まった。
　実際のところ、そのような効果は期待できないらしく、セイレーンの桜花漬けのブームはいつの間にか収束していった。
　けれど、現在もその名残は残っている。恋の願掛けとして、それが成就するように、と、セイレーンの桜花漬けを使った桜湯を飲む人が一定数いるらしい。
　ちなみにセイレーンの住んでいる地域によって、作られる塩の名前も変化し、その海域に生息する生物や環境によって、味わいや聞こえてくる歌声も異なるのだとか。