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こんにちは。堀内猛志です。
前回のnoteでは『「趣味の好き」と「仕事の好き」の違いを説明する「For」と「To」』という内容について書きました。

これまで、「タレント」と「好き」について書いてきました。改めて整理すると下記のようになります。

強み、タレント、好き、の整理

では、強みを活かして仕事をすれば誰でもうまくいく、、、、はずなんですが、実はそう簡単にいきません。あなたの「好き」の整理を邪魔する存在があるのです。それが『欲』です。

『欲』とは何か?

欲とは、何かを欲しいと思う心のことであり、それを満たすために何らかの行動・手段を取りたいと思わせ、それが満たされたときには快を感じる感覚のことです。逆に、欲求が上手く満たされずに過剰な欲求不満状態(ストレス)となった場合には、神経症や犯罪等の問題行動を引き起こしやすい状態となります。

この欲が曲者です。環境や自分の置かれている状況によって欲は変化するのですが、欲の力によって自身の価値観、感情、思考を正常に働かせるのを邪魔するのです。

欲による攻撃

『好き』と『欲しい』の違いとは何か?

欲が邪魔をするはなぜでしょうか?
皆さんは普段「好き」と「欲しい」を区別していますか?たいていの場合、好きなものを欲しいと思うし、欲しいと思うものは好きなのだろうと、なんとなくそう考えてしまうのではないでしょうか。ですが、それら2つは同義語ではありませんし、実は脳内システムとしては区別されています。

脳のメカニズムで説明するとややこしいので事例で説明します。
泣きわめいて駄々をこねる子どもを想像してください。その子はなんて言いながら駄々をこねていますか?そうなんです。「これが欲しい」と泣いてわめく子どもはいても、「これが好き」と泣いてわめく子どもはいなんですよね。つまり、「好き」よりも「欲しい」の方が強力ってことなんです。

「欲しい」というのは、 自分のものにしたい、手に入れたいということであり、少し乱暴で自己中心的な想いです。対して、「好き」というのは、心が惹かれる、気に入る、ということであり、対象物に対するリスペクトがある愛情のこもった想いです。

つまり、『花が好きな人は花に水をあげ、花が欲しい人は花を摘み取る』というのが2つの違いの分かりやすい説明になると思います。

『欲しい』を満たしてからじゃないと『好き』に向かえない

「好き」が「欲しい」に勝てないのであれば、先に「欲しい」を満たす必要があります。だからこそ「欲」というモノをきちんと理解する必要があります。欲といえば、マズローの欲求5段階説が有名ですね。

マズローの欲求5段階説(引用:https://www.jimpei.net/entry/maslow)

この構造は欲を本当にうまく説明しているモデルです。低次の欲求を満たさないと、それより高次の欲求は起こりえないのです。具体的に言うと、お腹が減って今にも死にそうな人が目の前の雑多なおにぎりを目にして『私はインスタで映えるモノじゃないと食べない、、、』と言って飢え死にすることはあり得ないということです。承認欲求が生理的欲求に勝つことはないわけですね。

『Z世代は、お金が目的で働くのではなく貢献を目的で働く』なんてことをメディアでも聞くことがあると思います。これは世代だけの問題ではなく、正確には、世代変化による欲の満足度合いの問題です。令和の日本において、大学に通い、スマホを持っていることは特別なことではありません。つまり、食うに困る経験や、死にそうな経験や、ネットの中でも繋がりを作ることができない、なんて人は滅多にいないのです。

生まれてから今まで満たしていることが普通なのですから、就活するにあたって急にお金のために働くなんてことを考えるわけがないんですよね。また、ネットやSNSのおかげで一般人でも注目され、発言力を持つこともできるようになりました。これによって承認欲求まですでに満たしている20歳前後の人は世の中にゴロゴロいます。だから、新卒のタイミングで『貢献欲求』や『自己実現欲求』が第一に来る人が多くなるんです。

30代以上の人は違います。頑張ってお金を稼ぎ(生理的欲求)、マイホームを買い生命保険に入り(安全の欲求)、花形事業部へ移動し素敵な家族を持ち(所属と愛の欲求)、周りが羨まむ役職を手に入れ(承認欲求)、そこまでかけてようやく自己実現欲求を口にすることが許される環境でした。だからいきなり『貢献欲求』や『自己実現欲求』を口にする若い世代に違和感を持つんですよね。「石の上にも3年」を口にしたい世代と、そうじゃない世代の違いがよくわかると思います。

少し世代間ギャップに話題を振りすぎてしまいましたが、ここで伝えたいのは、自分の中の「欲しい」を満たしてからじゃないと「好き」に全力で迎えないということです。平均的には承認欲求まで満たされている人が増えているとはいえ、個別具体では、年収が自分の理想に届いていない人だっているでしょう。そういう人は生活水準を合わせることで報酬と生活のバランスを担保しているだけで、本当は「お金が欲しい」という欲求を持っているのです。

それなのに、周りには「好きに向かう人が増えている」ために、自分もそうしなきゃいけないのではないか、という無意識的な脅迫概念にさいなまされるのです。このように「欲しい」気持ちと「好き」の気持ちを整理できずに自分のキャリアを考えるということは、選択指標が多く思考を複雑にさせる状態にあるということです。つまり、決断難易度が上がるのです。これがキャリアで悩む人が決断をできずに永遠に悩んでいる理由です。

『欲しい』と『好き』の境界線にある『承認欲求』

上記のマズローの欲求5段階説の図のとおり、自己実現欲求は高次の成長欲求とされています。自己実現欲求は欲求とついていますが「好き」に向かうことで自己が満たされるため、「欲しい」と「好き」がほぼイコールになっている状態です。

つまり、低次の欠乏欲求を満たすことが、自分の「好き」に全力で向かえる必要条件になります。ただし、そこにたどり着くには大きな壁があります。それが『承認欲求』です。

『承認欲求』という大きな壁

承認欲求とは「他人から認められたい」「自分を価値ある存在として認めたい」という欲求のことで、「尊敬・自尊の欲求」とも呼ばれています。

承認欲求には2つのレベルが存在します。

他者承認:他者からの尊敬や評価を必要とするもので低いレベル
自己承認:自己肯定感、自己効力感、自尊心を必要とするもので高いレベル

『欲しい』と『好き』の境界線は、まさに『他者承認』と『自己承認』の間にあるのです。自分だけのタレントについて書いたnoteでも伝えましたが、あなたが持つタレントは、確率的には世界で1つしかないモノです。特に悩んでいる人のほとんどは、これまで努力をしてきたので、自己肯定感、自己効力感、自尊心を持っていてもおかしくないのです。それなのに自己承認ができていないのはなぜでしょうか。これも以前のnoteで書いた多様性の弊害が原因です。せっかく努力して積み上げた自分のスキル、経験、というキャリアを「素敵の多様化」「SNSによる他人との比較」によって自分の中で勝手に自分をちっぽけなものにし、他人を羨んでしまうのです。

「それは自分のことだ!」と思った人はまだいい方です。自分のことを客観的にメタ認知できています。問題は、自分が他者承認が欲しい状態なのか、自己承認が必要な状態なのかがわからない人です。この2つが自分の中で区別がつかない人は、自分の中の「欲しい」と「好き」が区別できていない状態と言っていいでしょう。前述しましたが、ここを整理できていないと選択指標が多くて決断難易度が上がり、永遠に悩み続けます。

自分はどちら?他者承認が必要?自己承認が必要?

まず、自身が他者承認が欲しい状態なのか、自己承認が必要な状態なのかを理解しましょう。理解する方法は簡単です。自分のキャリアの悩みを大っぴらに他人に相談したり、SNSに自身の悩みを実名で正直に投稿できるなら他者承認欲求は満たされていると思っていいでしょう(当然、コトの機密性が高いから言えないというのは別の話です)。逆に、友人には打ち明けられず、キャリアコンサルタントのような第三者のプロにしか相談できないと思っている人は他者承認が欲しい状態です。

この差は、「欲しい」と「好き」の感覚の差から来るものです。「欲しい」という感覚は「好き」よりも自分本意で、ときに暴走しがちなものだからです。自分でも自分本位の感覚であることが無意識的にわかっているので、他者におおっぴらに言えないのです。

また、「好き」を追求するのは前向きな感覚であり、「考える」ことはしても「悩む」ことはありません。「考える」と「悩む」の差は下記の通りです。

考える:正解を導き出す、もしくは正解に近づくために頭を使うこと
悩む:正解のないことに頭を使うこと

課題を自分で解決できるものであれば、人は考えます。自分で自分をコントロールできるからです。逆に課題を自分で解決できないモノであれば、人は悩みます。自分で他人をコントロールできないからです。他者承認は他者からの承認を欲しいと思うものなので悩むのです。このように、自分は考えているのか、悩んでいるのか、ということを理解できれば、自分の状態を判断することができます。

承認欲求を満たしてwell-goingな状態に向かうには?

私が提唱しているキャリアクラフティングは、高次の承認欲求である自己承認を高めることで、他者からの目を気にすることなく、自分を唯一無二の存在であると認め、自分の人生をより高めていくというwell-goingの思想からきています。

▼キャリアクラフティングの3要素
■スキルクラフティング

本業だけでは獲得できないスキルを、様々な場所で学び、『自分はたぶん何でもできる』という自己肯定感を醸成することです。
■経験クラフティング
学び、獲得したスキルを保持するだけに留まらず、発揮し、アウトカムに繋げることで、『自分はやはり何でもできる』という自己効力感を醸成することです。発揮する場面は、本業だけには限らず、複業、ボランティア、プロボノなど、様々な場面があります。
■コミュニティクラフティング
本業と家庭以外の繋がりを増やし、自分にとって心地よく、刺激を与えあえる関係者を増やすことで、『自分は色んな人から必要とされている』という自尊心を醸成することです。

キャリアクラフティングを行うことで、自己承認欲求が満たされていきます。そのためには、上記3つの「スキル」「経験」「コミュニティ」をクラフトしていくことが必要になるのですが、この詳細は別のnoteで説明していきたいと思います。また、急に出してしまった「well-going」という状態についても別途説明します。

自己承認欲求よりも前の状態である他者承認欲求を満たす必要がある方、または、さらに低次の欲求を満たすには、正直、現状を改善していくしかありません。下手に「好き」を意識して判断の複雑性を高めてしまうよりも、目の前の課題のクリアに臨む方がシンプルです。そこで、次回は、低次欲求を満たし、高次欲求に向かうための方法について説明します。


自分の好きを見つけるのが難しいという人、自分の好きの活かし方を知りたい人は下記よりご連絡ください。


自分のタレントを本業以外の場面で活かしたい、キャリアクラフティングを実践したいという人はこちらからご連絡ください。

それでは今日も素敵な一日を!

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