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★我楽多だらけの製哲書(17)★~トリチにまつわる私の誤解とウィトゲンシュタイン~

マクドナルドには「トリチ」というメニューがある。
先日、マクドナルドに行って「白ダブチ」というメニューを頼んだときに気づいた。ダブチは「ダブルチーズバーガー」の略で、トリチは「トリプルチーズバーガー」の略なんだと。

それまで私は勝手に、何となく響きから鶏肉とチーズのバーガーだと思っていた。確かにマクドナルドのメニューにはフィレオフィッシュもあるし、最近、唐揚げが盛り上がっているので、世の中の流れとして、鶏肉バーガーもあるんだなあと普通に受け入れていた。そうして、ファミチキみたいなものをバンズにはさんでいるイメージを持っていた。

思い込みとは恐ろしいものである。この思い込みが出来上がるのには、他にも原因がある。
「トリキ」という言葉である。トリキといえば、居酒屋の鳥貴族のことで、その響きの影響もあるように思える。他には「トリモモ」、鶏のモモ肉を表現する言葉も影響しているかもしれない。それから「トリムネ」、鶏のムネ肉もある。

この文章を書いていて、そういえばファミチキみたいなものをはさんだバーガーが、マクドナルドの商品として既にあったことを思い出した。

「チキチー」である。
もしこのチキチーに二枚重ねのメニューがあったら、「ダブチキチー」か。さらに三枚重ねならば、「トリチキチー」となるだろうか。もうこうなってしまうと、「ダブチ」やら「ダブチキチー」やら、「トリチ」やら「トリチキチー」やらと、訳が分からなくなってしまう。

しかしかつて「ダブルフィレオフィッシュ」というメニューはあった。調べてみると、「ダブルてりやきマックバーガー」もあったようだ。ならば「チキチー」のダブルが発売されても不思議ではないだろう。そしてダブルがあるなら、トリプルも。そのようになる可能性はゼロではない。

省略という表現方法には、わざわざ長い言葉を言わなくて済むというメリットがあるものの、言葉の発信者と受信者の間に、共通理解がないと伝わらない。

「『言語ゲーム』ということばは、ここでは、言語を話すということが、一つの活動ないし生活様式の一部であることをはっきりさせるのでなくてはならない。…言語において人間は一致するのだ。それは意見の一致ではなく、生活様式の一致なのである。…ある規則に従い、ある報告をなし、ある命令を与え、チェスを一勝負するのは、慣習(慣用、制度)なのである。」
これはオーストリアの哲学者で、特に言語哲学や分析哲学の分野において活躍したルートヴィヒ・ヨーゼフ・ヨーハン・ウィトゲンシュタイン(ヴィトゲンシュタイン)の言葉である。ウィトゲンシュタインによれば、言語はその発せられる音、記される文字それ自体に、意味が内在し、それによってメッセージが相手に伝わるものではなく、生活様式の一致と表現されるように、言葉の発信者と受信者の間に、共通の理解が存在することによって初めて意味が明らかになり、その結果伝わるものなのである。それはチェスなどのようなゲームと同様で、慣習(慣用・制度)とも表現できる一定のルールに基づいて成立するものであるため、彼はそのような言語のやりとりを「言語ゲーム」と名づけたのである。

言語による意思疎通が成り立つのは、お互いがその言語のルール(語彙や文法など)を理解しているからであり、日本語しか話せない人とスワヒリ語しか話せない人の間では、言語による意思疎通はできない。この点に関して、それぞれの言語ではなく、身振り手振りといったボディランゲージも一種の言語なので、それを用いれば何らかの意思疎通が可能であると考える人もいるだろう。しかし、その身振り手振りも、例えばピースサインや親指を立てるサインは国によって異なるメッセージを持っていることを考えると、これも人類共通の先天的なものとはいえず、地域性があるということは、やはり慣習(慣用・制度)のような一定のルールに基づいているのである。

省略した言葉についても、異なる言語同士ほどではないが、省略におけるルールを理解できていない人は、そこに込められているメッセージを正しく受け取ることができない。典型的なのは、ミュージシャンでタレントのDAIGOが用いるアルファベットの省略表現だろう。この省略表現は「DAI語」などと呼ばれるように、独特なルールに基づく表現である。例えば、MKSは「負ける気がしない」で、GGDDは「言語道断」、GIGSは「郷に入りては郷に従え」のようである。これはそのルールを理解している人でなければ、メッセージを正しく受け取ることはできない。

「トリチ」や「ダブチ」や「チキチー」も同様であろう。これだけを聞いて、マクドナルドのメニューであると判断できる人は、マクドナルドとの繋がりがあって、慣習(慣用・制度)のような一定のルールの中にいる人である。

こうしてマクドナルドのメニューについて考えていると、また食べたくなってしまった。
実際には存在しないし、略語で表そうとすると混乱を招きそうな「チキチー」の二枚重ねや三枚重ねであるが、せっかくなので自作してみることにした。

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「タブチキチー」と「トリチキチー」である。
自作のために、3つもチキチーを購入したので、今日の夕食は「チキチーチキチーチキチー」である。
ちなみに大阪の方に「チキチキチキン」という焼き鳥の居酒屋さんがあるらしい。

#哲学 #ウィトゲンシュタイン #マクドナルド #トリチ #チキチー  
#濃厚白ダブチ #省略語 #DAI語

(以下で、自作の「タブチキチー」と「トリチキチー」を紹介)

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