ロボットの植木やさん

4/6よりギャラリー庭時計にて『絵本「星のおじさま」原画展Ⅱ〜風展(futen)’21』開催です。様々な分野のアーティストが一つの絵本を完成させます。

「星のおじさま」シリーズ第二弾。今回はおじさまがプレゼントを買いに、旅にでるお話です。作家それぞれが自分の思い浮かべたお店をつくりました。私もひとつのお店を担当しています。
「宇宙に浮かぶ温室で、ロボットが営む植木やさん」という設定。
初めての絵本制作。すこしだけ奥行きをもたせるために小さな物語を用意しました。

”ある惑星に、植物博士がいた。その星は繁栄のために植物を全部枯らしてしまい、住人はみんな居なくなった。
「植物は人を幸せにしてくれるはず。人と植物が楽しく暮らせるようにすれば、また星は生き返るだろう」

名称未設定のアートワーク 2

博士は宇宙船を改造した温室ドームを飛ばし、そこで研究を始めた。
世話係としてちいさなロボットを作り、共に植物を育てながら研究を続けた。
ある日、ついに博士は作り上げた。育てる人が幸せになる植物の種を。
博士とロボットは飛び上がって喜んだ!

それから、たくさんのステキな植物が生まれた。
 ・音楽好きな人には素敵な音楽を鳴らす観葉植物が
 ・食いしん坊には、ニョキニョキお菓子が実る野菜が
 ・泣きそうなとき、満面の笑顔で明るくしてくれる花が
温室ドームは動物たちの幸せな住処にもなった。笑顔と植物の実りが輝いて、いい音楽と美味しい香りがあふれていた。

名称未設定のアートワーク 4

「みんなが植物を大事に育ててくれるようになれば、あの星も豊かだった時代にもどるはず。散らばっていった人たちに、植物を配ろう!」と準備をしているさ中、博士は病気になった。

ロボットは必死に看病をしたが、博士はもう元気にならなかった。
博士は最期にロボットにお願いした。「ここの植物を育て、訪れる人に苗を配っておくれ。」
ロボットは涙をこらえ、黙って頷いた。

そして、博士をお見送りしてから黙々とお店の準備をした。
訪れる人が良い人ならば苗をゆずろう。宇宙の星々が植物と、博士のような優しさにあふれるように…

-あれからどれだけの時間が経っただろうか。数多くのひとがロボットの苗を受け取った。
もらったお代は博士の故郷の復興にあてられ、今では緑の星になっている。

ドームの一番奥、おおきな木の下に、博士が眠っている。
立派に茂った木は、まるで子供たちを誇らしげに見守っているようだな、とロボットは思うのだった。
開店準備をしていると、カウンターに一角(いっかく)鳥が舞い降りた。「ねえねえ!お客さまだよ!」”

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