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第7回 立川こしら【華麗なる落語家ライフ】『かしめの大ピンチ』

 書籍『“まくら”で知る落語家の華麗なるITライフ』続編!書籍未発表テキストを竹書房落語Noteで連載! 修業ハラスメントのクレームが入ったら、即公開中止! 購読はお早めに!
2021年10月8日 お江戸日本橋亭
 
【猛毒(舌)注意】購読の前にご確認ください。
◆本テキストは立川こしらの落語口演のまくらをテキストにするにあたり、文章としての読みやすさを考慮して、全編にわたり新たに加筆修正いたしました。
◆本テキストに登場する実在する人物名・団体名については、一部を編集部の責任において修正しております。予めご了承ください。
◆本テキストの中で使用される言葉の中には、今日の人権擁護の見地に照らして不当・不適切と思われる語句や表現が用いられている箇所がございますが、差別を助長する意図をもって使用された表現ではないこと、また、古典落語の演者である立川こしらの世界観及び伝統芸能のオリジナル性を活写する上で、これらの言葉の使用は認めざるをえなかったことを鑑みて、一部を編集部の責任において改めるにとどめております。
 
 
【著者立川こしら】
立川こしら(たてかわ こしら)落語家。落語立川流真打。千葉県東金市出身。1975年11月14日生まれ。本名は若林大輔。1996年、立川志らくに弟子入り。落語を中心に様々なエンターテインメントを幅広く手掛ける、アナログからデジタルまで使いこなすクリエイター。
 
 
《まくらの前説》
○立川 かしめ……落語立川流に所属する落語家。愛知県立明和高等学校、早稲田大学教育学部理学科地球科学専修を卒業後、広告代理店に4年間勤務。
2015年、立川こしらに入門。こしらが、入門直後のこの弟子の高座名の命名権(期間1年)をヤフオク!に出品した。落語家の命名権売買は史上初。結果、アイドルグループの仮面女子が落札し、「立川仮面女子」を名乗ることになった。2016年10月、命名権が切れたことにより、こしら命名の「かしめ」に改名。改名初日の10月15日から1週間にわたり、都内3か所の街頭ビジョンにて改名を告知する映像が流れた。
2018年10月26日、横浜にぎわい座での「立川かしめ前座総決算二つ目イクアリテ」で、大師匠にあたる立川志らくから、「かしめが覚えて演じることが出来る落語50席のうち、音源のみで覚えたものを実際に他の噺家に稽古をつけてもらう」という条件付きでの二ツ目昇進内定をもらった。
2020年4月、二ツ目に昇進。4月15日に国立演芸場で予定されていた昇進披露興行は新型コロナウイルスの影響で延期され、ゲストに広瀬和生、春風亭一之輔、三遊亭兼好、三遊亭遊雀を招き、口上のみを同所から配信の形で行った。11月25日に渋谷区文化総合センター大和田さくらホールにて、延期になっていた二ツ目昇進披露興行を開催する。
2022年5月6日、師匠のこしらからツイッターにて千日後に真打昇進の内定を貰った事を報告。
2025年1月30日、真打昇進予定。
○桂 竹千代……落語芸術協会所属の落語家。千葉県立匝瑳高等学校を経て、明治大学文学部史学地理学科卒業。同大学院文学研究科古代日本文学専攻修士課程修了。大学時代は落語研究会に所属。同じく大学在学中の2006年にワタナベコメディスクールに入学。漫才コンビやピン芸人として活動するが、2010年に活動を休止。
2011年7月、歴史もの新作落語を得意とする桂竹丸に入門。同年10月より前座(竹のこ)。2015年9月、二つ目昇進、竹千代と改名。
2021年12月9日、こしらがプロデュースするご当地落語「赤倉温泉」で、現地滞在4日間で創り演じた新作落語『おさいど祭』が、『湯守の宿三之丞賞』を受賞。

2024年3月2日 内幸町ホール こしらの集いにて撮影


 
 弱小企業はダメですね。弱小企業とか、小さい団体、今、こしら一門は大ピンチです(爆笑)。どうすんだよ? もう、かしめが壊れてしまいました(笑)。いやぁ、驚いたね。大卒って、頭イイと思ったての……、バカなんだ、基本的にね(笑)、オレは商業高校しか出ていないのよ。なんかオレのほうが凄ぇ出来んじゃねぇかよぉと思って、ひとつ分かりました。幾ら頭が良くても、壊れちゃダメだよ。これ、凄く分かりました。もう、いっぱい、いっぱいになっちゃったんですよ。いっぱい、いっぱいだったのが、……もう、超面白かったですよね(笑)。名古屋、名古屋行ってね、大喜利の落語会が名古屋であったんですよ。
 もう、大盛況、まさか名古屋で、あんなにお客さんが入るとは思わないで、大盛況で幕を閉じた訳です。これっていうのは、助成金を使ってたんで、結構ね、皆で豪遊しようと思ったら出来た訳ですよ。まぁ、豪遊っても、別にあれですよ、……一番安くないホテルでも泊まれるぐらいのね、それぐらいの助成金の中で補えたんで、最高級とはいかないですけれども、普通の皆さんが泊まるぐらいのホテルに泊まっても、「皆、大丈夫ですよ」ぐらい。交通費も、深夜バスで来なくてイイですよ(笑)。二ツ目さん、新幹線に乗れますよみたいな、そんな感じ。……まぁ、ブラック師匠は未だ深夜バスですけれども(爆笑)、ヘッヘッヘッヘ。そんなことがね、あったりしますけれども、だから皆ね、新幹線で来てって言って、地方のちゃんとした落語会に呼ばれましたと同じぐらいの待遇で、皆、仕事が出来た訳なんですよ。
「良かった」と思って、会が終わるのが夜だったんで、帰ろうと思えば帰れるけど、「泊ってもイイですよ」って言ったら、次の日、落語会があるから、「じゃあ、泊ります」っていうのが何人か居た訳ですよ。その中で、ボクも次の日、落語会がありましたから……。あとは竹千代っていう人と、かしめ。この3人が名古屋泊ったんですよ。かしめに関しては、前日から泊っている……、意味が分かんねんだよ(笑)、あいつ。もう、泊っていいよ、別に。その範囲内で済むなら、「お前も好きにしてイイから」っつって、前日から泊まった訳ですね。
 で、落語会が終わって、部屋戻ってきて、で、各部屋をズームで繋いで打ち上げやろうってことになって、各部屋ですね、だからもう一つの部屋に集まらずにね、もう表に出す場合は、こういうのね、……特にオレは打ち上げが嫌いだから(笑)、酒飲んだりするのも。だから、「これでイイや」と思ってやって、で、もう、無事に終わりました。
 夜です、12時回って、明日ね、竹千代と、かしめに、「どうすんの?」って言ったら、竹千代は、「朝10時から落語会があります」……、朝10時に落語会(笑)? やっぱり、名古屋の人って、味噌を食っているから、頭がおかしくなってんじゃない(爆笑)。味噌をあんまり食べ過ぎないほうがイイですよ。変なモンが入ってますから(爆笑)。大豆を腐らせているんですよ、絶対に良くないものが入っているに決まってるじゃないですか。少量ならいいよ。食べ過ぎると頭おかしくなりますから(笑)、朝10時から落語会です。「ああ、そう……」、ぼくもね、竹千代のことも前から知ってたから、ちょっと竹千代を呼んでやりたいみたいのがあったら、「いいです。好きに演ってやってください」って言ってた。竹千代が演るとね、竹千代が演るについては、何か日本史をテーマに演るらしくて、生徒(役)が必要なんです、それって。落語家なのに1人で出来ねぇのよ(爆笑)! 情けないね。
 いや、だから、竹丸一門は何を教えてるんでしょうかね(爆笑)? 落語家なのに1人で高座に上がれないだって(笑)。とばっちりですね、これはね。そんなのがねぇあったりして、竹千代が、「せっかくだから、名古屋在住の人を呼ぶ」って言って、旭堂鱗林ってね、講談師が居るから、そこを声かけたら、「忙しいからダメ」って断られたので、次に名古屋出身がウチの弟子、ウチの弟子が名古屋出身だったんで、ウチの弟子に声かけたらしいのよ。あの、「かしめ、演る?」って、かしめのほうが下ですからね。竹千代のほうが上なんで、「演る?」と言ったら、「お願いします」って決まって、
「なんで、朝10時なの?」
 って、言ったら、かしめが夕方東京で仕事があるから、もう12時過ぎぐらいに名古屋を出ないと間に合わない。だから10時にしたんです(笑)。「ウチの弟子のせいか」と思って、竹千代からしてみたら、竹千代の下のかしめを使ってるけれども、そのちょっと上にオレが居る訳よ(笑)。だから、ここは下なんだけれども、オレの顔色を伺いつつ、これを使わなくちゃいけない。面倒な仕組みになっている訳。だから、こしら師匠の顔も立てて、かしめくん呼んであげましたみたいな。竹千代からすると、オレはプレッシャーだよね、「アンタの弟子、ここまでして使ってやってんだから(爆笑)」っていうことじゃない。オレはそうやって言って、今までやってきたから、そう考えてしまうけどね。
「おめぇの弟子を使ってやったんだからな! 分かってんだろうなぁ? 一之輔」(爆笑・拍手)
 みたいなね。
「面倒見てやったんじゃねぇか! オレがよぉー!」
 言うつもり満々で使っているから、竹千代もそうだったのかと思う訳ですよね。
 で、翌日よ、10時のねぇ、15分くらい前かなぁ……。携帯が鳴るのよ、オレはもう起きてて、作業をしていたから、スマホを見たら、かしめなのよ。「ホテルに忘れ物か何かをしたのかなぁ」と、同じホテルに泊まってるから、いいよね。だからもう別に持って行ってやるなりなんなり、届けてやったり……、あるいいは、切手だけ貼って郵便ポストに投函して(爆笑)、かしめに、「ポストに入れといたから」って、そんな罰ゲームでもいいかなぐらい思って、電話に出たんですよ。
「もしもし」
「師匠、すみません。今、起きました」(……爆笑)
 10時開演よ。10時開演で、15分前なのよ(笑)。「今、起きました」って、言うのよ。

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