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常にゲーム感覚!

 私は学生時代から社会人になっても尚、怒鳴られたり、罵声を浴びせられたりと、中には八つ当りとしか言い様のない事も、数えきれない程の経験をさせて頂いた。その相手には感謝している。
 何事もゲーム感覚としてとらえてしまう私は、この出来事をプラスに考えて、怒っている相手の懐(ふところ)に潜り込むと言う戦術を自然と身につけていた。この能力は思わぬ時に力を発揮する。
 
 さかのぼること、30年前、勤めていた洋菓子メーカーの工場責任者になった私は、ケーキをつくるよりも事務的な作業のほうがウェートを占めていたよな気がする。そして何故かクレーム処理までこなしていた。特にややこしい系を!
 ある日、事務所のおばちゃんから内線が入った。「クレームのお客様からです。」たったの一言、それだけ言って、内容もわからないまま電話に出るのが当たり前になっていた。初期対応ぐらいやって欲しかった。
 深呼吸して電話に出る。ガラの悪そうなオヤジが今日の対戦相手。

                          Fight(ファイト)!!!!
  「いつまで待たすんじゃボケ!」 なかなかの強敵のようだ。
 「すぐ、コンカイ」とおっしゃられたので、住所を聞いて、近くでよかったと安堵した。
 その当時はカーナビもなければ、スマホどころか携帯電話も珍しい時代。車の助手席にゼンリン地図を広げて、ややこしい場所で、道に迷いながら、ややこしい客のややこしい家に着いた。駐車場にはメルセデス!!
 一般の方ではないのか?
ピンポーンをならす!
    「上がらんかい!」とドスの効いた声で、ナメテハかかれない。
 姐さんらしき方に奥の部屋に案内して頂いた。部屋を見て驚愕した!
 真っ赤なじゅうたんに、壁に飾られた牡鹿の頭、虎の顔つき敷物も目に入った。 あと、本革のソファーに、ハッキリとはわからないがドーベルマンのひとまわり小さい犬が2匹、これは生きている。唸り声が気になる。
 クレーム内容は異物混入、糸屑らしきものが確かに発見できた。レシートもご提示されておられる。全面的にこちらが悪い。
 ご主人はご想像通り、パンチパーマにゴルフ焼けした丸顔で
チョビヒゲをはやし、赤いアロハシャツに金のネックレス、ブレスレット、そして金のロレックス、漫画そのものである。歳は50代だと思われる。
 「なんや、若いな、責任者違うんか?」「まぁエエわ、座れや!」
当然、ソファーではなく床に正座する。ソファーに座るよう促されるが、そこは従わない。もう一度促されるが従わない。次は従うつもりだったがなかった。やはり試されていたのだと思う。とにかく頭を下げた。返金と代替え品とお詫びの品をお渡しして、頭をあげると犬2匹が私の両脇に唸り声を発しながら座っている。
 ご主人が「ほんで、ドオスンネン!」とおっしゃったので、「どうしましょうか?」と答えると、「ケジメつけてもらおか!」こんなこと本物が一般人に言うわけがない、と思い。「勘弁してください、一般人の私が本物のケジメなんかつけれる訳ないじゃないですか。」が、同じく一般人のこのおやじにうけたらしく笑いながら解放してくれた。正座でしびれた足を引きずりながら、よろけた私をみて「まぁ座りいな。」と促されたので、頭を下げながらソファーに腰かけた。「コーヒー入れたろか!」のお誘いに丁重にお断りした。どうやら、懐に入ったようだ!❮WIN❯
 ゲーム感覚で挑むが故にできたこと。
 本心はやってられるかー! そろそろ最初の勤め先にピリオドをうつことを意識し始めたのが、この時期である。

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