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繊細な”マサシ”がお気に入り【あとがきにかえて】

今日完結した「僕が運命を嫌うわけ」のあとがき。


過去にエブリスタで募集しているミニコンテストにいくつか応募しており、それらを見返していて、わたしは10代の恋愛が書きやすいらしい、ということがわかった。似たり寄ったりのが増えてきてようやくそれを自覚した。

しかも、前に書いた小説の登場人物も今回と同じ「マサシ」であることに我ながらびっくりした(漢字は違うけど)。別に思い入れがあるわけじゃない。たぶん、自分のイメージする人間に近いのが、この”マサシ”という「音」なのだ。サラっとしていて、古風すぎず今すぎでもない。クラスで目立つタイプではないけれど、好感度はそこそこ、大人になったらちゃんとした人にモテそう。そういう男の子のイメージがマサシだった。


↓マサシが主役の別の小説


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これまた別に意識しているわけではないけれど、男の繊細な部分をちゃんと書きたいっぽい。昔、とあるコンテストで知り合った編集者に「syunさんはダメンズをちゃんと書けるのがいいですね」と言われたことがあった。


そんなつもりはなかったのだけれど、なるほどと思う部分もある。わたしは男兄弟がいる末っ子長女で、父も男兄弟、父方の従弟も男だけ、幼少期は兄のさらに年上のワルガキ集団の中、すみっこで一人遊びをしていた。小中学校は普通に女の子とと遊んでいたけれど、高校は理系に進み、大学も社会人で選んだ職種もほぼ男ばかり。


うちの父は子どもたちによく仕事の話をした。子どもを必要以上に子ども扱いせず、兄たちは小学生のころから父と仕事の話を対等にしていた。わたしは少し歳が離れていたので、よく理解できないけれど、その会話を黙って聞くのが好きだった。


男同士の会話が好きなので、20歳くらいまでは自分も男のように、とまではいかないにしろ、兄や父と仕事の話をするように、男友達や男の先輩と話していた。10代はまだそれでよかったけれど、社会人になるとどうしても女として見られていることを思い知らされ、男性に対して無防備にオープンマインドすぎるとややこしい事態になるので、一定の距離を置くことを学んだ。少し寂しくもあったが、長きにわたって父や兄に感化されすぎ、男性的な生き方をしかけていたのでブレーキがかかってよかったかもしれない。

いまでも変わらず、たまに自分の思考回路は男っぽいなと思うことはよくある。しかしやっぱり、男としゃべっていると「男の子だなあ」とよくも悪くも思うときがあるし、自分とは違う「公」の男の姿とその陰にある意外な繊細さも見てきた。

逆に女々しい自分に嫌気がさすこともあれば、周囲が驚くほど大胆な行動に出るという強い女の部分が出ることもある。

まあ、ジェンダーにかかわらずどんな人間でも男っぽい部分と女っぽい部分はあるが、それを客観的に観察している方かもしれない。


小説ではいろんな人間を登場させたい。しかし見ているのはすべてわたしというひとりの人間だ。


わたしが描くマサシという人間はわたしの男バージョンなのかもしれない。マサシという名前でなくても、繊細な男性キャラのことを優しく見守っている傾向がある。逆に女性キャラは強い人物を描きがち。それはわたしの理想の姿なのかもしれない。彼女たちにわたしが寄り添うことはない。だって、一人で立てる強さを持っているから。


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過去に書いた作品が似たり寄ったりであることは我ながらショックを受けたのだけれど、ここでもう1つ気づいたことがある。


まっさらな心の人間を書くには、10代がちょうどいい、と考えている。


若い人向けの小説が書きたいわけではないのだけど、大人になるとどうしてもドロドロした部分が増える。大人の世界で純粋な人物を描こうとすると、ドン・キホーテとか白痴の主人公みたいになるのではないか、つまり純粋な人=特異な人というのが嫌だ。かといって、世の中の汚さを知った上で正義を貫く人はステレオタイプになりやすいし。
そんな中で10代はまだ無理なく描きやすい。だからって大人を描けないことはないはずなんだけど。ああ、自分は書きやすい場所に逃げていたのだ。


人の評価なんて気にしていないつもりでいたが、無意識にめちゃくちゃ意識していた。その殻を破っていきたい。


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小説にもいろいろなジャンルがあり、奇想天外なファンタジーとかワクワクするミステリーなんて書けたらいいのになと思う。しかし、アイデアだけでいうとわたしには限界があり、そこで勝負できる気がしない。しかも、AIなんてものがあれば、おもしろいストーリーなんて一瞬でできるはず(使ったことないけど)。おそらく、映画やドラマ、小説やマンガなど創作の世界ではもうすでにしれっとAI作品が紛れ込んでいるに違いない。もし、現段階では勝てても間もなく追い抜くんじゃないだろうか。だからこそ、AIに描けない人間の本質というのを、丁寧に描くことが今後価値が上がると思ってる。もちろん狙うわけではなく、自分から自然と浮かぶものを書きたい。


”マサシ”的な男がよく出てくる自作小説、よかったら読んでみてください。




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