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アイルランド語について備忘録

※ダブリンの大学に1年間いた中で見聞きしたアイルランドにおけるアイルランド語の位置付けについての備忘録です。私の主観が多いものの、訂正・追加など、ご意見頂けたら嬉しいです。
 
-日常言語は英語
公用語としてはアイルランド語と英語の国となるが、日常的に話されているのは英語である。
・それがどんなものか解説する際に、アイルランド人は外国人に対して下記のショートフィルムを見せることが多い

“Yu Ming Is Ainm Dom” [My Name Is Yu Ming] (2003)
*海外に憧れた中国人の若者がアイルランド語を勉強した後、現地にやってくるも、当該言語が誰にも通じない……というストーリー

・そのせいなのか、一般の人でもmother tongue, national language, native languageという単語を明示的に使い分けて話す人は多い(気がする)。
・日常的に英語よりもアイルランドをメインで会話する地域をゲールタハトと呼ぶ

日常的に標識などが英語と併記
・バスや電車の案内は一般的に英語、アイルランド語の順
・ 地名などは、ダブリン [英 Dublin, 愛 Baile Átha Cliath]のように英語寄りになってしまったもの、アイルランド語綴りの方が一般的なもの[英Dunleary 愛Dún Laoghaire]、その中間などが混在
・bruscar [litter], fáilte [welcome] あたりの単語は頻繁に目にし、観光客が最初に認識するアイルランド語ではないかと思われる
・日常会話(英語)であっても、政治・行政関連など、特定の分野ではアイルランド語がそのまま使用される。
例:Taoiseach [prime minister], Garda [police]など
・米アニメ『ザ・シンプソンズ』のアイルランドが舞台の回で警察の制服に「police」と記載されていたことがあったが、これを見ていたアイルランド人は一様に「違う」と叫んでいた
 
-  公用語であり、行政文書や公文書は全て英語・アイルランド語で表記
・EUの言語政策により、さらにこの流れは加速(EUの行政文書は必ずアイルランド語に翻訳されるほか、国内の文書のアイルランド語翻訳にも必ず予算がつくことになるため)
・アイルランド語ができることが、相応の給与が約束される公務員になることにつながるため、このことが若い世代にも学生時代にアイルランド語を真面目に勉強するモチベーションにはなっている
 
アイルランド語は義務教育
・アイルランド語は必須科目であり、大学入試に相当する高校卒業試験(leaving cert)の試験科目でもある
・民族的なアイデンティティはもちろんだが、試験・公務員就職に有利なことから、全カリキュラムをアイルランド語で教える学校も一定の人気がある
・一般的な英語で教育する小学校ではゲールタハト(アイルランド語が話されている地域)に合宿に行く行事が必ずあり、合宿中に英語を話すと罰則がある。それゆえ「トイレに行きたいです」が最初に覚えるアイルランド語だ、と外国人に説明するアイルランド人は多く、確かにアイルランド語を話せないアイルランド人でも、これは言える
・この「トイレに行きたいです」のアイルランド語を勘違いからタトゥーとして腕に彫ってしまったアメリカ人がアイルランドのソーシャルメディアで話題になった


・なお、アイルランド人に「何かアイルランド語を教えて欲しい」と頼むと教えてもらえるフレーズとして Slainte [乾杯]、póg mo thóin [kiss my ass]あたりがメジャー。
・「アイルランド語を話せる人間」の人口は増えており、地域によって差はあるだろうが「若い人の方がアイルランド語を話せる」と考えているアイルランド人が多い。


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