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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.71

大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


第一章                   別れて始まる人生がある


「愛する人が残してくれたもの」から

伊集院 静の言葉 1 (210)

 人は自分だけのために生きているのではないということである。
 死別の哀しみと世間は言うが、私などはたいしたことはない。それでもである。
 私は別れた瞬間から何かをすべく生き方を模索し、偶然、小説を書くようになり、それが妻の願いであったことは後年に知るようになったにせよ、私は今でも彼女が多忙な日々の中で、そうしてくれたことに感謝し、何かひとつまともな作品を残したいと思っていることは事実である。
 それにしてはつまらない作家で申し訳なく思っているが・・・・・・。   

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               



「生きることの隣に哀切がある」から

伊集院 静の言葉 2 (211)

 大人になってみると、十人の中に、途方に暮れた経験がある人が、必ず何人かいることに驚いたことがある。それほど人間が生きるということは、辛いことや切ないことが、むこうからやってくるもののようだ。   

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               

                       



「生きることの隣に哀切がある」から

伊集院 静の言葉 3 (212)

 私は二十歳の時、十六歳の弟を海の遭難事故で亡くした。弟が一人で沖に漕ぎ出したボートだけが浜に流れ着いた。台風の最中だった。そんな中で私の友人や弟の友人で手をつないで海に入り、弟を探してくれた。夏であったから風邪を引く友もいなかったが、それでも頭の下がる思いだった。    

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               


⭐ 出典元

『大人の流儀 3 別れる力 』
2012年12月10日第1刷発行
講談社

表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。




✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます

🔷「人間が生きるということは、辛いことや切ないことが、むこうからやってくるもののようだ」

人間(生きものであればすべて)は生まれた瞬間から死へのカウントダウンが始まります。

余命が長いか短いかの違いはありますが、いずれにせよ生まれたからには例外なく死に至ります。

「人生100年時代」と言われますが、果たしてどれだけの人が100歳以上まで長生きできるでしょうか?

百歩譲って、100歳まで生きたとしたらどうなるでしょうか?
辛いことは増えることはあっても、減ることはないと考えています。

作家の瀬戸内寂聴さんは長生きして一番つらいことは次のことだと述べています。

長生きして一番辛(つら)いのは、自分にとって懐かしい人、恋しい人、会いたい人がどんどんこの世からいなくなり、それを見送らなければならないということです。

瀬戸内寂聴

瀬戸内寂聴 長生きして一番つらいこと
ニッポン放送 NEWS ONLINE
2017-09-19



長生きするにつれて、以前であれば自分ひとりで出来たことが出来なくなってきます。これはかなり堪えます。歳をとったのだな、と実感します。

確かにそれも辛いことですが、生前の母がよく言っていたも辛いことだろうと思います。

「毎年のように友人や知り合いがこの世からいなくなっていくのが寂しい」。

寂聴さんが語っていたことと同様なことですね。



🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』に言及しています。


伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p.212



夏目雅子さんのプロフィール




🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。



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