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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第91回




大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家(直木賞作家)で、さらに作詞家でもありますが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。


大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第91回

第4章 本物の大人はこう考える


「恥知らずの行為は生死にかかわる」から

伊集院 静の言葉 1 (270)

 これをテレビで正確に伝えようとしても伝えられる感性を持った、経験を持ったテレビマンが一人としていなかった。当然である。皆が未経験のことが起こったからである。
 しかし果たしてそうだろうか。先日もテレビに地質学者が出て、千年前にも今回と同じ規模の津波があった痕跡があると土質を見せて話していた。
 バカを言うな。なぜそれを声を大にして言わないんだ。どのつら下げてテレビに前でしたり顔で話す。それに受け応えるテレビ局員が、今回の天災は予測できたのです、とこれまたバカを絵に描いたことを口にし、最後にスタジオでアナウンサーとキャスターが政府の危機管理の甘さを責め、犠牲者を減らすことができたのではないかと平然と言う。バカも休み休み言え。それが大人の仕事なのか。     

大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 


「恥知らずの行為は生死にかかわる」から

伊集院 静の言葉 2 (271)

 なぜ平然とそうできるのか。津波の映像がすべてであるからだ。
 津波は襲った。復興に皆懸命である。
 果たしてそうだろうか。被災地には今、親のどちらかを、または自分の面倒を見てくれていた大人を失なった子供が二千人近くいる。両親をともに失くした子供は二百五十人、その子供たちが復興にむかってガンバッテ、、、、、いるって? 
 そんなわけないだろう。
 子供たちをどう育て、きちんとした大人にさせるために何をすべきか方向性を示すのが、大人の、さらに言えばメディアの仕事ではないのか。

                        大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                             


「恥知らずの行為は生死にかかわる」から

伊集院 静の言葉 3 (272)

 被災地の瓦礫を拒否した市町村がある。
 なぜ平然と拒否できるのか。自分たちの子供や年寄りに放射能が……。
 では聞くが、自分たちとは何なのだ?
 日本人ではないのか。それともすでに日本人を捨てているのか。
 瓦礫を引き受けないと口にした市町村にはまともな大人が一人としていなかったのか。
 赤児をかかえたり、子供を育てている母親は子のために文句を言う。しかし今、自分たちだけのことを優先する時ではないだろう。人の子は自分の子だろう、と言って聞かせる大人がなぜ市町村にいなかったのか。 

                          人の流儀 3 別れる力 伊集院 静 
                               

⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』

2012年12月10日第1刷発行
講談社


表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「赤児をかかえたり、子供を育てている母親は子のために文句を言う。しかし今、自分たちだけのことを優先する時ではないだろう。人の子は自分の子だろう、と言って聞かせる大人がなぜ市町村にいなかったのか」

これら一連の伊集院静氏の言葉は、私にとって耳の痛いものでした。私は被災者ではありません。

「被災者に寄り添って……」と言うことは簡単なことですが、本当に被災者の気持ちをすくい取り、行動に移せる人はそう多くはないと思います。

被災者と軽々しく言うのも失礼なことだと思っています。

私も含め、多くの人は「他人事ひとごと」で片づけてしまいがちです。
東日本大震災が発生してから早12年の時間が経ちました。
時間が経つのは本当に早いです。

しかし、被災者にとっては「その時」は心の中で止まっていて、心の傷は一生消えることはないでしょう。



🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p. 212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



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大人の流儀 伊集院 静


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