おかんの味

 わたしが作る料理の味のほとんどは、実はわたしのおかんの味だったりする。

 わたしのおかんはかなり自分でご飯を作るタイプで、色んな料理を作ってくれた。どれもとてもおいしかった。小学生の頃に一緒に何度も焼いたロールパン。予備発酵の時に嗅いだイースト菌の匂いを凄く覚えてる。肉まんにチャレンジしたけれども生地がうまくふくらまなくて、2回3回と繰り返す中で段々上手になり、「ほれ~、おらの肉まん、うまいべ~。」と新潟訛りで自慢する会話を凄く覚えている。なぜか肉だねの代わりに焼きそばを入れだして、「これはどうなんだ。。。??」と戸惑ったのも覚えている。今思い返せば、多分おかんは焼きそばパンのノリで饅頭を作りたかったんだろう。

 唯一、唐揚げだけはどうにも美味しくなかった。兄弟間でも非常に不評だった。「なんで唐揚げだけこんなにマズいの??」ってのは家族間でもちょっとしたネタになる程だった。わたしも大人になった今、あの味をふと思い出すと、理由がちゃんとわかる。あの味は油が酸化しすぎてた。おかんは節約家とケチのバランスが微妙なラインの人間だったので、揚げ物をすると必ず油ポッドに油を移して保管する。でもその保管がずさんなので、あの油で揚げ物なんかしたらどれもエグい味になるだろうなぁと思ったりするけど、とんかつとか天ぷらとかは普通に美味しく食べてたから、逆にちゃんとした油で全ての揚げ物をしてたらもっともっと美味しかったんだろうなぁ、なんて。

 そういう母の味で育ったわたし。だからこそ、わたしが「美味しい」とか「こうしたい、ああしたい」という味は、そっくりそのまま母の味だったりする。昔付き合っていた女の子が、おかんの料理を食べたら「かっちゃんが作ったご飯と同じ味がする」と言った。本当にそのままの意味でそうなんだと思う。

 最近家で凄く自炊をする様になった。そんなに献立は多くないけれども、煮物をしたり、スープを作ったり、揚げ物・炒めものをしたり、刺し身を漬けにしたり、漬物したり、サラダをしたり、ラーメンしたり、冷やし中華したり、ハンバーグやピーマン肉詰めをしたり、まぁなかなかに料理をしている。そうすると「あれ??なんかおかんの味とほぼ一緒じゃね??」って思ってしまう時がある。多分、わたしの美味しいの基準が、そのままおかんの味になってるんだと思う。

 こんなノリでわたしの子どもたちが食事を楽しみ、時には調理を手伝ってくれて、更にいつかは自分で料理をし、どこかのタイミングでもっと料理に興味を持つ事があったのなら、その味はどんな味なんだろうか。どんな味を子どもたちは生み出していくのだろうか。

 そういう風に考えると、なんか凄く楽しみだなぁとか思った一日でした。今日久しぶりに鶏そぼろ丼を作ったんだけど、やっぱりおかんの味だなぁと思ったりしてさ。なんか、こういうの食べてたなぁ。

 寝る。


おわり。


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