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今週の、いちばん。第2回/『アナと雪の女王』は“全部のせ”でもビクともしない映画だった。​

ラーメンのトッピングに“全部のせ”というものがある。玉子やらメンマやらチャーシューやら、そのお店で提供しているトッピングを全部のせる意味で、昔はよくこれを頼んでいた。

ただ、最近は玉子やらモヤシやらを単品で追加することが僕は多い。体重のことも考えているけど、それ以上に、全部のせたラーメンが必ずしも味のバランスがいいとも限らないし、その「いっぱいいっぱい」な感じにちょっと辟易することが多くなったからだろう。

昨日見た、話題の映画『アナと雪の女王』は、自分らしいたとえを使えば“全部のせ”の映画だった。姉妹の愛と絆、男女の愛、孤独と自由の兼ね合いといったテーマ。ドキドキするストーリー、心が震えるような楽曲、かわいいだけでないキャラクター、素晴らしい映像表現。あれもこれも、全部のせ。

けれど、この映画がすごいのは、それだけ全部をのせてもビクともしないところだ。何かの要素が浮いてしまうこともなく、ありとあらゆるワクワクを詰め込みながら、エンディングまで自分の心がずっと引っ張り続けられる。

僕がもし、「編集者」という職に就いていなければ、だから「めでたし、めでたし」で話を終えればいいのだろう。ただ、どんなに非力でも、作り手・編み手として生きている以上、この映画を見たとき、くやしいと思った。こういう力強い、有無を言わせない、いやになるほど豊かな作品が、多少値のはる本と同程度の価格で提供されている現実。本とは内容も予算も全然違うものだけど、僕はこの“全部のせ”映画のすごさが、今もどこかで心にもたれ続けている。

今週の、いちばんくやしかった瞬間。それは、4月19日、日本橋の映画館で、『アナと雪の女王』を見終わった瞬間だ。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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