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今週の、いちばん。第7回/「必勝法」を作ったときから、勝てなくなる。

コルクという会社に柿内芳文という男がいる。簡単に言うと「出版界の宝」だと僕は思っている。
彼の経歴は、このwikiの記述に譲るが、こんなやつが僕と同じ1978年生まれの編集者だということを、誇りに思うときもあれば、プレッシャーに思うときもある。

先日、そんな彼の編集論を久しぶりに聞く機会があった。

著者の木暮太一さんが主催したあるセミナーで、彼はそのタイトルづけに法則はないのか、聞かれていた。
なにしろタイトルづけのうまさには定評のある彼のことだ。僕らの目からウロコがボロボロ落ちるような「必勝法」を教えてくれるんじゃないかと、会場にいた同業者や著者は期待していたはずである。

でも彼は、タイトルづけに法則などないと言っていた。
彼自身も一度は自分のタイトルのつけ方の法則化を試みたことがあるらしい。でもその法則に従って新しい本のタイトルをつけようとすると、全然いいもの、自分らしいものが浮かばないのだと。

一瞬狐につままれたような気分になったけれど、でもそれはきっと、真実なのだと思う。

仕事柄、いろいろな著者やビジネスマンを見てるのだけど、自分の成功体験を「必勝法」として法則化したときから、スランプに陥る人も少なくない。
それはきっと、その人がその法則にとらわれて、そこから成長しなくなってしまうからではないか。

もちろん必勝法にはメリットもある。時代や状況によってはその必勝法に盲目的に従うだけで、勝てることもあるのだろう。
でも、きっと、今はそういう時代ではない。言い換えると、楽して勝てる時代じゃないんだよ。

柿内くんという、同世代のトップランナーのその言葉を聞いて、自分にはまだまだ捨てられるものがあると気づかされた。

今週の、もっと勝ちたいと思った瞬間。それは、5月20日、市ヶ谷のセミナー会場で、柿内くんの話を聞いた瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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