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「がんばってね」と言うかわりに、本をあげてもいいと思う。/今週の、いちばん。44

人に本をプレゼントするのは難しい。
そもそも好みの違いがあるし、趣味が同じなら同じで、相手がすでにその本を持っていたりもする。
ときには、こちらが贈った意図を誤解されることもあるだろう。
だから、なかなかハードルが高いのだけど、それでも本をあげたいときはある。

友人が色々あって、いったん彼女の地元へ戻ることになった。
仕事で知り合った人だけど、仕事よりも飲んでいた時間のほうが長かった人。
どこかで会いたいなと思ってたのに、なかなか時間が取れなくて、最後すべりこみで喫茶店で話をした。
そのとき、僕は昔担当した本を、一冊持っていった。

年が離れた学生さんとかならまだしも、ちゃんと仕事もしている人に、こういうとき、どう言葉をかければいいのか、悩む。
いい大人が色々考えて決めたことについて何か言うのも、評価じみたことをするのも違うと思う。
極端に言えば、軽々しく「がんばって」と言うのも違うなと。

だから僕は、お互いの近況を話し合ったあと、持ってきた本を渡した。
君を成長させる言葉
古今東西の著名人の遺した言葉に、酒井穣さんがメッセージを重ねていく一冊。彼の本のなかでも珍しいつくりの本だ。

この本のどこを読んでほしいとかは、特にない。
それがどのページであったとしても、彼女の新生活において、何か一つでもキッカケになるならいいなと思う。
もちろん、それはこちらの皮算用だけど、そんな夢想をさせるくらい力のある本だと自負しているし、少なくとも、そんな気持ちでこの本を贈ったということが伝われば、それでいい。

普段付き合いのあるビジネスマンたちに、ここ数年「電子書籍」の話をよくされる。
便利だと思うし、こちらのビジネスとしても、もちろん無視できない存在だ。
でも、こういうとき、僕は本という「モノ」にも価値はあるんだと思ったりもする。
誰かのことを思って本を忍ばせたカバンの重さを、僕は、決して嫌いではない。

今週のいちばん、編集者でよかったと思った瞬間。それは2月13日、池袋の喫茶店で、友人に本を渡した瞬間です。

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