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本を読んでも、作っても、わからないことはある。/今週の、いちばん。60

自分は本当に、ものを知らないなぁ。
4月に転職をし、加えて個人事業主としても活動をはじめて、いったい何度、こう思っただろう。

10年以上編集者をやってきて、いろいろな人に会ったし、仕事に関係する本ならたくさん読んできた。
けれど、今思えば、それは「点」の知識であり、かたよった経験である。
点と点をつなげれば「線」くらいにはなるかもしれないが、仕事は「面」だ。
つぎはぎの知識だけで立ち向かっても、実際は穴だらけで、多くの人に頭を下げて、教えてもらって、なんとか回している。

先日、コンサルタントとして独立している著者の方と久々に会った。
こちらは編集者として企画の話をし、同時に個人事業主として、いろいろアドバイスをいただいた。
彼のデビュー作はまさに「個人事業主」向けの開業本だった。
それを「会社員」として編集していた当時の僕は、正直、原稿に書いてあることを、どれだけ理解していただろう。
いま、はじめてその本のリアルさが身にしみている。

本を読めば、知識はつく。本を作れば、著者とのやりとりも交えて、わかった気になる。
でも、それだけで。
本当にそれだけで、いいんだろうか。
そんな思いがずっとあって、僕は(出版にとどまらない)ビジネスの世界に足を踏み入れた。
結果、わからないことだらけで、恥も汗もかきつつ働いているけれど、自分が「わかっていない」ということだけは、いやというほどわかった。
それは僕にとって、大切な経験である。

本を読むことは、別に無意味ではない。
ただ、読んだあとに行動することで、自分に何が足りないかがわかる。
それをわかったうえでの読書は、さらに有益だ。
そうやって、ていねいに「面」を作り上げていくことが、成長だと僕は思う。
いい歳こいて、わからないことが増える毎日だけど、僕の世界は少しずつ広がっている。

今週のいちばん、わからないことを恥じなかった瞬間。それは6月17日、銀座で著者とハシゴしながら、仕事について語りあった瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です

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