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今週の、いちばん。第20回/「最強のタイトル」づくりに、必要なもの。

ことわざって、面白い。
「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもある一方、「船頭多くして船山に登る」ということわざもある。
これはきっと、どちらも真実なのだろう。
何か妙案を考えるときに、人の知恵を借りるのはいい。ただ、最後は誰かが責任を負って決めないといけない。

本のタイトルを決めるというのは、まさにそういうことだと僕は思う。
1人でウンウン考えても、思い入れが強すぎて(対象読者が)狭くなることがある。
けれど、みんなの意見に振り回されて「いいとこどり」しても、結果として既にあるものの劣化版になったりする。
最後は、その本の企画の生みの親である編集者が、その本の未来を見通して「これだ」というものを出さないといけない。

今週、6月に発売した『今いる仲間で「最強のチーム」をつくる』に初の増刷が決まった。
この本のタイトルは、この1、2年で作った本の中で、一番迷った。
当初作った企画書には、『「強いチーム」をつくる会議』という仮題が書いてあった。
そう、この本のメインコンテンツは「チームが一体化するTDC(Teamship Discovery Camp)」という一種の会議のやり方だ。
だから、「会議」というキーワードを、ずっとタイトルに入れようと思っていた。

タイトル会議を控えた4月末、僕は同業者たちと福島にいた(こちら参照)。
このとき、旅行中にもかかわらず、僕はこのタイトルのことばかり考えていた。
そして、ある同業者に相談したら、「<会議>ってついた本はまず売れないよ」と言われてしまった。
それは、おおむね事実である(実際、この本以外で「売れたなぁ」という印象がある会議本はまずない)。
分析するに、「会議」の悩みを本で解決したいというニーズがあまりないのだろう。
これを機に、僕は「会議」というキーワードを外したタイトルを模索することになった。

ところで、見出しにも出した「最強のタイトル」って何だろう?
編集者同士でも意見が分かれると思うけど、僕はここで「その本が役に立つ<最大限の読者>に届きやすくするタイトル」と定義したい。
今回の本なら、「人の問題」で悩むマネジャーや経営者のすべてに役立つ、と僕は信じていた。
ならば、(本の中身と離れすぎずに)そういう対象読者全員に刺さる言葉は何だろう?
そうしてたどり着いたのが『今いる仲間で「最強のチーム」をつくる』だった。

思えば「今いる仲間」というキーワードが出たとき、この本のタイトルは9割方固まった。
この言葉は、今の組織のメンバーに不満があり、かつろくに増員もできないマネジャーや経営者には刺さるはずだ。
そして、同様の思いは、僕にもある。(あえて言うが)僕が属する組織にも、同様の悩みは存在する。
その「ナマ」の思いが、このタイトルにはこもっている。

一度増刷しただけで手前味噌だとは承知だけど、僕はこのタイトルがとても好きだ。
この業界の仲間の知恵を借り、なおかつぼくのナマの思いをこめた、とても人間らしいタイトルだから。

今週の、いちばん手ごたえを感じた瞬間。それは、8月19日、社内で『今いる仲間で「最強のチーム」をつくる』の増刷を知った瞬間です。

*「今週の、いちばん。」は、その1週間で僕がいちばん、心が動かされたことをふりかえる連載です(下の「このマガジンに含まれています」のリンクから全部の記事が読めます)

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