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Bリーグ第30節アルバルク-三河。術中からチームを救ったテーブス海

すっかり三河の術中にはまっていました。

こうすればアルバルクは窮地に陥るんだ。というお手本のような三河のアルバルク攻略法でした。
その苦しんだチームを救ったのは、間違いなくアルバルクの若き司令塔、テーブス海であったと思うのです。

アルバルクがCS出場に王手をかけた今シリーズは4月6日(土)、7日(日)にアルバルクのホーム代々木第二体育館で行われました。

たくさんのシーホースブースターが訪れた今節は第1ゲームは57-69で三河が勝利を収めました。翌日の第2ゲームは65-61と僅差でアルバルクが勝ちを拾い今シーズンのチャンピオンシップ進出が決定しました。

チーム、スタッフの皆さん、アルバルカーズの皆さん、おめでとうございます。

しかしゲーム内容は、このままCSで戦っても大丈夫?
と首をかしげたくなるほど、三河の対策によってアルバルクの弱点が露呈された内容になっていたように思います。 


ロースコアゲームの守りあいとなった今節、第1ゲームに三河が行っていたアルバルク対策とはどのようなものであったのか?


第2ゲーム、ゲーム序盤でアルバルクが最大20点差のアドバンテージを握れたワケは何であったか? 


そして、それを2点差まで追い詰められて苦しんでいたアルバルクを救ったテーブスの成長にスポットを当てたいと思います。

三河がPnRを対策、リバウンド、セカンドチャンスを抑えた。

第1ゲーム試合後に三河のリッチマンHCは「彼ら(アルバルク)の強みセカンドチャンスやペイントからの得点を抑えることができた点で自分たちのすべきプレーができた」と総括しています。


その言葉通り、三河はアルバルクのビッグマンをペイントに入らせないでORを取らせないようにインサイドはフィジカルに守り、それでもフリースローは与えないようにしていました。


第1ゲームのアルバルクの2Pは15/37本(40.5%)、3Pは7/23本(30.4%)、フリースローは6/11本(54.5%)です。この日の三河の2Pは14/29本(48.3%)、3Pは11/31本(35.5%)、フリースローは8/10本(80%)です。三河にしっかり抑えられていたことがわかります。

アルバルクの平均値は2PT(平均22/41.6本 56.9% 1位)、3P(平均9/27.1本 11位/23位)、フリースロー(13.8/19.7本 5位/1位)です。さらにリバウンドはOR13.1本(5位)DR26.6本(6位)TR39.7本(6位)です。


この数値のうちリーグ上位のアルバルクの得意分野であるペイントの攻撃、リバウンド、フリースローを抑えて、三河自らのストロングポイントであるパワー、スピード、トランジションで勝負するゲームプランであったように思います。そして三河はスタッツの上でもゲームの結果でもこれを遂行したのです。


では、具体的には何をしていたのでしょう。


第1Q残り9分28秒 
(アルバルクのスペインPnRを封じる)
アルバルクは左トップにテーブス、エルボー左 サイズ、右ロシター、右ウイング小酒部、右コーナーメインデルでエントリー。


右ウイング小酒部が右から左へロシター、サイズのスクリーンを使ってAIカット。
ロシターが右トップに上がってテーブス→ロシター、ボールを受けます。小酒部はAIカットから左ローポストに回り込みスペインポジションにつきます。


サイズが左トップに上がりロシター→サイズにパス。さらにサイズから左ウイングに降りたテーブスにボールを送ります。そこから左サイドでテーブス、サイズ、小酒部のスペインピックに入りましたが、サイズのマーク、ガードナーはドロップしてサイズのダイブに備えるとともに、西田と小酒部を挟むようにして小酒部の動きも抑えます。


さらにテーブスにつく久保田はテーブスに正体してフェイストゥフェイスに立ちます。これではピックがうまくかかりません。それでもテーブスがピックから強引にドライブすると後ろからは久保田のハードチェイスをうけます。さらに右ウィングにポップしていたロシターにつくレイマンがテーブスの正面に回って止めに入ります。     


苦しいテーブスは右ウイングのロシターに出します。


ロシターはペイントにドライブして得意のフローターを狙いますが左コーナーのメインデルのマークからローテーションしてきたイ・デソンにプレッシャーを掛けられシュートを外します。


すると反撃にあいます。
西田のDRからアーリーオフェンスでキックアウトからレイマンに3Pを決められてしまいました。(0-3)


このようにアルバルクのPnRにはビッグマンのダイブにガードナー(オーガスト)がドロップで守り、メインデルや小酒部などのピックユーザーのドライブには右ウィングのマーカーがローテーション、そして後ろからはハードにチェイスが来ます。このドロップ、ローテーション、ハードチェイスによってアルバルクのビッグマンとウィングプレーヤーはペイントの中をなかなか割れなくなっていました。


さらにサイズやロシターのポストアップにはシェーファーと長野などダブルチームで当たりペイントからの侵入を防いでいました。
(第1Q残り2分16秒)

こうしてペイントからビッグマンが排除されるとORの飛び込みもボックスアウトの餌食にあってリバウンドが取りにくい状況を作られてしまっていました。

さらに、三河のディフェンスオプションには2-3ゾーンがありました。

前の2人(長野、角野)はハイポストアップやPnRに激しく当たります。
後ろの3人はガードナーを真ん中にレイマン(オーガスト)、シェーファーを左右においてペイントの侵入に備えます。ここでも中への侵入は非常に難しかったのです。

三河のオフェンス戦略

アルバルクが三河に最も苦しめられたオフェンスは、DRやSTからのトランジションとファストブレイクです。アグレッシブにディフェンスに来るのでこの日は三河に9つものSTを奪われ13本もターンオーバーを許しています。そのSTやターンオーバーがファストブレイクを誘発して三河のファストブレイクポイントは15点(アルバルクは7点)にもなりました。

さらにこの日の三河は3Pの試投も多く効率的に決めています。11/31本(35.5%)
特に角野の3Pは効果的でした。


第4Q残り5分20秒  
(マイアミアクションからキックアウト)
ホーンズ トップに長野、エルボー左オーガスト、右レイマン、左コーナー角野、右コーナー西田でエントリー。

レイマンが右ウイングに出て 長野→レイマン。


レイマンと右コーナーの西田がドリブルハンドオフであがります。

西田がスリーポイントライントップでオーガストとPnRしてペイントにドライブします。ペイントにグダイティスと左スロットからメインデルがクローズアウト。西田→左コーナーの角野にキックアウト、3Pです。(49-59) 

さらには残り2分14秒には西田とガードナーとのピックからポップしたガードナーにトップから3pを決められました。(55-69)
ガードナー選手は400回目のメモリアル3Pの記録となりました。それと同時に三河にこの日の白星を献上することになりました。

ゲーム2第1Qアルバルクの攻勢

さて、第2ゲームはアルバルクが攻勢を強めます。

しかしながら昨日からの三河の戦略に対してアルバルクのインサイドを崩す明確な対策は見て取ることはできませんでした。


アルバルクの基本的なオフェンスはピンダウン→ハンドオフ(ズームアクション)、ドリブルハンドオフ→PnR(マイアミアクション)などの連続モーションから主に左サイドからのPnRからドライブ、ハイローでインサイドを攻めようとします。


だから第1ゲーム(実は第2ゲームでも散見されてまいたけど)では3Pのシュートシチュエーションでドライブを選択して三河ディフェンスにつぶされてしまったり、インサイドばかりを攻めることは多々あったようにも感じます。

三河が中を攻めさせないディフェンスをするならば外を打てばいいんです。(単純)

第2ゲーム、第1Qはアルバルクの3Pがよく当たります。3Pは6/8本で27-17と三河に10点のリードを奪います。この日はトータルでも3Pは10/28本(35.7%)とアテンプトもメイクもアルバルクの3pの平均スタッツを上回ります。  


一方、2Pも試投は少ないもののメインデルがぐいぐい突破を試みて玉砕しても(この日は6ターンオーバー)何度かはペイントに割って入いることができていました。2Pはチームで13/26(50%)の結果をのこして、少し確率を上げることはできていました。

チームを救ったテーブスの成長

しかし、第2Q以降は三河もDRからのファストブレイクを軸に速いバスケットで短い時間で点差をカムバックする出入りの激しい試合展開となっていきます。

第1Qの10点のリードも西田のSTからプッシュ→イ・デソンのレイアップ(第2Q残り4分1秒 33-28)や西田とガードナーのPnRからオーガストへのアリウープ。(第2Q残り3分35秒 33-30)などで3点差まで詰めてきます。


しかし、そこは安藤とテーブスの3Pで突き放しました。(第2Q終了41-32 9点差)

後半第3Qはさらに上がったり、下がったりです。


この日ターンオーバーが多いメインデルですがアグレッシブにボールも奪います。メインデルのSTからロシター→メインデル3P。メインデルのSTからロシターのフローター。ロシターとグダイティスのハイロー。次々とシュートが決まります。


そして第3Q残り4分6秒にはテーブスのスクープショットが決まって54-34とこの日の最大点差20点となります。

ただしここからの三河の反撃が凄かったのです。


第3Q残りの2分半でDRからのアーリーオフェンスで角野の3P。レイマン2P、ガードナーのFT、シェーファーFBなどDRやミスに付けこむトランジションで、あっという間に9点カムバックしてしまします。

11点差の第4Qは短時間で火力をふるう三河の勢いにアリーナの雰囲気も三河の押せ押せになってきます。

第4Q残り8分29秒
レイマンのバックドアダンクが決まって(56-51)5点差。


ここで早くもアルバルクは最後のタイムアウトを使ってしまいます。


残り7分79秒
DRを奪ったテーブスは一気にゴールまで駆け上がってファストブレイク。
三河の流れを抑えます。(58-51)7点差。

残り3分47秒
(62-56)6点リードのせめぎあいからオーガストのDRから→久保田→レイマンとつながれます。このファストブレイクのピンチにレイマンの前に立ちはだかったテーブスはテイクチャージ。チームを救います。


残り1分17秒
レイマンの3Pが決まってしまいます。ついに2点差まで詰められてしまいました。(63-61)

残り20秒
ラストポゼッション。点差は2点。



テーブスがトップ。サイズが右エルボーからピックに来ます。



テーブスのマーカーは長野。
ハードに当たってきます。


テーブスはドライブして右エルボーにペイントタッチ、 

長野はついてきます。

そこからバックステップ。 


ペリメータジャンパーを打ち抜きました。
(残り15秒 65-61)

アルバルクが雪辱を晴らしました。

このゲームの要所では必ずテーブスが活躍していました。
3p、テイクチャージ、最後のミドル。
この日のテーブスはチームハイ18得点、3pは4/6本、6アシスト、6リバウンドでした。


テーブスには広い視野、正しい状況判断能力、高いバスケットIQ、強いメンタルがあります。


テーブスのそのすべてが優勝争いをしていくアルバルクには必要不可欠なものであることをこの三河戦で証明してくれました。

アルバルクに来て1シーズン。これからCS、その先にパリオリンピックが待っています。
彼の成長が世界を震撼させるものであることを確信した三河戦でした。

photos by kii

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