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なぜ漢方は医療でなかなか使われないのか?

素晴らしいところがいっぱいの漢方薬ですが、今の日本では正直存在感は薄いです。一般の人には「あやしい薬」や「健康食品と同じ」と思われ、お医者さんに行ってもほとんど処方されることはありません。2020年度で医療用医薬品に占める割合は1.6%(薬価ベース)になります。

そんなに良い薬なら、なぜ医者でなかなか処方されないのか?
今回は自分が考えるその理由を見ていこうと思います。

薬としてのエビデンスレベルが低い

まずこの問題。漢方薬は実際の治療では効果を上げています。ですが、漢方薬がエビデンスを得るための実験がまだあまりされていないのです。

なぜ実験数が少ないかというと、「医療薬として正式に認められてから40年も経っていないという歴史的経緯」や、「日本や台湾など限られた国で使われている薬だということ」が大きな障壁となっているんじゃないかと自分は予想しています。

そのため「実際に効果を上げていて、経験的に副作用が少ない」と分かっていても、エビデンスを重視する西洋医からすると「そんなよく分からない薬使えない」となってしまうのです。

漢方薬を使うと医師の世界でキワモノ扱いされがち

次に「漢方薬を使うと医師の世界でキワモノ扱いされがち」という問題があります。医師の世界では漢方薬を使う人は「西洋医学という正統な道から外れたやつ」だと思われてしまうのです。

ある呼吸器外科医が「手術後に漢方薬を処方すると副作用が少なくて患者さんが楽になる」ということで、その症例や処方方法の発表を学会でしたら「先生そっち行っちゃいましたか」と失笑されたそうです。

そんな認識だと医師も「勉強しよう」と思うわけがありません。医師も患者さんのために働いているとはいえ人間。仲間からネガティブな評価は受けたくありません。

幸いながら漢方も医大で本格的に教えられるようになってきています。ただ、カリキュラムに組み込まれたのは2001年の話。医学生が医師として現場に出るのには最低8年が必要。ということは医大で漢方を学んだ医師が現場に出るようになってまだ12年ほど。

医師の世界で、漢方を使う人はまだまだ少数派なのです。

漢方処方のために難しい漢方理論を学ばなくてはいけない

漢方には「証」や「気血水」という患者さんの体質や状態をあらわす漢方理論というものが存在しています。これがまたうさんくさく(笑)、さらに既存の医学とは違った考え方なので医師が漢方薬を処方する際の大きな障壁となっています。

もちろんこの理論があるからこそ、漢方薬はその人に合った薬を処方できて効果を発揮できます。

ですが、この理論を重視しすぎて患者さんに処方できないのは本末転倒です。

終わりに

今回はなぜ漢方薬が医療の現場で使われないのか?という理由を見ていきました。この問題だけを見てると漢方の未来はお先真っ暗?と思ってしまう人もいるかもしれません。

ご安心ください。この問題を解決すべく動いている人や会社がちゃんといます。

エビデンス少なすぎ問題にはツムラやクラシエがサポートする研究。
漢方を使う医者がキワモノ扱いされる問題は世代交代。
漢方理論難しすぎ問題には、フローチャート漢方、サイエンス漢方処方というやり方。

次回はそんな漢方の未来を見ていこうかなと思います。次回をまたご期待ください!

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