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『世界一シンプルな増客マシーンの作り方』—マーケティングのDXの本質は「訊かれたことに答える」仕組み作り

買って良かったマーケティング本をリストしていくnote、その21冊目。

まずは、訊かれたことに率直に答えよう

原題は『THEY ASK, YOU ANSWER』。訊かれたことに答える。しかしそれでは企業向けのマーケティング本に見えないからか、翻訳監修者の神田昌典氏っぽい日本語版タイトルになっています。

Webマーケティングの時代になり、さらにCOVID-19でセールスの方法も大胆に変えていく必要が出てきた現代。

著者は、マーケティングのデジタル化はもちろん、これまで最後まで人の価値が残るとされてきた「営業(セールス)」も、デジタルな仕組みに置き換えることができる、という立場です。足を使って訪問し、個別に交渉し、お客様を口説くといった旧来の営業からの脱却。

日本流に言えば、「営業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」といったところでしょうか。

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ただし、そのDXを支える肝心の中身(コンテンツ作り)は、マーケティングやセールスのプロを標榜する外部に任せるのではなく、顧客を理解した企業内の人間が手間をかけしっかり作り込まなければならない、と強調します。

結局、コンテンツを自社で制作するか、外部に委託するかの問題は、画家の本質とよく似ている。画家本人が絵筆をとらずに、真の傑作を生み出せるはずがない。それと同じことが、このデジタル時代のソートリーダーを目指す企業にも言えるのだ。(P252)

まとめると、

THEY ASK:
顧客が自社に対し、何を尋ねているのか、何を知りたがっているのかをしっかりと洗い出していく

これに忠実に、

YOU ANSWER:
自動的に、かつ24時間365日いつでも人間の代わりにお客様に説明してくれるコンテンツをデジタルで作りこみ、自社Webサイト等にわかりやすく配置

することが必要である、と。

価格や問題点はもちろん、競合の存在すらも、自ら隠さず自ら伝え


本書P264にもあるとおり、どんなサービスでも、お客様が知りたがるテーマはおおよそ共通しています。

1. いくらするのか
2. 問題点
3. 比較・対照
4. レビュー
5. 種類別ベスト

これらの疑問に対し率直に、わかりやすく、しかも上手に伝えていくのが、コンテンツマーケティングとインバウンドセールスの仕事のはずなのですが…

特に1の価格について、最後まで隠そうとする企業はいまだに多い。往生際が悪い。顧客からどうせ聞かれるのを分かっていても、「お会いしてから…」ともったいぶって伝えていないWebサイトは山ほどあります。インサイドセールスが商談設定まで価格を伝えようとしないオペレーションをしている会社も少なくありません。今時、そういうサービスはその時点でお客様からダメの烙印を押されているんだと思いますね。

4や5はちょっと見慣れないコンテンツだと思います。これは何かというと、Yelpやカー・オブ・ザ・イヤーに相当するものを、自社コンテンツとして出してしまうということです。

プールの骨組みを作っているのはひと握りのメーカーで、ファイバーグラス製プール業界のトヨタ、フォード、シボレーといったところ。こうしたメーカーのプールが世界中のプール設置業者に流通している。当リバー・プール&スパも含めてほとんどの設置業者は、こうしたメーカー1、2社と取引し、他のメーカーと競い合っている(自動車業界と同じ)。
ここでわたしが気づいたのは、どのメーカーがいいのか消費者が知りたくても、きちんとした情報が得られるところがまったくない、ということだ。(P148)
客からこう言われたことはないだろうか。「お宅のことは評価していますし、取引ができればと思っていますが、万が一そうならない場合、ほかにオススメのところはありますか?」(P153)

これに馬鹿正直に答えれば、ライバルや同業他社の存在をわざわざ自社の潜在顧客に知らしめてしまうことになります。せっかく振り向いてくれた顧客の機会ロスを発生させることもあるでしょう。

著者も、これを「一般的なアプローチとはかなりかけ離れている(P147)」と認めてた上で、それでも、顧客から訊かれる以上、そして誠実なプロとして顧客に認めてもらいたいならば、これに答えるべきと言います。

わたしもこのシェリダンの教えに従い、自社業界地図と業界ガイドを顧客向けに無料配布することを3年間続けていますが、これを配るたびに、胃の痛むようなストレスを感じています(笑)。ですが、自社営業担当者や代理店でもアプローチできないようなお客様が、このコンテンツにだけは先方からアクセスしてくださるのは事実です。

なお、誤解を避けるために補足すれば、著者は、上記の5テーマに答えるコンテンツを作れば自動的に売れる、というほど楽観的ではありません。真に顧客を理解している自社社員(従来でいうセールスパーソン)が、顧客との対話を通じて顧客からの問いを時間をかけてでも整理することの重要性も口酸っぱく唱えています。

ペンは剣より強し、動画はさらにペンよりも強し


本書の後半では、動画マーケティング・セールスの威力について力説している項があります。

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動画と言っても、日本でいうYouTuberを使ったインフルエンサーマーケティングのことではありません。自社製品を、自社社員が豊富な情報をもとに熱量を持って伝える。しかもお客様が好きな時間にいつでもアクセスできる。そんなコンテンツのことをここでは言っています。

著者のマーカス・シェリダン氏は、本書を2017年に執筆後、動画により傾倒していき、専門のコンサルティング&制作会社IMPACT社を設立。

動画マーケティングとセールスのノウハウについて述べた『THE VISUAL SALE』を昨年刊行しています。

読みやすい英語で書かれているので、こちらもおすすめです。

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